関係者とつながるStakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】大嶺 聖(おおみね きよし)氏

大嶺 聖(おおみね きよし)

長崎大学大学院工学研究科 教授(沖縄県出身)                                

(2023/5/31掲載)

リレー寄稿_大峰 聖

災害廃棄物に関わったきっかけ

 最初に災害廃棄物に関わったのは,地盤工学会の東日本大震災の調査団として被災地の地場環境調査を行ったときでした。専門の地盤環境工学分野で廃棄物のリサイクルや汚染土壌の修復に取り組んでいたため,現地で災害廃棄物対策の重要性を実際に学ぶことができました。その後,2 016年熊本地震では,解体建物由来の廃棄物が大量に発生し,分別処理の状況調査を行いました。また,2017年九州北部豪雨災害では,調査だけでなく,家の中に堆積した土砂を運び出す作業をボランティアとして協力したこともあります。

もっとも強く印象に残ったこと

 東日本大震災から1ヶ月後に訪れた宮城県沿岸部の被災状況の調査では,多くの建物,道路および港が崩壊し,大量の災害廃棄物・ヘドロ・被災残壊物が発生している状況を目の当たりにして,被害の甚大さに言葉を失いました。その後,復興支援として毎年のように訪れた岩手県陸前高田市では津波堆積物や災害廃棄物が含まれた農地の修復を通して地元の農家やボランティアの方々との交流が今でも続いています。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 地盤工学会の研究委員会では,災害廃棄物由来の分別土砂の有効利用についての研究を行ってきました。また,プラスチック廃棄物を含む不法投棄や廃棄物処分場の安定性の現場試験の研究をきっかけに,スリランカのごみ山が大雨で崩れた現場の原位置調査を実施したことがあります。気候変動で豪雨災害が頻発することが懸念されており,日本の経験を踏まえて海外での支援も行いたいと考えています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 災害廃棄物の発生時には,分別処理と同時に様々なリサイクル技術の活用が望まれます。できるだけ低コストで環境負荷の小さな対策技術の開発,情報の共有や発信に務めて行きたいと考えています。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 一般の廃棄物に共通しますが,できるだけ焼却処理や廃棄処分を減らす必要があります。有効利用できる材料でも地域住民にとっては,受入できない場合もあります。最後は様々な人との対話が重要になると思います。

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