災害時の対応を知る処理業務の全体像Post-disaster actions 災害時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

寄稿:平成27年関東・東北豪雨による災害廃棄物処理の最前線」

茨城県常総市市民生活部生活環境課 課長補佐 渡邊 高之
(当時)常総市災害廃棄物処理プロジェクトチームリーダー

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2016年11月

 平成27年9月に関東地方及び東北地方を襲った豪雨で大きな被害を受けた常総市における災害廃棄物の処理業務に尽力されたご担当者にご寄稿いただきました。

 「災害はいつ,どこで,どのタイミングで起こるか分からない。だからライブ的に,常総で行われた災害廃棄物処理を紹介し,事前の“備え”がいかに重要であるかを述べ,いま直ぐに行動することを促したい。」

 渡邊さんからの熱い想いが込められた記事、ご参考になさってください。

1.はじめに

 こんにちは,茨城県常総市の渡邊高之と申します。このたびは情報プラットフォームへの原稿寄稿の機会を与えてくださり,心より感謝申し上げます。常総市が経験した災害廃棄物処理とはどのようなものであるか。処理の最前線では何が行われ,そこから見えてくる教訓とは何か,などについて数回に渡ってお伝えしたいと思います。

2.お礼

お礼

 発災から1年余り経過し,復旧は進み市内は落ち着きを取り戻しましたが,いまだに72世帯,181人の市民が公営住宅等に避難され,自宅に戻れない状態が続いています。引き続き復旧復興に向け頑張っているところです。

 災害廃棄物処理については,9月30日に全ての処理が完了しましたが,仮置場として使用した野球場,グラウンド,駐車場等の原形復旧が進行中です。

3.自己紹介

【天命だと思った】

 さて,私の自己紹介ですが,現在,常総市市民生活部生活環境課に所属し災害廃棄物処理に関する現場管理及び事務全般を統括しています。

自己紹介

渡邊高之(わたなべたかゆき)

茨城県常総市市民生活部生活環境課

課長補佐(災害廃棄物処理担当) H28.4.1~

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会計課課長補佐兼

災害廃棄物処理プロジェクトチーム(PT)

           H27.9.29~H28.3.31

財政課13年

市民協働課2年

 昨年4月から会計課に配属され審査を担当していましたが,9月10日の発災後19日目に突然辞令が発せられ「災害廃棄物処理プロジェクトチーム」(略してPTとする)兼務となり災害廃棄物処理を担当することになったのです。担当部長が私にこう言いました。

 

 「渡邊君には財源確保をお願いしたい。もしかしたら災害ごみの片づけに100億くらいかかるかも知れない。環境省の補助事業になるようで,補助率が相当高い。財政経験のある渡邊君に補助金確保をお願いしたい。」

 

 常総市は人口65,000人,一般会計の予算規模は230億円程度。“災害ごみ処理に100億円かかるということは,予算規模の約半分ということだ。これはとんでもない事業だ!”と,辞令交付のため部長と一緒に市長室に向かいながら,鳥肌が立つような気分でいたのを今でも思い出します。さらに私自身,自宅が浸水し,水が引いた直後から家財のほとんどを軽トラックに積んで何度も何度も仮置場に捨てに行っていたので,まさか自分で捨てたごみを自分で片づけることになるとは,思ってもみませんでした。なんたることだ!タンスもスーツも冷蔵庫の中身も百科事典もすべて一緒に放り投げた自分が悪かった。だから分別しなくていいのかって,仮置場入口の職員に聞いたのに。と,後悔だけが頭の中を駆け巡り,これは大変なことになった。天命だ!と,心の中で叫びながら辞令を受け取っていたのです。

すべてが水没した水田

写真 すべてが水没した水田。1年後にこんなに稲が実るとは。

復興祈念式典当日の小学校看板

写真 2016.9.10 発災から1年,復興祈念式典当日の小学校看板

 しかし同時に,誰もやったことのない莫大な経費を必要とする特殊な業務であることは確かで,それを自分が担当するということに使命感が湧いてきたのも事実で,これは腹をくくって全力で取り組もうと熱くなりました。

 ということで,私は財政課の経験が13年程あり,財政全般が理解できるため財源確保,補助金担当として指名されたのだと思いました。

4.今回の内容と考えるポイント

 これからお話しさせていただく内容は以下のとおりです。

今回の内容

  1. 発災・被害・廃棄物排出状況
  2. 災害廃棄物処理プロジェクトチーム(PT)
  3. 災害廃棄物処理実行計画
  4. 災害報告書・災害査定
  5. 処理状況・進捗・スケジュール
  6. 考察
  7. まとめ
  8. 復旧と現実

 発災から被害の状況,災害廃棄物排出の状況,処理を担当したプロジェクトチーム(PT)とは何か,処理フロー決定までの葛藤,処理実行計画(第一版),今までの補助金業務の中で最難関であった災害報告書の作成と災害査定の戦い,事業全体のマネジメントと課題,仮置場や廃棄物の管理方法,考察などです。

 災害廃棄物処理に対する“備え”がほとんど無かった自治体に,ある日突然災害が発生するとどうなるのかを可能な限りお伝えしたいと考えています。

 これから皆さんに考えていただきたいポイントは以下のとおりです。

考えるポイント

  1. 実際にどのような業務が発生するのか。
  2. 通常では想定できない業務とは何か。
  3. 優先順位は。
  4. 他の補助金申請業務と異なる特徴は。
  5. 「備え」のポイントは。
  6. 組織内外の連携のありかた。
  7. 担当者としての心構え

 これから数回のシリーズでご説明させていただきますので,皆様はこれらの「考えるポイント」に注意しながら読んでいただけたら幸いです。

その2-(1)「5.災害廃棄物対応全体の流れ」に続きます。

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