愛知県西尾市環境部ごみ減量課 久田浩隆
2024年2月
目次
1.はじめに
西尾市は、平成29年3月に災害廃棄物処理計画及び実施マニュアル地震・津波編、風水害編を策定し、愛知県が開催する災害廃棄物の研修会、スペシャリスト養成研修及び図上演習に毎年参加して災害対応力の向上に努めています。ここでは令和5年度の図上演習で使用したKari-hai(仮置場配置図自動作成ツール)の活用についてまとめました。
2.災害廃棄物の図上訓練
図上演習では、「仮置場を設置する」という課題が出るため、その議論を具体的なものにするため、国立環境研究所災害廃棄物情報プラットフォームの仮置場配置図自動作成ツールKari-hai(https://dwasteinfo2.nies.go.jp/page/page000295.html)を使用して、仮置場レイアウトを作成する事前学習がありました。
Kari-haiでは、条件を設定することで容易に仮置場レイアウトを作図できました。
<事前学習の設定>
仮置場候補地名称:八丁市野球グラウンド(住所 八丁市8N)
仮置場の利用可能面積80m×75m(6,000平方メートル)
図1 事前学習の仮置場レイアウト図
3.図上訓練
災害廃棄物処理図上演習は、プレイヤーとコントローラーに分かれて、5分おきに出される課題に対して、プレイヤーがグループ内で相談し、回答をコントローラーへ戻す「対応型図上演習」でした。
愛知県令和5年度災害廃棄物図上演習の開催概要 |
参加者:愛知県及び市町村、一部事務組合等 協定締結民間団体、環境省中部地方環境事務所 |
日 時:第1回 11月15日(水曜日)10:30~17:00 参加者52人 第2回 11月16日(木曜日)10:30~17:00 参加者30人 |
場 所:愛知県自治センター会議室 |
プログラム(第1回、第2回とも同じ内容) 研修の目的と流れ、ガイダンス |
図上演習では、仮置場に関する課題が出され、それに対応しました。
■仮置場に関する課題1<防災担当課から>
台風が最も接近する2日前に、防災担当課から早期注意情報(警戒級の可能性)が出されたため各部署が災害に備えるよう連絡があった。廃棄物担当課は、仮置場の設計(分別種類、レイアウト、必要資機材と必要数、人員配置場所と必要人数等)を開始してください。 |
↓
課題1へのプレイヤーの対応 課題1に対して、事前学習で実施したKari-haiの仮置場レイアウトを基にグループのメンバー同士で意見交換し、出入口付近に空きスペース(用途:簡易事務所設置等)があること、十分な予備スペースを検討していることから、図2のレイアウトとしました。 |
図2 グループで決めた仮置場レイアウト図
■仮置場に関する課題2<仮置場に派遣された職員から>
発災2日後、仮置場に派遣された職員から、10時に開設される仮置場の受付をするように指示されたが何をすればよいか? |
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課題2へのプレイヤーの対応 レイアウト図を参考に分別のゾーニングに従って準備を進めてください。こちらで市民へ周知します |
コントローラー<仮置場に派遣された職員>の対応 場内の案内について理解しました。受付で、災害ごみかどうかの確認、車両台数の記録は必要か。荷下ろしの補助はした方がいいか。 |
コントローラー<仮置場に派遣された職員>へのプレイヤーの対応 受付けをそのようにお願いします。必要に応じて荷下ろし補助をお願いします。 |
グループ内の話し合い
会場の様子
グループ発表(記者会見形式)
<図上演習の成果・感想>
図上演習では、過去の災害で実際に発生したであろう様々な課題に対する対応を求められました。5分おきに新たな課題が発生するというシチュエーションであるため、各課題に対して十分な検討をする時間的余裕がないまま対応を決定し、回答せざるを得ないという状況でありました。その結果、対応内容に具体性がない回答となり、問合せが繰り返される等の悪循環に陥ることが多々ありました。このような状況は、実際の災害現場でも頻発するのではないかと感じました。図上演習という机上の経験ではありますが、模擬的に災害対応経験ができたということには、大きな価値があると感じています。
4.Kari-haiの活用
職場に戻ってから、図上演習での意見を参考として、西尾市災害廃棄物処理計画に沿って仮置場候補地のレイアウト図を作成しました。
<西尾市仮置場候補地の設定>
仮置場候補地の面積 1,000m2
品目は、家電類、金属類、畳、ガラス・陶磁器くず、布団・マットレス、木くず、可燃物、その他(危険物等)として設定
災害廃棄物の搬出を考慮して10トンダンプが走行できるよう入口幅3mに設定
図3 仮置場候補地の仮置場レイアウト図
5.今後の課題と研修受講の所感
西尾市では平成29年3月に災害廃棄物処理計画及び実施マニュアル地震・津波編、風水害編を策定して以降、計画見直し等の修正がされていません。このような状況下において、近年国内各地で自然災害の発生頻度が上昇していること、自然災害の被害規模が大きくなっていること等を踏まえると、早期の計画見直しの必要性を感じています。
令和5年度の研修では、Kari-hai(仮置場配置図自動作成ツール)の他に、国立環境研究所のSai-hai(災害廃棄物処理対策マネジメントツール)を活用し、西尾市の災害廃棄物処理計画及び実施マニュアルの実行性について検討することができました。西尾市の計画内で不足している点等の確認をすることができたため、計画の修正時にこれを活かすことができると感じています。
Kari-haiによる仮置場レイアウト作成は、各自治体で仮置場を検討する際に即座に作成できるものでありますので、計画作成時における事前準備に活用するだけではなく、実際に発災した場合においても有効に活用できるものであると感じています。特に発災後における時間的余裕がないような状況下であっても、Kari-haiを活用すればスピーディーに仮置場レイアウトの検討を進めることができます。
Kari-haiにおける入力項目は、仮置場の面積、配置する廃棄物の品目等の、ごく僅かな情報であり、必要時間としては数分程度で仮置場レイアウトを完成させることができます。発災した場合には、まずはKari-haiを用いて仮置場レイアウトの大枠を決定し、実情に合わせて修正していくという方法が効率的であると感じました。このようなツールの活用法を実際に体験することができ、非常に有意義な研修を受講させていただきました。ありがとうございました。
仮置場配置図自動作成ツール Kari-hai
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