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令和4年台風第15号における静岡市の対応とその後の取組

災害廃棄物情報プラットフォーム編集部
応対者:静岡市環境局ごみ減量推進課企画係 主任主事 永嶋建太氏

 

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2024年2月

目次

1.初動対応

2.災害廃棄物処理の体制

3.情報共有と意思決定

4.地区集積所の対応

5.仮置場の設置

6.仮置場の管理運営

7.協力連携

8.災害廃棄物処理の実績

9.経験を踏まえた取組

1.初動対応

 静岡市では、台風15号の接近により、令和4年9月23日(金曜日)の夜から24 日(土曜日)明け方にかけて猛烈な雨が降り、市内複数の観測地点で時間降水量が観測史上1位の値を更新しました。この雨により、巴川流域等での浸水や、山間部における土砂災害が発生したほか、清水区では水道施設が被災して断水し、葵区では山崩れにより送電鉄塔2基が倒壊したことで広範囲にわたり停電しました。
 翌24日(土曜日)の朝には晴れて、災害対策本部を設置しましたが、庁舎が停電していたこともあり、被害状況が把握できていませんでした。環境局では、自主的に登庁してきた職員がSNSを使って情報収集を行ったところ、清水区で浸水による被害が発生していることが分かり、災害廃棄物対策本部を設置しました。また、徐々にごみの出し方に関する問合せが増えてきたため、災害廃棄物の出し方に係る情報や清掃工場への持込を控えていただくこと等を市HPに掲載しました。
 25日(日曜日)は、情報収集のため、環境局の職員6名が2名1組で市内3区に分かれて被害状況の確認に回り始めましたが、清水区内の一部の公園では、すでに災害廃棄物が山積みになっていました。週末であったことで、被災者の片付けも早かったと思います。
 26日(月曜日)朝から、粗大ごみ・資源物回収用の直営車両を使用し、報道機関からも注目された大型の臨時ごみ集積所からの積み出しを開始しました。大型ごみなども含め、様々なごみが混合している状態の中、パッカー車に詰められるものから搬出したものの、日々増加する廃棄物の山が倒壊等のおそれがあったことから、自衛隊に支援要請を行い、市内でも特に大型の臨時ごみ集積所2箇所について、10月2日~3日の2日間で集中的に撤去をしていただきました。

 

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住家被害の位置及び推定浸水範囲 提供:静岡市

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自衛隊による搬出 提供:静岡市

 

2.災害廃棄物処理の体制

 環境局に廃棄物に関わる4課(ごみ減量推進課/廃棄物対策課/収集業務課/廃棄物処理課(沼上清掃工場、西ケ谷清掃工場を含む廃棄物処理施設の所管課))がありますが、職員数は事務職・技術職・労務職(収集作業員等)を含め200名以上に上るため、役割分担や情報共有に苦労し、各課で業務内容が重複するなど、非効率な対応となっていたこともありました。
 車両への積込み人員が不足した際や、仮置場運営に必要な警備員が確保できなかった際には、環境局他課や、庁内他局の職員を動員しました。特に発災直後は、電話の問合せ対応が大変でしたし、収集運搬や報道機関への対応等、いくら手があっても足りない状況でした。
 災害廃棄物処理の体制は、計画に記載していたとおり、ごみ減量推進課が災害廃棄物総括班として調整を担い、環境省関東地方環境事務所の助言を受けて、現場を確認しながら方針を決めていきました。静岡市の災害廃棄物処理計画は令和4年3月に改訂したばかりでしたが、内容の認識が甘い点もあり、仮置場の設置・運営等、一部、計画と異なる対応をとった業務もありました。
 当初は夜中まで勤務し、清水区在住の職員は断水で風呂にも入れないなど苦労があり、また、2~3週間は休みも取れない状況でしたが、仮置場を設置し、公園等の臨時ごみ集積所から災害ごみの撤去が完了したことで、ある程度落ち着いてきました。

3.情報共有と意思決定

 日を重ねるごとに情報共有の重要性を感じました。翌日の体制等について話し合うため、4課が参加した会議を夜中に行い、情報を共有していましたが、状況はめまぐるしく変わりますし、各課の対応が見えにくく、意思決定も容易ではありませんでした。廃棄物総括班長であるごみ減量推進課長は、取材対応や業者への説明などで不在となることが多く、課長補佐の判断で意思決定することもありました。

4.地区集積所の対応

 市民が一時的に片付けごみを排出するため、発災から約3週間の間、市内公園等を「臨時ごみ集積所」として各地域に約40箇所設置しました。自治会ごとに可能な範囲で臨時ごみ集積所の管理をお願いしましたが、搬入される片付けごみの量は多く、管理が困難な臨時ごみ集積所も多数ありました。初期段階には分別が徹底されていたものの、徐々に管理が難しくなってしまった例もありました。市内でも特に大型の臨時ごみ集積所は、テレビや新聞等で連日報道されましたが、その影響もあり、他の地域からも災害ごみが持ち込まれる事態となりました。住民同士のトラブルも多く、安全性の面からも早期の撤去が必要であったことから、大型の臨時ごみ集積所については自衛隊に撤去を依頼せざるを得ない状況でした。
 なお、一部の自治会において、臨時ごみ集積所における管理を徹底していただき、きちんと分別されていた例もありました。分別が徹底されていたことで、収集の効率がよくなり、早期の撤去に繋がりました。

 

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臨時ごみ集積所の位置図 提供:静岡市

 

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自治会によって分別が徹底できた

臨時ごみ集積所(1)提供:静岡市

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自治会によって分別が徹底できた

臨時ごみ集積所(2)提供:静岡市

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自治会によって分別が徹底できた

臨時ごみ集積所(3)提供:静岡市

5.仮置場の設置

 発災当初は、被害の全容が把握できていなかったこともあり、戸別収集のみでの対応も検討しましたが、次第に被害状況が明らかになる中で、仮置場の設置が必要であると判断しました。


(1)清水仮置場(ENEOS遊休地内)
 仮置場の候補地を検討する中で、ENEOS株式会社様の遊休地が候補として挙がりました。当該土地の借用について、ENEOS様へ相談したところ、承諾をいただくことができたため、清水仮置場として設置しました。清水仮置場は、設置から約2ヶ月の間開設し、搬入終了から約1ヶ月(開設から約3ケ月)で搬出まで終えることができました。
 仮置場設置に係る準備として、草刈りと敷鉄板の敷設が必要でしたが、委託業者にお願いし、急ピッチで整備をしていただきました。ただ、仮置場設置において大事なことは、“急ぐけれど焦らないこと”で、準備が整わないうちに開設してしまうことによって結果的に混廃化するのは本末転倒であり、時間をかけてもきちんと整備して開設することが重要です。

 

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清水仮置場(ENEOS遊休地内) 提供:静岡市

 

(2)清水第二仮置場(大内新田市有地)

 清水第二仮置場は、被災地域に近いところに位置する市有地を利用し、10月10日に開設しました。清水仮置場同様、草刈りや敷鉄板の敷設が必要であったほか、地元への説明などに時間がかかり、清水仮置場の開設から1週間後の開設となりました。

 

(3)葵北仮置場(静岡県トラック協会研修センター)

 (一社)静岡県トラック協会様からの申し出により、研修施設の敷地を仮置場として使用させていただきました。この場所は被災地から比較的遠い位置にあったため、市民の災害ごみの持込みは受け入れず、臨時ごみ集積所等からのスライド運搬車両のみ受け入れました。

 

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廃棄物処理施設・仮置場の位置図 提供:静岡市

 

仮置場運用の概要 提供:静岡市

(1)清水仮置場(ENEOS遊休地内)

開設日10/3(月曜日) 使用面積約14,000平方メートル 保管能力 約8,000t

【一般車両の搬入実績】
初日: 198台 2日目:204台 ~11月27日まで56日間延べ2,176台

(2)清水仮置場(ENEOS遊休地内)

開設日10/3(月曜日) 使用面積約14,000平方メートル 保管能力 約8,000t

【一般車両の搬入実績】
初日: 198台 2日目:204台 ~11月27日まで56日間延べ2,176台

(3)葵北仮置場(静岡県トラック協会研修センター)

開設日10/2(日曜日) 使用面積約6,000平方メートル 保管能力 約5,000t
※一般車両の搬入なし

6.仮置場の管理運営

 清水仮置場及び清水第二仮置場は株式会社ビーオール様、葵北仮置場は(公社)静岡県産業廃棄物協会中部支部様に業務委託し、仮置場の運営を行っていただきました。清水仮置場は、一刻も早く開設するために急ピッチでの整備を行っていただきましたが、開設当初は場内の誘導員や警備員の手配が間に合わなかったため、数日間は市の職員で対応しました。結果的にはどの仮置場においてもトラブル等の発生は殆どなく、円滑に災害ごみの受入れを行っていただくことができました。

 

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清水第二仮置場(大内新田市有地)レイアウト図 提供:静岡市

 

7.協力連携

 主に静岡県や全国都市清掃会議を通じて支援要請を行い、県内6自治体(富士市様、富士宮市様、沼津市様、裾野市様、伊豆市様、伊豆の国市様)、県外6自治体(熊本市様、川崎市様、名古屋市様、横浜市様、佐野市様、港区様)の計12自治体様から、災害廃棄物の収集運搬に係る御支援をいただきました。支援期間は9/29~10/21の約3週間で、パッカー車や平ボディ車を多数派遣していただきました。

 また、車両や作業員の御支援のみならず、熊本市様からは、収集運搬の手順やシフト管理、電子マップ上での収集ルートの集約等、技術的支援をいただいたことで、効率的な収集運搬を行うことができました。

 御支援いただいた自治体様の他にも支援を申し出てくださった自治体様が多数おられました。本市の受入れ体制等の問題により、お気持ちだけ頂戴する形とさせていただきましたが、労いのお言葉も多くいただき、大変励みになりました。

 自治体様の他には、自衛隊様、消防団様、静岡県トラック協会様、静岡県産業廃棄物協会中部支部様、静岡市環境公社様、市内一般廃棄物処理業者様にご支援いただきました。大型の車両を使って効率的な収集運搬を行っていただいたほか、仮置場での災害ごみの仕分け作業等もお手伝いいただきました。

 また、ボランティアの方々には、被災家屋から仮置場への片づけごみの運搬をしていただきました。

 

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支援自治体との

情報共有(1)

 

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支援自治体との

情報共有(2)

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収集支援自治体の車両と

積込みの様子(1)

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収集支援自治体の車両と

積込みの様子(2)

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民間事業者の大型車による運搬

 

8.災害廃棄物処理の実績

 片付けごみの発生量は、発災当初は約25,000tを見込んでいましたが、処理実績は5,560トンとなりました。可燃物は、主に本市の2つの清掃工場で処理し、それ以外の品目は、民間の廃棄物処理業者へ処分委託しました。片付けごみ以外の災害廃棄物としては、仮置場の原状復旧作業により生じた廃棄物混じり土砂1,658トンと、損壊家屋の公費解体により生じた廃棄物992トンがあります。

 

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片付けごみの処理実績 提供:静岡市

 

9.経験を踏まえた取組

発災前からの対策

 令和4年台風第15号での経験を踏まえ、線状降水帯や大雨等による被害が予見された時点から準備を始める体制づくりを行っています。令和5年6月の台風第2号においても、静岡市内の一部地域で冠水が確認されましたが、発災前から、情報収集体制、収集運搬体制の構築や、仮置場の開設に向けた事前準備等を行いました。発災後は、全庁的な情報収集体制に加え、収集センターの職員を中心に被害想定地域の確認を行ったほか、各自治会への被害状況の聞き取り等も行いました。
 平時の備えとしては、災害時のごみの出し方について住民へ周知すること、市が設置する仮置場の事前準備をしておくこと等が大事だと思います。

 

市民への周知・協働

 災害廃棄物に係る市民向けの周知として、「災害時のごみの出し方」についてのチラシを作成し、市HP(https://www.city.shizuoka.lg.jp/000997087.pdf)に掲載するとともに、主に自治会を通じた回覧等のほか、市民向けセミナー等においても周知を行っています。

 また、各自治会と協議の上、臨時ごみ集積所の事前選定も進めています。

 災害ごみの処理を迅速に行うためには、市民の皆様の協力が必要不可欠であるため、今後も様々な形で周知を行っていきたいと考えております。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
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災害時のごみの出し方(1)

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災害時のごみの出し方(2)

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災害時のごみの出し方(3)

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災害時のごみの出し方(4)

 

参考:台風第 15 号に係る災害対応検証 最終報告 静岡市 令和5年3月

https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/294/000973081.pdf

 

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