平時の対策を知る連携・啓発Pre-disaster preparedness actions 平時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

災害廃棄物情報交換会(令和5年度第1回)を開催しました(テーマ:地区集積所の適正な運用に向けて)

 

災害廃棄物情報プラットフォーム編集部

連携啓発_情報交換会1_サムネイル

2023年10月

目次

1.災害廃棄物情報交換会について

2.話題提供「令和5年6月2日の大雨による災害廃棄物処理の対応」

3.災害廃棄物処理モデル事業<模擬訓練とハンドブック>

 (1)住民との模擬訓練に取り組んだ経緯

 (2)環境省モデル事業参加の経緯

 (3)第1回ワークショップ 基礎講座

 (4)第2回ワークショップ 模擬訓練

 (5)住民仮置場のレイアウト・模擬訓練の手順

 (6)高齢者等に配慮した戸別収集の訓練

 (7)住民仮置場からの搬出

 (8)訓練後のワークショップ

 (9)第3回ワークショップ ハンドブックへの意見

 (10)モデル事業の振り返り

 (11)課題と今後の展望

【宇治市 ポスターセッション】

4.住民、民間事業者、ボランティアとの連携~地域集積所からの早期撤去を目指して~

(1)“想定外”にしない

(2)“しくみ”づくり

(3)住民へのヒアリングと官民連携会議

(4)計画改定と住民向けハンドブック作成

(5)初動マニュアルと図上訓練

(6)結論・考察

(7)今後の課題

【倉敷市 ポスターセッション】

5.災害用臨時ごみステーションの適正管理のために

(1)延岡市の概況

(2)準備不足が招いた問題点

(3)災害用臨時ごみステーション

(4)適正管理のために

(5)分別の徹底に向けた取組み

(6)勝手置場や混合排出の要因

(7)災害用臨時ごみステーションの適正管理のために

【延岡市ポスターセッション】

6.全体討論

7.まとめ

1.災害廃棄物情報交換会について

 災害廃棄物対策の取組みやアイディアを共有しつつ、関係団体同士の緩やかなつながりを作っていくために、国立環境研究所では「災害廃棄物情報交換会」を開催しています。令和5年度は、「地区集積所の適正な運用に向けて」をテーマとして、第1回は先進事例を基に情報提供およびポスターセッション形式の意見交換を行いました。

災害廃棄物情報交換会(令和5年度第1回)
日時 令和5年8月8日(火曜日)13:00~16:00
場所 廃棄物・3R研究財団会議室 webハイブリッド開催
出席者
(敬称略)

(座長)鈴木 慎也 福岡大学工学部社会デザイン工学科水理衛生工学実験室 准教授

岩嵜 享史 京都府宇治市 まち美化推進課ふれあい啓発係 主任

大瀧 慎也 岡山県倉敷市 環境リサイクル局リサイクル推進部

             副参事(兼)一般廃棄物対策課長事務取扱

河野 賢史 宮崎県延岡市 市民環境部資源対策課 総括主任

瀬古 智秀 三重県南伊勢町 環境生活課 課長

堂坂 高弘 熊本県人吉市 市民部環境課 主幹

蓜島 崇文 東京都 環境局資源循環推進部計画課 課長代理

(オブザーバー)

荒井 昌典 神奈川県横浜市 資源循環局 適正処理計画部施設課 課長

井平 達也 和歌山県 環境生活部循環型社会推進課 副主査

河原 隆  岡山県総社市 選挙管理委員会 事務局長

黒木 健  宮崎県延岡市 市民環境部資源対策課 地域連携係長

鈴木 雄一 宮城県東松島市産業部商工観光課 課長補佐

国立環境研究所

廃棄物・3R研究財団

2.話題提供「令和5年6月2日の大雨による災害廃棄物処理の対応」

 和歌山県 環境生活部 循環型社会推進課 井平 達也 氏

■被害の状況と災害用集積所の設置

 令和5年6月2日の大雨により和歌山県北部・中部で浸水被害が生じました。令和5年8月現在で、県内の災害廃棄物の発生量は4,000~6,000トン以上と推計しており、協定に基づく事業者への支援要請は行わずに、被災自治体での対応としました。
 被災自治体のうち有田市は、平成30年7月豪雨の経験から被災地に集積所11か所を設定し、住民に対して、早く集積所へ持ってきてくださいという周知を行っていましたが、集積所は狭く、分別できるスペースがなかったことから、畳や可燃物、家電製品が混合状態で積まれている状況が見られました。
 有田市地域防災計画には「災害時における分別は極めて困難であると考えられるが、可能な限り分別収集してリサイクルに努めるものとし、市民に対してもその旨を広報する。」と記載されています。集積所から仮置場へ運搬して、処理を行う方針としています。

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集積所の様子(1)

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集積所の様子(2)

■仮置場の設置

 有田市では、集積所とは別に仮置場を2か所設置し、市職員が集積所から収集した廃棄物を持ち込み、畳、布団、家電、金属、消火器などに分別しました。なお、集積所と仮置場の両方を設置する場合は、国庫補助金を充当するにあたり、分別や運搬が二重投資になっていないか、両方が必要な合理的な理由が必要となります。

■県の対応と今後の課題

 県は、環境省近畿地方環境事務所と現地を訪問し、市町の担当職員から聞き取りを行うとともに、仮置場の状況を視察しました。また、災害廃棄物の収集や処理に関して助言を行いました。
併せて、県主催により国庫補助金の相談会を開催しました。7月末に開催した県内市町村向け勉強会では、今回の災害廃棄物対応について情報共有・意見交換を行いました。今後、被災自治体では災害査定、会計検査への対応が必要となります。今回の災害対応を振り返って、県から市町村へ多量のメールを送付していたことが反省点であり、メールは一本化したいと考えています。
 県は、これまでに、写真撮影を徹底する指導をしていたものの、徹底できていない自治体があり、今後の教訓としたいと思います。

3.災害廃棄物処理モデル事業<模擬訓練とハンドブック>

宇治市人権環境部まち美化推進課 岩嵜享史氏

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宇治市による発表

(1)住民との模擬訓練に取り組んだ経緯

 宇治市は、令和4年度環境省近畿地方環境事務所の住民啓発モデル事業を実施し、その中で地域住民を含めた住民仮置場での模擬訓練とハンドブック作成の取組について説明します。
 私は、ごみ収集作業員として宇治市役所に入庁し、これまでに5度ほど被災地の支援活動に行きました。宇治市も平成24年の8月に発生した京都府南部地域豪雨災害で被災し、当時、災害廃棄物が無秩序に排出されて、瞬く間に道路がふさがりました。被災者からの早くごみを撤去するようにというフラストレーションに直面しましたが、作業に入りたくても収集車が入ることもできない状況が多かったです。

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平成24年8月京都府南部地域豪雨災害

(2)環境省モデル事業参加の経緯

 このような事態を少しでも軽減できないか、また、災害廃棄物の迅速な処理には、どういった取り組みが有効であるかを思案しているさなかに、いくつかの自治体で作成された災害廃棄物処理ハンドブックの存在を知り、まずは令和3年度に庁内の研究事業で独自に試作し、そして令和4年度に環境省のモデル事業に参加という運びとなりました。
 令和4年度モデル事業を契機に、関係各課や関係団体と意識を共有するために庁内調整会議を実施したことで、宇治市には災害廃棄物処理に対する具体的な取り組みが必要であることを庁内全体で共有できました。
 モデル事業は、選定した地域の住民も参加し、3回のワークショップを経て「住民用の災害廃棄物ハンドブック」を作成するというもので、第2回ワークショップの中で模擬訓練を実施しました。

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災害廃棄物処理ハンドブック

(3)第1回ワークショップ 基礎講座

 第1回ワークショップでは、基礎講座を通して災害廃棄物によって緊急車両の通行が妨げられたり、人命救助に影響を及ぼすことがある等を住民にイメージしていただくことができました。
 今後また、大規模災害が発生した場合に、仮置場を開設し住民が災害廃棄物を分別して排出できれば、間違いなく災害廃棄物の処理は早まるであろうとの思いを住民とともに模擬訓練につなぎました。

(4)第2回ワークショップ 模擬訓練

 模擬訓練では、参加住民に対して事前に災害廃棄物として排出する退蔵品をアンケート方式で把握し、約50世帯から、退蔵品約150点が住民によって『住民仮置場』へ搬入されました。それを宇治市の職員が、一次仮置場と設定した場所へ運搬しました。

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模擬訓練の流れ

(5)住民仮置場のレイアウト・模擬訓練の手順

 住民仮置場として設定した公園は、広さ約2,500m2で、安全確保のために自動車・バイクの入口と自転車・台車・徒歩の入口を分け、場内は一方通行とし、ブルーシートとコーンを用いて退蔵品を置く場所を決めて、品目ごとに簡易的な看板を設置しました。公園の周囲道路は狭いため、左折入場・左折退場を基本として、複数の職員を誘導員として配置しました。また、周辺住民に対して、模擬訓練当日は公園の利用ができないことや周辺道路を訓練参加者が往来することをチラシで周知しました。

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模擬訓練での住民仮置場のレイアウト

 

 受付で事前アンケートの内容と持ち込んでいる退蔵品に相違がないかを確認してから、排出場所へ案内しました。軽トラックを所有している世帯が、近所の退蔵品をまとめて搬入するという共助の様子が何度か見受けられ、地域住民の協力の必要性を認識するとともに、よりスムーズに搬入が進んでいました。

 しかし、訓練のスムーズさに違和感を感じ、これまでの被災経験や支援経験から災害時はスムーズにいかないことが多く、訓練が実際の災害とは違っていることを感じました。

 

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受付の様子

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荷降ろしの様子

(6)高齢者等に配慮した戸別収集の訓練

 また、高齢や独居が理由で自身での運び出しが困難な世帯の有無も事前アンケートで調査しました。そういった世帯には宇治市災害ボランティアセンターに協力を依頼し、実際に運び出しを行ってもらいました。住民仮置場まで運び込むことができない世帯への戸別収集を想定した訓練でした。

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住民仮置場への搬入の様子

(7)住民仮置場からの搬出

 退蔵品は、きれいに分別されていたため、車両への積み込みと一次仮置場に設定した場所での荷下しはとても順調でした。災害廃棄物も日頃のごみも、排出のルールが守られているほど収集は滞りなく行えることがよくわかりました。この量でも平積トラック5台がちょうど満載となり、実際に発生する災害廃棄物が、いかに多いかよく分かる結果となりました。

(8)訓練後のワークショップ

 訓練後にそのまま、住民に意見交換をしていただき、具体的な意見が出された中で、「住民仮置場内での整理は誰がするのか」という意見がありました。
 この訓練では多くの現場作業員を配置しましたが、実際の災害時に職員が仮置場に常駐することは困難です。訓練の中でもう少し参加住民に役割を設定してもよかったと思いました。
 また、情報周知に関する意見で、「高齢世帯への日頃からの声掛け」や「日頃からのコミュニケーションが大事」といった地域のつながりを重視した意見が出ました。確かに実際に災害が起こると、どこにどういった住民が居るか、住民にしか分からないような道路事情や生活環境の情報を頼りに活動を実施する場面があるため、今後もこのような訓練や出前講座を他の地域で実施できれば地域内の連携を深めることにつなげられると思います。また、地域住民同士が日頃から顔の見える関係づくりをしていただくことの大切さも感じるワークショップでした。

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WS実施例

(1)ごみを出してみて困ったこと、わからなかったこと

〇運び出し

・リアカーがあるとよかった

・引き戸や扉が障害となった

・運び出し要員が土足で入るかどうかで作業が変わる

・家屋を傷つけないような配慮が必要になる。

 

 

〇情報周知

・運び出し要員が土足で入るかどうかで作業性が変わる

・家屋を傷つけないような配慮が必要になる

〇住民仮置場

・場内の動線がわかりにくい

・荷下しの順番と積込の順番があっていなかった

・ごみの分別表記がわかりにくい

・荷下しに時間がかかった

・受付は1箇所の方がよい

・仮置場内での整理は誰がするのか。

 

〇その他

・リサイクル家電の取扱い

・市職員がいない場合の対応右側に内容が入ります。

(2)どうすれば解決できるか

〇運び出し

・建具を外す人員や運び出し専門の人員を配置

・回収車の手配

 

〇情報周知

・高齢世帯への日頃からの声掛け

・日頃からの近所、防災会議、町内会でのコミュニケーション

・実際の災害での区分や持ち込み可能時間等、早期の周知。

〇住民仮置場右側に内容が入ります。

・誘導なしでも入退場できる案内表示の設置

(イラストやピクトグラム)

・区分の枠を大きくし、仮置場で分別

・大型ごみは奥側に配置

 

〇その他右側に内容が入ります。

・日頃から不用品を減らす活動

 

(9)第3回ワークショップ ハンドブックへの意見

 第3回ワークショップではハンドブック案を見て、どのような内容がより良いかを意見交換していただき、その成果物としてハンドブックが出来上がりました。

 

ハンドブック等に掲載してほしいこと

〇災害廃棄物の処理について

・災害廃棄物とはどんなものか具体例

・集めたごみをどう処分するか

 

〇分別について

・分別の仕方が小中学生にも分かる様に

 

〇日ごろの備えについて左側に内容が入ります。

・日頃からのコミュニケーション

・不用品の整理

 

〇仮置場について左側に内容が入ります。
・仮置場の利用ルール

〇生活ごみについて

・災害ごみと生活ごみとの区別

 

〇片づけるときの注意事項について

・熱中症対策

 

〇その他

・写真や絵などでなるべくわかりやすく

・緊急車両・ごみ収集車等の通行の妨げになるので、道路脇に出さないことを強調する

 災害に関するハンドブックであることが一目で分かるようにしています。
 牛乳パックのキャラクターは、宇治市まち美化推進課のリサイクル推進キャラクターでパックンといい、環境教育やイベントに登場して、子どもたちからとても人気のあるキャラクターです。イラストは、宇治市広報のイラストを手掛けている、まち美化推進課OBに依頼して描いてもらいました。また、日頃からできるごみの減量対策として、宇治市が注力して展開しているリユース事業を掲載しました。Q&Aでわかりやすく工夫し、市のメッセージで締めくくっています。

 
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(10)モデル事業の振り返り

 今回のモデル事業を通して、大規模災害が多発するようになった今日においても、まだまだ災害廃棄物については意識が醸成されていない、それも市民だけでなく、行政でも同様です。宇治市まち美化推進課には直営の作業員が71名いて、その中には、宇治市での水害を経験したり、他自治体の復興支援に参加した経験を持つ職員が多数いるため、比較的関心が高く、模擬訓練は運営しやすかったです。しかし、ワークショップや模擬訓練などを実施するにあたり、庁内の関係課、または担当者による温度差を感じました。

(11)課題と今後の展望

 課題はまだまだ山積みです。
 仮置場については、市内に適地が少なく、住宅密集エリアでは見込みが立ちません。仮置場候補地のリスト化を目指していますが、多くの自治体と同様に公開することによるハレーションが危惧されます。しかし、災害の規模や被災地の範囲に合わせて臨機応変に開設できるよう、市有地の把握は必要と考えています。
 仮置場の管理には、地域住民の協力が必要不可欠です。ハンドブックは、災害廃棄物処理計画の策定にあわせて配布することとなり、未だ配布できていませんが、平時のうちから自助・共助・公助の連携を確認しておくために、出前講座や訓練の実施に向けて危機管理部門との協力をしていく予定です。
 令和5年度中に災害廃棄物処理に対応できる庁内体制を提案、確立できるよう、それまでに災害が発生しないことを祈り、取組みを続けます。


 

【宇治市ポスターセッション】

 

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宇治市ポスター

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宇治市ポスターセッションの様子

1)訓練の設計について

コメント:災害時は、国や県からメールや電話の照会が多くて市町村は事務が大変なため、職員は仮置場に入れないと思います。仮置場は協定で建設業協会等が対応していただく方法もあります。

コメント:職員は災害時に地区集積所へ出ていけないため、住民仮置場を誰が運営するかが大切で、住民に管理してもらう方向で訓練の時にアナウンスすることが大切でしょう。

コメント:住民には、防災訓練の一環で災害廃棄物対応ができるといいと思います。

宇治市:モデル事業を実施した地区は、防災に力を入れて例年訓練をしており、コロナ禍で中断していたところ、新たなテーマが求められていたため今回実施することができました。災害時に住民に協力いただくことが一番望ましいのですが、そこにたどり着くまでがむずかしい。住民に浸透するには時間がかかりますが、やらないと浸透しないですし、今後は出前講座からやっていきたいと考えています。

コメント:出されたごみは市が処分しましたか?

宇治市:市が処分しました。通常は有料の対象となるものも今回は処分しました。

コメント:退蔵品を無料で引き取っていたことで、災害時のごみを減らすことにもつながり、よかったと思います。

コメント:延岡市が行っている住民への説明会や話し合い、看板の用意など、宇治市のような訓練を合わせて行っていくことが日頃の備えになると思います。

2)訓練と実際の災害時とのギャップについて

Q :訓練がスムーズだったことに違和感があったとのことでしたが、訓練と災害時のギャップの要因は何だったと考えますか。

宇治市:自分は他の被災地へ5回ほど収集運搬支援に行きました。また、平成24年に宇治市が被災したときは、空いている場所に無秩序にごみが出されてなかなか撤去できなかった経験があります。今回の訓練では、公園や公民館を担当部署から借りて、時間内に返却しないとならなかったため、参加住民人数制限をしてスムーズにいくようにしたり、周辺道路を訓練で使用することなどを事前に地域に案内し、トラブルを回避するようにして実施しました。また、職員が張り切ってごみの荷下しをして、住民は自動車から降りずに済んだり、積み出しも職員があっという間に終えました。ただ、手違いから参加住民への郵便が遅配して怒られるというトラブルはありましたが、災害時にはこのような手違いばかりが発生しうると思いました。

コメント:全国の訓練に行っていますが、災害現場の切迫感を再現することは難しく、限界があります。

コメント:今回、訓練とはいえ職員が片付けごみの荷下ししたことで、住民は、片付けごみを住民仮置場へ持ち込めば、災害時も職員が荷下ししてくれるイメージがついてしまい、実際の災害時になぜ職員が対応しないのかと言われかねない。住民には、ここまでやってほしい、業者が管理するのであれば業者の指示に従ってくださいなど大事なところを徹底しないといけない。

コメント:持ち込まれる品目の目途が予め付いていてスムーズだったと思いますが、何が持ち込まれるかわからなかった場合、どこに分類したらよいか迷ったり、混合廃棄物が発生したかもしれない。

コメント:住民仮置場は、住民が管理する場所であることがわかるように、住民に体験してもらうとよかったと思います。

コメント:ねらいに応じて訓練を設計することは容易ではないですが、訓練のねらいはどこに置いていましたか。

宇治市:住民に災害時でも分別して出してもらうことを知っていただくことでした。住民に一次仮置場へ持ち込んでいただくことが理想的ですが、自宅前の公園のような住民仮置場でも分別の意識を持っていただくことにねらいを置きました。訓練時に仮置場として設定した場所は山深く、道が狭くて事故が起こりやすいため、住民の往来は避けた方が良いと判断しました。

Q :住民にごみを搬出する場面も見ていただき、もし分別ができていなかったら搬出は難しいということがわかるように説明をするとよかったかもしれない。

コメント:例えば、すぐに満杯になる状況を意図的に作って、住民に自らなんとかしていただく設計はどうでしょうか。

コメント:混廃ゾーンを作っておいて、軽トラに積み込む体験をしていただくなどもあるかもしれません。

Q :訓練で一番困ったことは何でしたか。

宇治市:住民へ何度も伝えていたことが伝わっていなかったことが分かりました。例えば、リサイクル家電はダメと伝えていましたが、事前アンケートで持ち込みたい品目にリサイクル家電が書かれていたり、集合時間を覚えていないなど、周知の難しさを改めて感じました。また、災害ごみハンドブックは、頼りになるツールとしたかったのですが、できてみたら詳細には記載できず、災害ごみのさわりの部分しか記載できませんでした。まだハンドブックを配布できていない事情もあります。

コメント:訓練によって仮置場の様子を職員が知ることができるのはいいと思いますが災害時の各自の仕事の経験値を上げるような設計した方がいいでしょう

コメント:今回の訓練はノウハウになっているため、職員の役割をマニュアルにするなど形に残していけるといい。頑張りが周囲の行動につながると思います。

宇治市:参加したほとんどの職員は収集運搬業務で、機動力がありました。倉敷市の初動マニュアルを参考にしながら細々と初動マニュアルを作っているところです。

3)住民仮置場について

Q :住民仮置場は何か所設定されていますか?

宇治市:公式に決められていませんが、各所管課との調整で難色を示されることもあります。宇治市は災害廃棄物処理計画が未策定のため、策定を急いでほしいという気持ちでモデル事業に参加しましたが、計画が策定できれば住民仮置場候補地リストもできると思います。

4)戸別収集について

Q :全市的に住民仮置場に持ってくるようにするのか、地域特性に応じて戸別収集にする地区もありますか。

宇治市:被災規模に合わせて住民仮置場を開設することとしていますが、住民仮置場として適切な場所がなく、見通しが立っていない地区もあります。

Q :そのような地区は、戸別収集での対応になりますか。

宇治市:戸別収集するしかないと思いますが、それを住民へ伝えてしまうとどうなるかが怖いところです。平成24年度に宇治市が被災した際は、空いている所にごみを排出されて撤去に困った経験がありますが、当時、住民が災害時のごみの対応について少しでも知っていれば、復興も早かったのではないかと思います。

コメント:戸別収集は手間がかかり、他都市の支援が必要な場合も多いので計画段階で戸別収集を記載するのは個人的には望ましくないと思います。しかし、延岡市も災害用臨時ステーションの半分は通常時のごみステーションになっているとのことで、成功したケースもあるため、選択肢の一つとすればいいと思います。

5)連携・調整について

コメント:ボランティアセンターで一次仮置場へ運搬していただくよう手配してはどうですか。

コメント:ボランティア団体には車両や重機による支援をしているところがあるためボランティア団体と意見交換すると参考になります。

Q :庁内連携はスムーズでしたか。

宇治市:庁内調整は難しかったけれど、今回、道路維持管理部署とつながったことで、別業務がやりやすくなったこともあり、重要なコミュニケーションが取れました。

6)今後の取組みについて

Q :今回の訓練は共助の意識が高い地域でしたが、同じような訓練を、他地区でも実施できそうですか。

宇治市:モデル事業があったことで市役所全体(まち美化推進課、公園管理、道路管理、危機管理の部署)が一緒に動くことができ、とてもよかったのですが、同様の訓練を独自に実施するには関係者への手配や手続きが多く、腰が重くなります。今後は出前講座からやりたいと考えています。
現在は計画策定に重心を置いていますが、来年度は訓練を実施できるよう引継ぎできる状態にしておきたい。

コメント:次の人が継続できる仕組みづくりをしていくのは大事ですし、住民を含めた訓練が必要という意識が醸成できるといいと思います。

4.住民、民間事業者、ボランティアとの連携~地域集積所からの早期撤去を目指して~

倉敷市環境リサイクル局 リサイクル推進部 一般廃棄物対策課 大瀧慎也氏

 

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倉敷市による発表

(1)想定外にしない

 倉敷市は平成30年7月豪雨で被災した後、令和2年度に計画を改定し、その頃に悩んでいたことを話します。当時は、大規模災害は“想定外”だったという言葉で誰もが済ませてしまっていることが多かったのですが、では、“想定”とは何か考える中で、災害廃棄物処理計画や業務の中でイメージができているかどうか、ということに行きつきました。
 そして、通常業務で想定できない要因は何か考えてみたところ、核家族化やニーズの多様化、行革などの『社会の変化』に対して、以前からの思い込みで考えていると、それは『社会の変化』に合っていなかったということがあります。また、被災住民の思いと行政とのギャップもあります。
 そこで、『社会の変化』を社会全体で受け止めて未来を切り開く新しい取り組みがSDGsだと考えました。被災した経験から、大規模災害時には災害廃棄物の地域集積所の発生は避けられないため、地域集積所を前提として考えることでSDGsに取り組めないかと考えました。

(2)“しくみ”づくり

 新しい社会を作る方法として、5つのステップを踏む“しくみ”を「倉敷市SDGs災害廃棄物処理官民連携事業」で体系的に進めることとしました。

 

新しい社会をつくる方法

新しい社会をつくる方法

(3)住民へのヒアリングと官民連携会議

 まず、被災住民にヒアリングを行い、事象、背景、経緯、因果関係に触れて、「何があったか」から一段掘り下げ、「何故そうしたか」を知ることで、ごみ出しの背景と実情を把握しました。その結果を見ると被災者目線が大切であることが分かりました。
 地域集積所については、全国の災害廃棄物処理計画に地域集積所がどう表現されているか特徴的なものを調べて分析し、大きな2つの方向性を設定しました。一つは被災地からの早期撤去を全力で実施した後に、計画的に資源化・効率化を図ること、二つ目に大規模災害時に市の力だけでは対応しきれないため、関係者の連携体制を確立しておくことです。この地域内の関係者の連携による“しくみ”づくりをするという目的を官民連携会議で共有しました。

 

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SDGs災害廃棄物処理官民連携会議

(4)計画改定と住民向けハンドブック作成

 災害廃棄物処理計画の改定では、市と事業者、ボランティア、被災住民との関係性を“しくみ”として作る必要があると考え、この連携体制を計画に落とし込みながら、実務につながる計画にしたいと思いました。
 また、日頃から災害が起こったらどうなるか、災害廃棄物に対する意識を持っていただきたいと思い、住民向けの災害廃棄物処理ハンドブックを作成し、機会があるごとに住民へ配布しています。

 

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「方針」から「実務」へ

倉敷市災害廃棄物処理計画 R3.3改訂版

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「他人事」から「我が事」へ

市民版 災害廃棄物処理ハンドブック

(5)初動マニュアルと図上訓練

 様々なステークホルダーとの連携を初動マニュアルとしてまとめました。初動マニュアルは、事業者、ボランティア団体と話し合いながらそれぞれの役割を決めて、アクションカード形式で作成しました。官民連携会議として年1回顔を合わせることとし、そのつながりから各自の役割に自覚を持っていただく“しくみ”としており、初動マニュアルを使って連携体制を確認する図上訓練を行いました。第1回は、戸惑いもありましたが、同じ業務に関わる人同士で話し合いながら仲間意識が醸成でき、“しくみ”から“しかけ”を作ることで、互いにより近づくことができています。

 

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「つながり」から「やくわり」へ

倉敷市災害廃棄物処理初動マニュアル

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文字「しくみ」から「しかけ」へ

SDGs官民連携事業(図上訓練)

(6)結論・考察

 以前の災害廃棄物処理計画では、文章で定めていても使いこなす点が不足していたため、計画をどう使うかを普段からイメージしながら計画を策定する必要があると感じています。計画は、策定して完結するのではなく、これを基に取組みを進めることで価値が生まれると思います。
 その中でも住民は地域のプレイヤーとして大きな存在です。

(7)今後の課題

 これまで3年間“しくみ”づくりをしてきて振り返ってみると、支援者目線で“しくみ”を構築してきて、支援体制が構築できた自覚はありますが、一方で、中心となる住民があまり変化していないと感じています。
 災害に強い地域をつくるには、ステークホルダーの中心となる住民が行政とともに取り組む“しくみ”づくりが、これからの課題です。
 地域集積所からの撤去を進める体制作りが必要ですが、撤去しやすい状態に被災住民に排出していただく協力が必要で、これらの二面をバランスよく進めることが必要です。
 そこで自分が以前に関わっていた教育委員会で取り組んできた社会教育が力を発揮します。社会教育は、集団的・計画的教育といわれ、生徒となって学んだ人が次に先生となってつないでいくしくみが社会教育といわれています。このような取り組みが住民の間で進められるように、推進員登録制度を作ったり、実務ツールとしてチラシを作れればと考えており、関係者と雑談から進めているところです。


【倉敷市ポスターセッション】

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倉敷市ポスター

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倉敷市ポスターセッションの様子

1)地域集積所設置の判断について

Q :どこで災害が発生するかは把握できないと思いますが、地域集積所の設置の判断はどのように考えていますか。

倉敷市:発災直後に被害の全容を把握することはできません。倉敷市としては、生活圏からいかに素早く災害廃棄物を撤去するかを重要視しています。これまでの住民へのヒアリングで、平積みしていた場所の方が、高く積み上げた場所よりも素早く収集・撤去ができたようであり、そうした対処を検討しています。小さい災害の時には仮置場に持ってきていただくようにしていますが、“やむを得えない場合”に地域集積所を設置するよう計画を改定しています。

Q :地域集積所は、通常のごみステーションと同じ場所ですか。

倉敷市:通常のごみステーションには災害ごみを出さないようにというチラシを作っており、分けています。

Q :候補地は公表していますか。

倉敷市:公表はしていませんが、エリアごとに候補地の評価を点数化し、優先度の高い公有地に関しては公表を考えているところです。

Q :地域集積所=混廃化というイメージがありますが、地域集積所を設定しようとした元の考えはどのようなことでしたか。

倉敷市:大規模災害が発生した場合、住民に対して地域集積所を認めないとは言えませんし、しかし住民は、集積所を管理しきれないだろうとも言っています。そのため、行政が対応するために災害廃棄物処理計画に位置付けておく必要があります。大規模災害時に勝手仮置場が発生しないという選択肢はないと考えています。

コメント:総社市でも被災者のために地域集積所があった方がよいという考えで「最寄りの仮置場」を設置しました。平成30年7月豪雨では、市の仮置場が被災地域から遠かったため、被災者の心労の解消になります。

Q :市の全域が被災したり、半分が被災したなどの状況によって、地域のプレイヤーや動き方、地域集積所の運用方法などを考えておかないといけないと思いますがいかがですか。

倉敷市:今は、最大規模の被害想定で検討を進めています。小さい被害は、“やむを得ない場合”にはあたらず、地域集積所は認めません。これを住民にどう伝えるかは課題で、社会福祉協議会やボランティアとの連携も大切だと思います。

2)平成30年7月豪雨の振り返り

Q :平成30年7月豪雨のときと同じような状況になりませんか。

倉敷市:被災して5年経ち、被災した住民に話しを聞いているところですが、被災から時間がたって冷静になった部分もあり、ごみの出し方(積み上げると回収が遅くなる)によって収集スピードが変わるため、出し方には気を付けるといった意見や、周辺住民から巨大な勝手仮置場は迷惑(出さないでという住民の作った看板もある)というような意見も出ています。ただし、ごみについて忘れられていることも多々感じたため、繰り返して情報発信していくことが必要と思います。推進登録員制度には今のところ、社協やボランティア、防災士などが登録しているため、これらの人からの情報発信も期待しています。

Q :行政職員の経験の継承はできていますか。

倉敷市:平成30年7月豪雨で災害廃棄物に対応していない職員は、マニュアルなどを見て勉強していただいていますが、経験した職員とはやはり違いはあると思います。

3)地域集積所の管理について

コメント:都市部では、軽トラックを所有している率は低いため、身近な場所に仮置場が必要と考えているところですが、災害廃棄物処理計画には曖昧にしかか書けていませんし、計画している場所も明確には書けない状況です。

倉敷市:“やむを得えない場合”という状況が、どういった場合なのかは具体的に説明できず、計画にも書けないところです。官民連携会議を重ねてきて、素早い収集・撤去のために、民間業者による特別収集は、発災2~3日で動けるようになると思いますし、組織立ったボランティア団体に搬送部隊を作れないかと依頼をしています。地域集積所は、一時的に出す場所であることを住民に伝えていき、理解の底上げをしていければと考えています。

Q :地域集積所の管理主体は誰になりますか。

倉敷市:災害廃棄物処理計画には、“町内会や自治会単位で事前に協議の上、場所及び管理方法を指定しておくことが望ましい”とし、“数週間で撤去をする”など大まかに記載していますが明確に担保するものはない状況です。

4)危険物について

Q :自治会や住民へアスベストや発火物のような危険物について話すことはありますか。中学生がお手伝いをしている後ろにアスベストが疑われる建材が積まれていた例もあります。

倉敷市:連携の幅も重要になると思います。建築士会など専門家との連携もあるとよく、建築士会では、家屋を解体するのではなくリフォームで済むことを伝える取り組みや、アスベストは素人は手を出さないようにという啓発もしてくれています。岡山県建築士会倉敷支部のHPには住民にわかりやすい資料が提供されています。

(一社)岡山県建築士会 倉敷支部

コメント:灯油が入ったままのストーブなども持ち込まれますが、持ち込みを拒否するような管理は住民には困難で、第三者でないとできないこともあります。また、危険物はすぐに撤去できるようにしておくことも重要です。

コメント:廃棄物担当でない職員が仮置場の支援に入ったケースでは、住民へ何も伝えられなかったため、知識が必要で、管理の仕方を伝えてそれを実施できることが重要です。

 
〇混合廃棄物にならないような運用

Q :混廃にならないようにする仕組みはどう考えていますか。

倉敷市:住民へのヒアリングを実施して、家財やごみをやみくもに出すよりも、平積みに留めて、人力作業ができる程度にしておく方が撤去が速いと実感したため、そうしたことを伝えておくことで、混廃になることも最小限にできるといいと考えています。

コメント:和歌山県内の被災では、ラジオで分別をお願いしていました。

倉敷市:行政の知らないところで、ボランティア同士で情報共有をする仕組みが作られていることもあり、伝える手段は色々あると思います。

コメント:朝倉市が被災した際に、住民から住民仮置場を設置するよう要望があり、分別することという条件付きで許可したものの、分別ができたのはほんのわずかでした。

コメント:被災者は、自分のところが片付くと責任がなくなったと思うため、その点に対処する覚悟が必要と思います。

コメント:東日本大震災の時も勝手仮置場が発生してその対応は大変でした。しかし、分別するものだと住民が理解すれば、分別はできていくのではないでしょうか。

倉敷市:被災した畳の上にごみが置かれると畳を搬出しにくくなるため遅くなり、腐敗して臭気の原因になるなどを住民に伝えています。

コメント:災害の規模によりますが、災害廃棄物の回収日や曜日を決める対応もあります。

コメント:和歌山県海南市の仮置場では、燃えるごみは右、燃えないごみは左等、仮置場に入ってすぐルートを分けてわかりやすくなっていました。

コメント:地域集積所の位置付けを、住民自身に確認していただき、また、看板があるだけでも違ってくるため、実務ツールを準備しておくことが必要と思います。

コメント:水害時の家の片づけ方のルールづくりをして動画配信し、ごみの排出をコントロールできるようにするといいと思います。
 

5.災害用臨時ごみステーションの適正管理のために

延岡市市民環境部 資源対策課 河野 賢史氏

 

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延岡市によるオンライン発表

 

(1)延岡市の概況

 延岡市は、人口約12万人、面積約868km2で、平成18年、平成19年に1市3町が合併しました。市街地を4つの一級河川が貫流し、台風の通り道となることも多いことから、 過去に洪水や竜巻により多くの被害を受けています。

 

発生年月 災害名 住宅被害
平成9年9月 台風第19号(水害) 床上浸水:936戸 床下浸水:991戸
平成17年9月 台風第14号(水害)

全壊:78戸 半壊649戸 一部損壊5戸

床上浸水:568戸 床下浸水:788戸

平成18年9月 台風第13号(竜巻)

全壊:75戸 半壊:330戸 一部損壊:762戸

平成28年9月 台風第16号(水害/北川)

一部損壊:4戸 床上浸水:27戸 

床下浸水:78戸

平成29年9月 台風第18号(水害/北川)

一部損壊:78戸 床上浸水:27戸 

床下浸水:3戸

令和元年9月 台風第17号(竜巻) 半壊:8戸 一部損壊:545戸
令和4年9月 台風第14号(水害)

全壊:1戸 半壊:5戸 

一部損壊:205戸 床上浸水:325戸 

床下浸水:199戸

延岡市の過去の災害の概要

 

(2)準備不足が招いた問題点

 特に大きな被害を受けた平成17年9月台風14号では、五ヶ瀬川堤防の越水や内水氾濫により市内の広い範囲で浸水被害が発生しました。
 その際、災害廃棄物の処理に対する準備不足から市内のいたるところに勝手集積所が発生し、片付けごみが混合状態で山積みになりました。それにより、収集に時間がかかり、集積所がなかなか片付かない、そうすると被災者の方がごみを出す場所がない、家が片付かない、日常生活に戻るのに時間がかかるということで、連日多くの問い合わせが寄せられました。

 

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平成17年9月台風14号における勝手集積所の発生(1)

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平成17年9月台風14号における勝手集積所の発生(2)

 

(3)災害用臨時ごみステーション

 その教訓を踏まえ、平成18年度から区長等の協力を得ながら、まずは過去に風水害による被害を受けた60地区を対象に災害廃棄物の迅速な処理を目的として災害用臨時ごみステーションの選定を進めました。その後、平成23年からは東日本大震災の発生を踏まえて、市内全域に選定することとし、現在約900か所、各区に最低1か所は選定済みとなっています。

 

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災害用臨時ごみステーションについて

 

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災害廃棄物処理フロー

 

◇災害用臨時ごみステーション設置の目的:災害廃棄物の迅速な処理による早期復旧・早期復興

▷生活基盤の早期回復(被災者の利便性向上)

▷衛生面の確保(悪臭の防止等)

▷安全面の確保(火災の防止等)

▷緊急輸送等の確保(交通障害の防止)

◇災害用臨時ごみステーション設置の要件

(1)重機等の特殊車輌が作業できる十分な広さと、大型車輌が通行可能な道幅が確保された場所を選定する。

(2)特に高齢者世帯などへの負担も考慮し、被災地区及び被災地区に比較的近い場所で数を多めに選定する。

(3)設置場所として民有地(空地等)を選定する場合は、必ず所有者の了承を得ること。 

◇災害用臨時ごみステーション選定の流れ

 

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災害用臨時ごみステーション位置情報の管理

アクセスルート 通行可能車両 軽トラ 小型 平ボディ 大型 ダンプ
意見 問題なし。
災害STの作業性 侵入可能車両 軽トラ 小型 平ボディ 大型 ダンプ
ST入口 箇所数 羽場 車止め カギ  
2箇所 2.9m

東:〇

西:〇

東:×

西:〇

 
意見 東側入り口は、車止めを二つ抜いたら侵入可能。
災害用臨時ごみステーション位置情報の管理

(4)適正管理のために

■平成28年9月台風16号

 幸いなことに選定をはじめてから10年間災害用臨時ごみステーションを開設する機会はありませんでしたが、平成28年9月台風16号により浸水被害が発生し、初めて災害用臨時ごみステーションを開設しました。しかし、看板の設置や住民への周知が不十分であったため、災害用臨時ごみステーションに片付けごみが混合状態で出されてしまいました。また、便乗ごみと思われるものも見られました。そこで、この年の12月、各地区の区長等に向けて、災害用臨時ごみステーションの位置図とあわせて災害廃棄物の分別等による排出のお願いの文書を送付し、地区住民への周知を依頼しました。

 

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住民への広報

 

■平成29年9月台風18号

 平成29年9月台風18号では、前回の反省を踏まえ、被害発生後の早い段階で、被災地区の区長と協議し、分別用の看板を設置したうえで災害用臨時ごみステーションを開設したことから、分別による排出を徹底することができました。

 

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平成29年9月台風18号 

災害用臨時ごみステーション分別排出の様子(1)

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平成29年9月台風18号 

災害用臨時ごみステーション分別排出の様子(2)

 

■令和元年9月台風17号竜巻被害

 令和元年9月台風17号竜巻被害でも、早い段階で、被災地区の区長と協議し、 分別用の看板を設置したうえで災害用臨時ごみステーションを開設したことで、分別による排出を徹底することができました。

 

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令和元年9月台風17号竜巻 

災害用臨時ごみステーション分別排出の様子(1)

サンプル画像2

令和元年9月台風17号竜巻 

災害用臨時ごみステーション分別排出の様子(2)

 

 

 

 

 

(5)分別の徹底に向けた取り組み

 災害廃棄物を迅速に処理するためには、災害用臨時ごみステーションにおける分別による排出の徹底は欠かせません。そして、そのためには住民の理解と協力が必要です。分別の徹底に向けた取組みとして、様々な場面で住民や災害ボランティアへの周知・啓発に取り組んでいます。具体的には、以下のとおりです。

*「地区担当職員による地区訪問」家庭ごみ収集を民間委託する前の直営作業員が地区ごとの担当職員として区長宅を訪問し連携を図っ

  ていますが、その際に臨時ステーションの位置の確認や災害廃棄物の分別排出のお願いをしています。

*「ごみステーション維持管理補助金申請受付」家庭ごみをステーション方式で収集するにあたり 、維持管理を区で行ってもらうために

 補助金を出しており、その申請の際に区長等へ災害用臨時ごみステーションの位置の確認と分別排出のお願いをしています。

*「クリーンステーション指導員講習会」区が登録を行っ ているクリーンステーション指導員向けに年1回講習会を開催しており、その

 中で災害用臨時ごみステーションや災害廃棄物の分別について周知・啓発を行っています。(毎年、区長及び指導員が600 人以上が参

 加)

*「区長会」

*「ごみ分別説明会」(地区住民を対象に開催)

*「ごみの出前講座」(市民を対象に開催

*「災害ボランティア養成講座」でも災害廃棄物に関する周知・啓発を行っています。

 

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クリーンステーション指導員講習会(1)

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クリーンステーション指導員講習会(2)


 

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区長会

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災害ボランティア養成講座

 

■令和4年9月台風14号

 こうした取り組みのなか、令和4年9月台風14号により再び大きな被害を受け、旧延岡市域では災害用臨時ごみステーションを合計14カ所開設し、災害廃棄物の混合排出や勝手置場は発生しませんでした。一方、被害が大きかった旧北方町域では、災害用臨時ごみステーションを3か所開設し、そのうち1か所で災害廃棄物が混合状態で山積みになり、別に勝手置場が2か所発生しました。

 

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災害用臨時ごみST数

 

 災害用臨時ごみステーションの開設を含む発災時の初動対応については、合併前の旧延岡市域はクリーンセンター職員が対応し、旧3町域は各総合支所職員が対応することになっています。

 今回、旧延岡市域では、区長といち早く連絡を取り対応を行ったため、どの災害用臨時ごみステーションでも分別に協力いただくことができました。また日頃からの連携もあってか、区長自らの手作り看板を設置し、分別排出を案内してくださる区もありました。

 一方、旧北方町域では、初動対応の遅れから2か所の勝手置場が発生し、その後の対応も不十分だったことから、 それらを臨時的なステーションとして活用することも出来ず、すぐに持込禁止としました。

 

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適正な分別排出の様子(旧延岡市域)(1)

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適正な分別排出の様子(旧延岡市域)(2)

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開設途中での収集運搬の様子(1)

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開設途中での収集運搬の様子(2)

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勝手置場の様子(1)

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勝手置場の様子(2)

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勝手置場の様子(3)

 

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勝手置場の様子(4)

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災害用臨時ごみステーションでの混合排出の様子

 

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混合廃棄物の撤去の様子(1)

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混合廃棄物の撤去の様子(2)

 

 

(6)勝手仮置場や混合排出の要因

 勝手置場の発生や混合排出の要因について、次のように考えています。

■職員の知識や災害対応能力の不足

・初動における被害状況等の把握や、被害状況等に応じた適切な対応が十分でなかった。

・一部の職員が災害廃棄物の分別の大切さを理解できていなかった。

■十分な数の災害用臨時ごみステーションの確保ができていなかった

・今回被害が大きかった旧北方町域では、災害用臨時ごみステーションが事前に3か所しか選定されていなかった。

・旧北方町域に開設した臨時ごみステーションは、いずれも被災地区から自動車である程度時間のかかる距離にあった。

■コロナ禍の影響で直近の約3年間は、各種啓発の機会が失われていた。

 

(7)災害用臨時ごみステーションの適正管理のために

 災害用臨時ごみステーションの適正管理のためには、住民や災害ボランティアの理解と協力が不可欠であり、平時から継続的に周知・啓発に取り組むことが必要です。その住民の理解と協力を得るためには、職員の災害対応能力が必要であり、職員の災害対応力の維持向上を図ることが重要であることを改めて確認しました。

 そして、その一助なればという事で、今年、新たに住民向けの災害廃棄物ハンドブックや職員向けマニュアルを作成しました。職員向けマニュアルの中には、災害用臨時ごみステーションの開設や運営の具体的注意点等も掲載しています。

 

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職員向け災害対策マニュアル(表紙)

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職員向け災害対策マニュアル(一部)


【延岡市 ポスターセッション】

 

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延岡市ポスター

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延岡市ポスターセッション

1)災害用臨時ごみステーションの選定

Q :災害用臨時ごみステーションを選定するにあたってハレーションや障害はありませんでしたか。

延岡市:特に大きな障害等はありませんでしたが、当時の担当者が土地の管理者を調べたり合意を得たりする作業に苦労していた記憶はあります。また、選定後、区長から災害用臨時ごみステーションの位置情報等、市のホームページなどで公開した方がよいのでは、という意見などはありました。

Q :集積所を900箇所も設定されていますが、各区が選定しているのでしょうか。

延岡市:市役所から区長宛に文書で依頼を行い、区長に選定していただきます。

Q :適地がないという区長はいませんでしたか。

延岡市:いらっしゃいましたが、最低でも区に1箇所は設置ということを念頭に、粘り強くお願いしました。中心市街地などで、どうしても場所の選定が難しい場合は、通常のごみステーションと併用というかたちをとっています。

Q :他の自治体で、自治会に依頼したが「適地なし」との回答が多いと聞きました。どのように依頼し、ご理解をいただいたのでしょうか。

延岡市:自治会の協力をスムーズに得られたことについては、台風などによる被害が多い土地柄も関係していると思います。そのうえで、過去の経験なども踏まえながら、災害用臨時ごみステーションの利便性や早期復旧といったことを丁寧に説明することで、ご理解をいただいたと思います。

Q :自治会の組織率が高いとか、結束が固いという傾向はあるでしょうか。早く選定できた理由を伺えればと思います。

延岡市:他の自治体と特に変わりはないと思います。最近は自治会を抜ける方も多いため、その点は課題として認識しています。選定が早い一つの理由として、どうしても適地が見つからない地区については通常のごみステーションと併用しているということがあげられると思います。

Q :通常のごみステーションと併用している災害用臨時ごみステーションにおいて、発災時、家庭ごみと災害廃棄物の棲み分けはどうなっていますか。

延岡市:今のところ併用している地域での被害は発生していません。

2)令和4年の災害用臨時ごみステーションの運用

Q :災害用臨時ごみステーションは、職員が開設したのでしょうか。

延岡市:基本的には、発災翌日に、被害調査のため現地を回って各区長と調整を行った職員が看板を設置し開設しましたが、中には区長が看板を作成し開設したケースもあります。

Q :開設の仕方が違ったことによるごみの分別状況などについて違いはありましたか。

延岡市:違いはなく、どちらもきちんと分別されていました。

Q :運営管理は誰が行っていましたか。分別徹底のために行っていることはありますか。

延岡市:災害用臨時ごみステーションについては、基本的に地区の方々に見守りをお願いするかたちになりますが、規模等によっては職員の配置も必要になると思います。 昨年の台風で開設した一部の災害用臨時ごみステーションについては、規模も大きく災害用臨時ごみステーション兼仮置場といった位置付けであったため、職員を配置して運営管理を行った経緯があります。災害用臨時みステーションの開設にあたっては、区長とも分別による排出について確認したうえで、分別看板を設置することで分別徹底を図っています。

コメント:行政が手を出しにくいところに取り組んでいて、とても良い事例だと思います。

Q :旧延岡市域は職員がいなくても混合排出がされずに、うまく管理運営されていたということでしょうか。

延岡市:発生した災害廃棄物の量や災害用臨時ごみステーションの規模といったことも関係しているかもしれませんが、 地区担当職員が定期的に見回りを行い、効果的な途中収集を行うことでコントロールしていた面もあると思います。

Q :住民の協力が得られているのは平時から周知等しているからでしょうか。

延岡市:日ごろから災害廃棄物に関わらず地域との連携を図り、関係を築いている地区担当職員の存在が大きいと思います。

Q :分別がうまくいかなかった地区は、量が多かったためか、あるいは管理の問題だったでしょうか。

延岡市:もちろん、分別がうまくいくかいかないかについては、災害の規模や発生した災害廃棄物の量によるところもあるかと思います。ただし、今回分別がうまくいかなかった地区については、適切な初動対応がとられていなかったことや対応した職員の災害廃棄物に関する認識不足によるところが大きかったと思います。

Q :通常時と災害時の分別は異なりますが、普段から分別は徹底されているのでしょうか。

延岡市:徹底されています。災害の後も家庭ごみの分別は徹底されています。

Q :地域住民に管理をお願いしたことで、費用は発生しましたか。

延岡市:特別な費用等は発生していません。 災害用臨時ごみステーションについても、通常の ごみステーションと同様のものと考えています。

Q :延岡市の取り組みが、他の自治体に影響を及ぼしている例はありますか。

延岡市:そこまでは把握していません。

Q :災害用臨時ごみステーションの開設や円滑な運営のために、自治体の取組と住民の自主的な動きのどちらが主に働いていると思いますか。

延岡市:本市では台風などによる被害が多いことで 住民の対応力が上がっているということはありますが、それだけでは難しいと思います。やはり自治体として、平時から周知啓発や地域との連携に取り組むことは欠かせないと思います。

Q :勝手置場が令和4年度にできたということでしが、災害用臨時ごみステーションについて見直しを行う予定はありますか。

延岡市:昨年、勝手置場が発生した原因の一つとして、大きな被害を受けた地域に災害用臨時ごみステーションが3箇所しか選定されていなかったことがあげられます。特に、そういった地域については継続的な見直しが必要だと思います。

3)収集・撤去

Q :一般的な傾向として、収集運搬は委託が進んでいますが、直営が残ることでできることがあります。直営部隊を残す取組みはありますか。

延岡市:そこは重要な点だと思います。延岡市では家庭ごみの収集を5年位前に全面的に民間委託していますが、それまでの直営作業員が一般職として組織に残り、災害の際も活躍しています。ただし、そういった現場経験、災害対応経験がある職員も退職などにともない年々減ってきており、今後の組織づくりも一つの課題だと考えています。

Q :災害廃棄物の収集は、通常と異なる体制で対応しますか。

延岡市:災害の規模によりますが、 基本的には、通常のごみを収集している委託業者が収集することになります。

Q :収集運搬能力が追い付かないことはありませんでしたか。

延岡市:災害の規模から今のところ対応できていますが、不足した場合は産業資源循環協会をはじめとする民間事業者や近隣自治体とんの協定を活用して支援要請することになると思います。

4)住民への啓発

Q :災害廃棄物の啓発はどのように行っていますか。

延岡市:今年から市民向けのハンドブックを作成しましたので、そちらを活用して啓発を行っています。また、啓発の場面にあわせ、チラシやパワーポイントなどを活用した啓発も行っています。

Q :ごみステーション維持管理補助金申請”で説明・確認されていることに感心しました。講習会等の参加者の多さにも感動しましたが、何か特別なことはされていますか。災害はいつ起こるかわからないものです。住民にモチベーションを保っていただくのは難しいのではないでしょうか。

延岡市:啓発について特別なことはしていませんが、様々な場面で繰り返し 啓発を行うということは意識しています。 本市は、台風の被害も多く、住民の意識も高い方だと思いますので、丁寧に繰り返し啓発を行うということで、住民のモチベーションも保つことができるのかなと思います。

Q :啓発の機会は年に何回ありますか。住民からの出前講座の要請はありますか。

延岡市:ごみステーション維持管理補助金申請やクリーンステーション指導員講習会は、それぞれ年1回実施しています。地区担当者による地区訪問は特に回数は決めていませんが、日頃から違反ごみの相談など出来るだけ出向くようにしています。住民からの出前講座等の要請については、数は多くありませんが、地区住民や市民団体の勉強会ということでご依頼をいただいております。

Q :平時から事前防災として、ごみを減らす動きはありますか。

延岡市:具体的な動きなどは把握していません。今年作成した市民向けのハンドブックには、普段から不要なものは処分しておきましょう、家具の転倒防止策を講じましょうといったことを記載しており、啓発の必要性は感じています。

Q :職員の対応能力の維持・向上が課題とされていますが、それを解決していく取組みはありますか。

延岡市:職員の対応能力の維持・向上の一助になればということで、今年、新たに災害対応マニュアルを作成しました。また、毎年、出水期前に職員が集まり災害時の対応を確認したり、国や県などが開催する研修会等について情報を共有し積極的に参加することで、今後も継続して職員の対応能力の維持・向上を図っていきたいと考えています。

6.全体討論

Q :地区集積所や仮置場について、自治体で制度化・ルール化できるかどうか伺いたい。条例等で地区集積所を地域で設置しないとならないとする可能性はないかどうか、そこまで認識して社会の文化にするのはまだ行きすぎでしょうか。

A :都市部の基礎自治体は公有地が少なく確保が難しいと思います。一方で、広域自治体の公有地も無尽蔵というわけではないので、必要性を鑑みて場所を探しているかどうか、考え直す必要もあると思います。庁内調整は容易でないため、条例等で定めれば土地を有している部局と一緒に考える機会になると思われるので、手段の一つかもしれません。

 

コメント:各地区に依頼してもそもそも土地がない等の地域性はあると思います。候補地を公表できないこともあるようですが、社会が成熟しないと、この問題は解決しないと思われ、国がルール化してもいいけれども、各地域の条例でフレキシビリティをもって制度化することもできるかと思いました。

 

コメント:ごみの減量化に取り組む推進員制度は、地域によっては形骸化していることもあるようですが、廃棄物処理法で明確化され、平時のごみ処理から災害時につなげられる制度です。防災士や、ボランティアとの連携の他に、ごみ減量化の推進員制度とつなげて、基盤強化することができるだろうかと考えていました。

和歌山県:延岡市では、様々な機会で啓発をして、また、随時開催されていることが大事だと思います。和歌山県でも小学校向けに啓発をしましたが、大人向けには弱く、災害ごみへの意識が低い地域もありますが、延岡市の取組を参考にしていきたいと思います。

 

コメント:地区集積所として延岡市で設定している900か所の管理は、地元住民の協力も必要ですが、DXによって防犯カメラを利用して人材不足を補うシステム開発はどうかと思いました。また、各自治体で、災害廃棄物の排出についてチラシ類で周知することの大切さが認識されていますが、災害時に物事を合理的に考えられない状況において、ナッジの観点から、どうやってすんなりと認識していただけるか、ノウハウを体系立てていくと、チラシの作り方も変えられると思います。

 

コメント:行政が仮置場を開設して、住民が持ち込み、受付で品目等を確認して、廃棄物を置いていく形が一般的な一次仮置場であり、排出者が処理する側へ災害廃棄物の受け渡しをする機能があります。いわゆる“勝手仮置場”は行政が知らない場所に災害廃棄物が置かれるため、ごみの不法投棄と同じです。地区集積所はこれらの中間にあるという見方ができると思います。排出する住民がここに置けば、行政に片付けてもらえると、心の中で依頼し、住民と行政の双方で認識を共有できるかどうかで、住民は分別した方がいいという意識をもって排出することが期待できます。『受け渡し』の概念ができるように、地区集積所を設計していくといいと思います。

 

倉敷市:倉敷市では令和2年度から防災部局が地区防災計画の作成を推進しています。地区防災計画は近隣の5人組など小さい規模でも問  われないもので、その中で災害廃棄物の置き場所についても考えていただく機会として参入を試みましたが、災害時に命を守る行動にも意識が高まっていないところで、ごみのことまでは考えられず、失敗した経験があります。それでも地区防災計画が鍵だと思いますので、地域がある程度成熟し、災害廃棄物のことも考えないとならないと思われたタイミングをつかんでまた、入り込んでいこうかと思います。

 

南伊勢町:南伊勢町では、東日本大震災後に町内38集落すべてで地区防災計画を作りました。住民が地区防災計画を作るきっかけとして、防災用の資機材を購入する補助金をセットとしました。行政向けに災害廃棄物の初動マニュアル作りましたが、災害時に場所の取り合いにもなるため、改めて防災部署と廃棄物部署の連携が重要と認識しました。南伊勢町では10軒くらいの単位で仮置場を設けていますが、“住民仮置場”と“一次仮置場”といった行政が使う用語で管理の在り方が変わってくるため、きちんと説明できるものがあるといいと思います。

7.まとめ

座長:貴重な話題提供をいただきとても勉強になりました。仮置場、地域集積所、住民仮置場などいろいろな用語があり、研究者目線では用語の整理・定義が大事であると考えつつも、地区集積所が適正に管理・運営されるのであれば、仮置場と地区集積所がオーバーラップしたところに解決策があると感じました。自治体の取組事例からバリエーションが出来てくる中で、地域特性に応じて地区集積所を体系化していくとよいと思います。また、地区代表者、推進員、住民それぞれにキーパーソンとなる人材がいたり、組織体やコミュニティが機能していることで地区集積所の良い管理・運営につなげられると思うため、本日の議論を次回へ大切につなげていきたいと思います。

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