災害廃棄物情報プラットフォーム編集部
応対者:一般社団法人環境衛生施設維持管理業協会(JEMA)技術部会長
荏原環境プラント株式会社 石川清貴氏
一般社団法人環境衛生施設維持管理業協会(JEMA)事務局長 稲田武彦氏
はじめに
廃棄物処理におけるBCP(事業継続計画)は、被災して業務遂行能力が低下した状況下で、優先業務を継続・再開・開始するための計画であり、平時に行うべき活動や緊急時のヒト、モノ、対策、ルールを決めておくものです。
一般社団法人環境衛生施設維持管理業協会(JEMA)は、一般廃棄物処理施設の運営事業所向けのBCPのひな形を提供しています。そのポイントや自治体との関りについて伺いました。
石川清貴氏
稲田武彦氏
目次
1.JEMA版事業所BCP策定の経緯
2011年の東日本大震災、2015年の関東東北豪雨の経験を踏まえて、環境省では一般廃棄物処理施設の業務継続の重要性からBCP策定ガイドを作成しました。そこにJEMAが協力したことを契機として、JEMA技術部会・研究グループが中心となって、「JEMA版事業所BCP」(https://www.j-ema.com/waste_net/bcp.html)を策定しました。令和4年度には、気候変動に伴って頻発する水害等の大規模災害にも対応すべく、大幅な見直しを実施しました。
JEMA版事業所BCPの主な構成 1.BCPの基本方針 □参考資料 |
2.一般廃棄物処理施設におけるBCPの策定状況
JEMAの2019年調査時点で5割強の施設が策定し、その後のコロナ禍で策定した施設が増えて、現在の策定率は6~7割と思います。
東日本大震災で焼却施設が被災した後、短期間で復旧した経験値を生かし、すぐにやるべきことと後でいいことの優先順位が分かるようにしておくことが大切で、まずはBCPを策定することが大切ですが、魂の入った実行性のあるBCPでないと災害時に使いものになりません。
JEMA版事業所BCPは、災害時の重要度、緊急度に応じて策定してありますが、具体的な箇所と抽象的な箇所とがあるため、各事業所で解釈して取捨選択し、また、訓練を行ってBCPを定期的に見直すようにしています。
3.自治体との関りと役割分担
平成27年関東東北豪雨での常総市では、多量の災害廃棄物が混合状態でしたが、災害廃棄物の全部を焼却施設で受け入れることはできません。被災の程度が軽かった地域のごみ処理を継続し、余力があれば災害廃棄物も焼却するため、災害時にいつまでこうするという方針を自治体と施設運営会社で話し合っておくことで、いざという時にうまく運用できるようになります。
平成29年九州北部豪雨の朝倉市では、仮置場で分別することができてきました。一般廃棄物処理施設ごとの廃棄物の受入れ条件に適合するように仮置場で分別、選別及び破砕等の前処理を行っていただき、また、一定量ずつ焼却処理をしていくため、収集運搬計画を立てていただくよう平時から協議をしておきたいと考えています。しかし、自治体とのすり合わせができていないことが多いのが現状です。
施設運転維持管理を行う業務受託者のBCPと、自治体が策定する災害廃棄物処理計画とリンクさせて継ぎ目のない計画にすることが大切で、災害時に計画どおりに進むわけではありませんが、判断や対応に齟齬を生じないようにしたいと考えています。
4.施設被害への対応
災害時に何が重要かというと、それは“人”です。東日本大震災の時には、発災3日後に全職員の無事を確認できたとの会員会社の情報もあります。施設運転会社社員も被災者になりますが、本社から応援をしても、現場では資材の調達や設備の点検・補修、手配を理解している人が必要です。
JEMA技術部会では、災害が発生した後に、施設に対して災害調査を実施し、災害時運転で何に困ったか、何が不足したか、安否確認をどのように行ったかなどを把握しています。社員の安否確認で、電話がつながらなかった、メールがよかった、施設に衛星電話を設置したなどの意見がありました。現場ではガソリン、食料、薬品の調達や設備の補修やその手配に苦労し、特に薬品の調達が困難であったこと等、これらの経験や課題、ニーズを把握してBCPの見直しへ反映してきています。
JEMAは、現場をサポートし、また教育のサポートもしており、毎年開催している事業所管理者研修会にはJEMA会員社から70名~100名が参加し、講義の他に地域・処理業種別にグループ分けてグループデスカッションを行い、所属会社の垣根を超えてコミュニケーションを図れるようにしております。
5.災害時・平時のJEMA・施設運営会社の対応
災害時に何が重要かというと、それは“人”です。東日本大震災の時には、発災3日後に全職員の無事を確認できたとの会員会社の情報もあります。施設運転会社社員も被災者になりますが、本社から応援をしても、現場では資材の調達や設備の点検・補修、手配を理解している人が必要です。
JEMA技術部会では、災害が発生した後に、施設に対して災害調査を実施し、災害時運転で何に困ったか、何が不足したか、安否確認をどのように行ったかなどを把握しています。社員の安否確認で、電話がつながらなかった、メールがよかった、施設に衛星電話を設置したなどの意見がありました。現場ではガソリン、食料、薬品の調達や設備の補修やその手配に苦労し、特に薬品の調達が困難であったこと等、これらの経験や課題、ニーズを把握してBCPの見直しへ反映してきています。
JEMAは、現場をサポートし、また教育のサポートもしており、毎年開催している事業所管理者研修会にはJEMA会員社から70名~100名が参加し、講義の他に地域・処理業種別にグループ分けてグループデスカッションを行い、所属会社の垣根を超えてコミュニケーションを図れるようにしております。
6.ハード面の強靭化の必要性
一般廃棄物処理施設は、河川沿いや山の中に立地していることが多いため、がけ崩れや水害に対する相当の備えが必要となります。新規の施設であれば電気室や非常用発電機を2階に設置します。また、既設の一般廃棄物処理施設は、基幹的設備改良工事の際に受電系統を2回線にしたり、水防壁・水防扉を設置したりする等の対策が取られますが、多くの施設は対応できていないままです。施設の強靭性を評価して国土強靭化計画の補助金等を活用して整備し、被災しても短期間で運転再開できるようにすることが大切と思います。
7.自治体との連携・事前の協議の必要性
繰り返しになりますが、自治体には、災害廃棄物の仮置場を設置し、焼却施設に入れられるように前処理をしておくこと、また、量の目途を立てて、搬入計画を立てていただくこと、さらに焼却灰の搬出先を確保していただかないと焼却処理ができませんので、これらの準備をお願いしたいと思います。また近年、一般廃棄物処理施設が防災拠点とされることが多くなっており、避難所開設時の備品の役割分担等の詳細な点も明確にしておく必要があります。
通常業務と異なる契約範囲外の作業が発生する場合には、安全を確保しつつ業務として対応するため、その都度、指示書などで業務としていただくことで速やかに進められます。書類がないと企業も対応できないと言いかねません。こういったことをBCPにできるだけ具体的に記載し、それを自治体と合意したものにしておきたいと思います。
参考:共通参考資料「事業継続計画(BCP)策定において自治体等と事前協議すべき事項」
https://www.j-ema.com/waste_net/items/bcp02-0402.pdf
さいごに
災害時に一般廃棄物処理施設で何が良かったか、何を改善すべきかという災害調査結果やJEMA版事業所BCPを情報発信することはJEMAしかできず、その知見や情報はD.Waste-Netにも役立つと考えています。
JEMA版事業所BCPは今後も引き続き使い勝手等を調査し、随時改定して生きたBCPの策定を促進していきたいと思っています。
JEMA会議室にてインタビューの様子