茨城県常総市市民生活部生活環境課 課長補佐 渡邊 高之
(当時)常総市災害廃棄物処理プロジェクトチームリーダー
2017年2月
平成27年9月に関東地方及び東北地方を襲った豪雨で大きな被害を受けた常総市における災害廃棄物の処理業務について、その2をご紹介します(長編ですので、ページを(1)(2)(3)の3パートに分割しています)。
5.災害廃棄物対応全体の流れ
まずは発災から第1段階の混合ごみ処理完了までの全体の流れをご説明します。
発災は平成27年9月10日(水曜日)午前6時30分です。常総市北部,若宮戸の鬼怒川から水が溢れ出しました。溢れだした箇所には堤防が無かったため,川の水位上昇と共に水が溢れだしたのです。
前日の9月9日夕方,所属していた会計課長から
「雨が降り続いているので川の水があふれる可能性がある。もしかしたら今夜招集がかかるかもしれないので,職員は全員,自宅待機するようにとの指示が出ています。」
と連絡がありました。
深夜0時頃,本当に私の携帯が鳴り,招集がかかりました。直ぐ12キロ離れた市役所に急行。
午前1時半には収税課長と二人で拡声器付き広報車に乗り込み,市北部地域一体を巡回しながら避難を呼びかけました。
朝6時半過ぎ,鬼怒川の方向から水が流れ込んでくるのを見た時は,
「これは現実か。」
と,正直思いました。
なぜなら,今まで鬼怒川が溢れることは無かったし,“そんなこと,あるわけない”と,自分が避難を呼びかけながらも心の中では信じていたからです。
12時50分。市中部,三坂町の鬼怒川堤防が200メートルに渡り決壊しました。
決壊後,今まで流れ込んでいた北部浸水域の水は徐々に引きはじめ,翌11日朝には部分的ではありますが家に戻れる程になりました。
すると途端に片づけごみが排出されはじめたのです。
なぜなら家中に濡れた家財が散乱しているからです。
しかも床は泥だらけ。
とにかく濡れた家財を外に出して,床を掃除しなければ生活そのものが出来ないのです。
だから一斉に片づけごみが排出されるのです。
しかし,この時まで常総市は大量の廃棄物が出ることを把握していませんでした。
「これは大変だ!! どこに置くか,ごみ置き場が必要になる。」との情報を掴み、ようやく1か所目の仮置場を設置したのです。
発災から19日後の9月29日,今回発生した膨大な災害廃棄物処理を専従で担当するプロジェクトチームを立ち上げました。
11月17日には計画的に処理するための災害廃棄物処理実行計画(第一版)を公表しました。
その間,発災から2か月以上経過していますが,災害廃棄物発生量の把握や処理フローの検討を行うとともに,現場では粗選別を行い,濡れた畳,廃タイヤ,廃家電などを先行し搬出し処理しました。またテレビ,冷蔵庫,エアコン,洗濯機の家電4品目はリサイクルするため,混合廃棄物から分別しました。
11月30日には災害廃棄物処理国庫補助事業の事務の一つである“災害報告書”を作成し,国に提出しました。年が明けて1月12日から14日までの3日間,この災害報告書について“災害査定”が実施されました。査定についてはこれで終わりではなく,さらに環境本省と財務本省での“本省保留解除協議”が行われます。
その間,現場の処理も進め,4月19日には第1段階として,建築廃材を除く混合廃棄物の処理が完了しました。
ここまでが,全体の概要です。
6.常総市の基礎情報
常総市は茨城県にあります。
まずは茨城県の位置をご確認ください。
北は福島県,西は栃木県,南に埼玉県と千葉県があり東は太平洋に面しています。
(この画像はクリックで拡大することができます)
茨城県の地形
茨城県の地形は県北部,福島県との県境付近が山間部で県の中心付近に筑波山があります。
常総市の地形は,起伏の少ない平坦な地域に位置していますが,市内を南北に貫くように2本の川が流れているのが特徴です。
(この画像はクリックで拡大することができます)
基礎情報
基礎的情報ですが,特徴は人口の約6%が外国人であることです。ブラジル,フィリピン,中国の方が多く住んでいます。日常家庭から出るごみは,市が契約した委託業者が収集し,一部事務組合の焼却炉で処理しています。
位置と周辺交通網
市の中央部には首都圏中央連絡自動車道が整備中であり、インターチェンジも設置され、広域道路網の整備が進んでいます。鉄道については,つくばエクスプレスにより東京都心から1時間程度です。
その2-(2)「7.今回の水害による被害の状況」に続きます。