関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】今西 肇(いまにし はじめ)

今西 肇(いまにし はじめ)

東北工業大学 名誉教授                               一般社団法人和合館工学舎 学舎長                           株式会社小野組 技術顧問                                  (大阪府出身)

(2023/4/28掲載)

リレー寄稿_今西 肇

災害廃棄物に関わったきっかけ

 2003年ごろから建設発生土と廃棄物の有効利用に関する研究を行っていましたが、災害における廃棄物にかかわったきっかけは、2011年に発生した東日本大震災です。2010年4月に東北工業大学教授として、福岡県福津市から宮城県名取市に愛妻と愛犬と一緒に移住しました。その11か月と11日後に被災しました。幸い私の住む団地は地盤がしっかりしていて高台にあったため、大きな被害を免れました。地震直後、歩いて閖上まで行ったところ、津波により家屋は流され、公共施設は破壊され、仙台東部道路(盛土)から東側(海岸方向)はがれきの山でした。涙が出て止まりませんでした。自分の使命を問い続け、志願して地盤工学会の災害調査団をはじめ、土木学会が中心となり組織された7学協会の東日本大震災に関する東北支部学術合同調査委員会に加えていただきました。これが今私のできることだと言い聞かせながら…。

もっとも強く印象に残ったこと

 震災直後のがれきの絶望的な量の多さです。がれきが残った場所の静寂です。自宅から歩いて訪れた名取市閖上地区では、地域建設業の方が建設機械を使いがれきを片付けておられました。無言で何もできずにその場にたたずんでいたことを思い出します。閖上地区は見渡す限りがれきの山で静寂に包まれており、怖さで身がすくみました。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 災害廃棄物処理を含む災害対応は主に地域建設業が担っています。その地域建設業は地域の雇用と経済を支えています。この建設業が豊かに元気にならなければ日本の地域は疲弊します。そこで、大学を退職した後は、地域建設業の災害対応力や技術力向上の支援をしながら、地域建設業の役割をもっと市民の皆さんに知っていただく活動を始めました。それが一般社団法人和合館工学舎です。この場所は技術者の交差点と位置付けており、立場を超えて誰もが集う場所を提供しています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 今世紀に入って豪雨や地震などによって引き起こされる自然災害は増加の傾向にあります。そのため災害廃棄物も増える傾向にあり、その再資源化の取り組みに関する情報の積極的な開示と、公共性を考えた有効利用を促進するための情報共有の包括的な場の提供などの発信を積極的にお願いしたいと思います。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 災害で発生したがれきなどを震災廃棄物や災害廃棄物という名称で表現しています。震災直後に違和感を持った言葉が「廃棄物」です。これらは最終的に廃棄される運命にあるかもしれませんが、本当に廃棄物なのでしょうか。地震が発生するまでは、誰も廃棄したいと思わなかったものが廃棄物という言葉で表現していいのかという違和感です。地震とともに発生した津波によって、今まで生活の一部であったものすべてが廃棄物と言われてしまいます。私が地震直後に皆様にお示ししたのは、「残壊物」という言葉です。廃棄物の英訳はwaste materialsですが、残壊物とすればdebrisです。被災した地域住民の目線で考えた場合に、廃棄物ではなく残壊物だと考えています。災害発生直後の壊れたものを災害廃棄物ではなく災害残壊物としてはいかがでしょうか。

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