平時の対策を知る連携・啓発Pre-disaster preparedness actions 平時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

災害ごみに関する市民ワークショップの取組み

(取材・執筆:公益財団法人廃棄物・3R研究財団 中山育美氏)

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2023年3月

 災害ごみについて、災害時にできること、普段できることを考える市民ワークショップの取組事例を3つ紹介します。

目次

1.国立市 災害ごみ市民ワークショップ

2.川崎市市民活動グループによる適応策・防災・減災市民ワークショップ

3.川崎市市民活動グループによる災害ごみ市民ワークショップ

 

1.国立市 災害ごみ市民ワークショップ

  • テーマ 「災害ごみを復旧・復興の妨げにしないために、『災害が起きる前に私たちにできること』・『災害が起きた後に私たちにできること』」 
  • 日時  令和5年1月28日(土曜日) 13時30分~15時30分
  • 場所  市役所会議室
  • 参加者 国立市民9人
        市職員 4名(ごみ減量課職員3名、下水道課職員1名)

プログラム

13:30~13:55 開会 挨拶
13:35~ ミニ講演「災害ごみ発生事例」
13:55~ 災害廃棄物処理計画等説明
 (1) 処理計画・ハンドブックについて
 (2) し尿処理について
14:10~ 質疑応答
14:15~ 市民ワークショップ
 〇災害が起きる前に私たちにできること
 〇災害が起きた後に私たちにできること
  (1) 意見交換 取りまとめ
  (2) 発表 講評
15:30 閉会

 

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 ごみ対策に取り組んでいる方、まちづくり・自治会関係者、災害ボランティア経験のある方が参加し、活発に意見交換をしました。

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主な質問

Q: 東日本大震災以降も災害が多く発生している。行政の災害廃棄物処理計画は機能したか、うまくいかなかった事例はあるか。
Q: 災害時にごみを仮置場へ持っていくにも車を持っていない。
Q: ブロックなど処理が困難なものは時間がかかる。
Q: 地震の後、災害ごみをどうするか、どう決定してどうやって市民へ知らせるのか、市民の役割は何か。
Q: 高齢者が多いが、どうやって情報を入手できるのか。
Q: 工務店、土木業、市民の協力が欠かせない。リーダーシップをとったら良い事例やもめた事例はあるか。
Q: 分別の仕方が災害時も平時も同じとのことだが、断熱材なども燃えるごみとして仮置場へ持っていくのか。
Q: 国立市だけの問題ではなく、近隣市や他県との話し合いはできているか。

 

グループ発表

トラックでボランティアに行き、仮置場でごみの種類ごとに降ろさないとならず、乗ったり降りたり時間がかかって大変だった。瓦だけを2日間ひたすら集めていったら早かった。分けて出しておいてもらえるといい。
ボランティアを活用することは、非常に重要。
普段から近所の人達と仲良くしておくことは、大切だと思う。
情報収集の大切さ(現状把握、支援が必要な人の把握等)
コンポストをやっているので災害時にもごみが出なくていい。
ごみカレンダーに災害ごみに関する頁を作って平時とどう違うかを住民に知らせておけばいい。
周知のため必要であれば自治会が協力することはやぶさかでない。
災害時に必要なのはごみだけではない。災害時の被災者の生活についてストーリーを作ってほしい。
ごみを普段から減らしておくことで、災害時にごみを減らせる。
集積所がどこかを知って、分別の看板を作っておく。
高齢者のごみ出しが課題だと思う。

 

2.川崎市市民活動グループによる適応策・防災・減災市民ワークショップ

  • テーマ 「災害時のごみとトイレ事情」
  • 日時  令和4年8月27日(土曜日)14時00分~16時00分
  • 場所  川崎市市民館会議室
  • 講師  大正大学地域創生学部教授 岡山朋子氏
  • 参加者 22名 スタッフ:5名

プログラム

14:00~ 開会
14:00~ 講演「災害時のトイレとごみ事情」
14:45~ 質疑応答
15:10~ ゲームで考えよう すごろく『片づけごみの冒険』

15:30~

ワークショップ
 〇災害時にどうしたらいいだろう
 〇災害前(普段)にできることは何だろう
16:00 閉会

 

質疑応答

Q: 災害時にバイオトイレ、コンポストトイレを使うのはどうか。
A: 東北ではコンポストトイレの温度が足りず、災害時に使えなかった。コンポストを撹拌するには電気が必要。
Q: マンホールトイレはどうか。
A: どこでも使えるわけではない。津波や地震で下水管が破損することもある。
Q: ごみの収集が1週間来ないことが考えられる。トイレごみはどこに置いておけばいいか。
A: マンションであれば1階まで持って行きフレコンバッグに入れておくといいと思う。大学で検討したところ320人で1日に糞尿1.2トンになった。尿と便を分けることができれば量は減るが、尿を置いておくと臭気が発生し不衛生である。

 

講座「災害時のトイレ・ごみ事情」で印象に残ったこと

自分の住んでいるマンションでの対応をどうすべきか考える必要性を改めて思った。
知らないことがたくさんあった。実際に起きた事例を知って参考になった。
食料よりトイレが待ったなし。
トイレの準備の大切さを感じた。ゴミの量の大きさを実感できた。
水、食べものよりまずトイレ。
避難者自らが避難所運営をする(他人任せにしない)。自宅避難の場合トイレが最重要と分かった。
災害の時のためにトイレ対策をしっかり話し合う。

 

すごろく

 和歌山県が開発した災害ごみのすごろく「片付けごみの冒険」を使い、スタッフがすごろくに記載されている内容を読みあげて、遊びながら学びました。次の感想がありました。

ごみの出し方にも注意すべき点が多い。
災害ごみをどこに出すかなどは、市の情報を確認する。
冷蔵庫が使えなくなった後の食品やトイレごみは優先して収集できるように、片付けごみを分けて出すように気をつける。

連携啓発_市民WS_すごろく

ワークショップ

<災害時にやること>

  • 行動
    ・ マナー、ルールを守って行動することが大事。
    ・ 誰がリーダーになるのかわからないが大丈夫か。
    ・ マンションの排水が使えるか点検する。
  • トイレ対策
    ・ コンポストトイレの導入
    ・ トイレごみをコンポストかバイオでなんとかならないか。
    ・ 排泄物の匂いを閉じ込める容器が必要。
    ・ 仮設トイレが避難所に来ていないときはどうするか知りたい。
  • ごみの出し方
    ・ ごみ収集車が来るまでは自宅で保管しておく心づもり。
    ・ 災害時に生ごみ処理に段ボールコンポストがあれば悪臭も害虫も出ない。

<普段にできること>

  • 行動
    ・ 災害時のごみの出し方を周りの人と話し合っておく。
    ・ 災害ごみの量を把握して、置き場所を考える。
    ・ 自分のマンションの下水道の構造を調べておく。
    ・ 何がどんな問題になるか予想しておく。
  • ごみ対策
    ・ 今のうちに不要なもの、ごみを捨てておく。
    ・ 災害時にこそごみのマナーが必要。きちんと分別をできるよう日頃から心がける。
  • トイレ対策・訓練
    ・ 1ヶ月は大丈夫なようにトイレ用品は準備している。
    ・ 5日分の水・食料の確保、簡易トイレを7日分確保して、避難所は頼りにしない。
    ・ 携帯トイレの備蓄と処分用ビニール、段ボールの用意。
    ・ 災害時を考えたトイレの自主訓練をする。
    ・ トイレ対策を家族で話し合い、確認する。
    ・ トイレの問題はあまり報道されないが、切迫した問題。もっと情報共有すべき。

 

3.川崎市市民活動グループによる災害ごみ市民ワークショップ

  • テーマ 「災害ごみから考える暮らしのスリム化」
  • 日時  令和5年2月19日(日曜日) 午前10時00分~11時40分
  • 場所  かわさき市民活動センター会議室
  • 主催  3R推進プロジェクト(川崎市)
  • 参加者 12人

プログラム

10:00~ 開会 挨拶
10:05~ 講演「災害ごみについて考えよう!」
10:35~ 質疑応答
11:05~ 市民ワークショップ
 〇災害ごみはどこへどうやって出すか
 〇災害ごみについてふだんできること
  (1) 意見交換 取りまとめ
  (2) 発表 講評
11:40 閉会

 

 ごみ対策や気候変動対策に取り組む市民グループのメンバーが参加し、他市の災害ごみの事例から問題点を共有し、普段の生活や気候変動対策につなげていきたい、定期的に学ぶ機会を作って積み重ねること、地域に発信して周りに広めていきたいとまとめられました。

 

グループ発表

災害時にも分別する意識をもつことが大事。
災害ごみを出す場所がない。どこに出すかわからない。
各地区で災害ごみ集積場所を決めておけばいい。
マンションのエレベーターが止まる可能性大。
現場のボランティアリーダーへ情報伝達が必要だ。
車で持っていくことはできないため、どうやって出すかがイメージできない。
坂が多くて運べないためボランティアの協力が必要になる。
若者が手伝える環境づくりも大切。
家具の転倒防止や濡れて困るものは2階へ移動。写真はデータ化しておく。
暮らしをスリム化しておくことで、災害ごみが少なくできる。

 

問題意識

Q: 自分たちは分別しようとしても、他の人たちが一気に災害ごみを出して早い者勝ちになると思う。
Q: 高齢者はごみ出しができない、地域でのコミュニケーションや協力が大事と分かった。
Q: マンションでは隣にだれが住んでいるかもわからないため、助け合うこともままならない。

 

講評

〇「災害時に分別なんてできない」という気持ちになりますが、少なくとも(1)スプレー缶やカセットコンロボンベ、漂白剤のような危険物を混ぜて出さないこと、(2)災害ごみ用の集積所に生ごみを出さないようにすることが大切です。生ごみは優先的に収集するため、普段のごみステーションに出しましょう。

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ワークショップの様子

 

おわりに

 市民が災害ごみ、し尿についてどのような関心があり、行政はどう応じていくべきかを考える参考にしていただければと思います。


廃棄物・3R研究財団 中山

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