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令和4年度 災害廃棄物情報交換会(第2回)を開催しました (テーマ:いかに住民の理解を得て災害廃棄物処理を進めるか)

災害廃棄物情報プラットフォーム編集部

連携啓発_情報交換会2_サムネイル

2023年3月

目次

1.災害廃棄物情報交換会について

2.仮置場ファストレーンの取組

(1)令和2年7月豪雨による被害

(2)初動対応・仮置場の設置

(3)ファストレーンによる仮置場の運営

(4)振り返り

3.話題提供 住民を含めた仮置場ファストレーンの訓練

4.総合討論「いかに住民の理解を得て災害廃棄物処理を進めるか」

(1)災害時の住民とのコミュニケーション

(2)ファストレーンにおける『単品』とは

(3)住民目線の取組のたいせつさ

(4)住民管理集積所のむずかしさ

(5)災害廃棄物訓練による退蔵品の削減と災害廃棄物の減量化

(6)業者との協力・連携について

5.まとめ

1.災害廃棄物情報交換会について

 災害廃棄物対策の取組みやアイディアを共有しつつ、関係団体同士の緩やかなつながりを作っていくために、国立環境研究所では「災害廃棄物情報交換会」を開催しています。令和4年度は、「いかに住民の理解を得て災害廃棄物処理を進めるか」をテーマとして、第2回は以下の要領で実施しました。情報提供いただいた取組みや議論の内容について紹介いたします。

災害廃棄物情報交換会(令和4年度第2回)
日時 令和4年12月20日(火曜日)13:00~16:00
場所 AP八重洲東京 ハイブリッド開催
出席者
(敬称略)
(座長)鈴木 慎也 福岡大学工学部社会デザイン工学科水理衛生工学実験室 准教授
井平 達也 和歌山県 環境生活部循環型社会推進課 副主査
大瀧 慎也 岡山県倉敷市環境リサイクル局リサイクル推進部一般廃棄物対策課課長
瀬古 智秀 三重県南伊勢町 環境生活課 課長
堂坂 高弘 熊本県人吉市 市民部環境課 課長補佐
(オブザーバー)
荒井 昌典 神奈川県横浜市 資源循環局 適正処理計画部施設課長
唐崎健太郎 愛媛県松山市 環境部環境モデル都市推進課
河原 隆 総社市 選挙管理委員会 事務局長

国立環境研究所
廃棄物・3R研究財団

 

2.仮置場ファストレーンの取組

 熊本県人吉市市民部環境課 堂坂 高弘 氏

(1)令和2年7月豪雨による被害

 人吉市は、令和2年7月豪雨により全壊885棟を含む3,513棟が被災し、約157,000トンの災害廃棄物が発生しました。令和4年3月に処理を終了することができましたが、災害等廃棄物処理事業補助金の対応では苦慮しました。線状降水帯という言葉が毎年聞かれるようになり、被災した全国の自治体から補助金に関する問合せは多く寄せられていますし、市町村にとって補助金対応の事務は困難なものです。

 

連携啓発_情報交換会2_浸水状況

中心商店街の浸水状況

連携啓発_情報交換会2_片付けの様子

同地点片付けの様子 写真提供:人吉市

(2)初動対応・仮置場の設置

 平成31年4月に策定した人吉市の災害廃棄物処理計画では、仮置場候補地を2か所設定していましたが、膨大な災害廃棄物の発生が予想されたため、十分な広さがある未利用だった工業用地を仮置場として確保でき、7月4日に発災してその2日後に職員だけで仮置場を開設し、運用を開始しました。ただし、仮置場は草が生い茂っていたため、条件のよい場所は狭く、初日で仮置場は満杯になりました。災害廃棄物を混載している車両は、場内で行ったり来たりして廃棄物を降ろす作業を繰り返すため、何度もぶつかりそうになる状況でした。

 7月6日に熊本県と熊本県産業資源循環協会(以下、産資協と略す。)が仮置場へ来て、仮置場を数日間閉鎖し、整備してから開場するように提案されましたが、いったん開設した仮置場を閉鎖することはできないため、場内を整備しながら受け入れを続けることとしました。

 その翌日から産資協が午前中に場内整備を行い、午後1時から住民の受入れを行いましたが、住民は朝5時すぎから仮置場の前で待つようになり、国道で大渋滞と混乱が生じて警察からも厳しく指導されました。

 渋滞の要因として、受付票の記入に時間がかかったことも挙げられ、そのため受付票をやめて、受付では写真撮影のみに変更しました。

連携啓発_情報交換会2_混雑状況

発災当時の混雑状況

連携啓発_情報交換会2_仮置場

発災当時の仮置場 写真提供:人吉市

(3)ファストレーンによる仮置場の運営

 このような状態から、仮置場運営会社は、熊本地震や平成30年7月豪雨、令和元年佐賀県豪雨の経験をもとに、仮置場での『ファストレーン』を導入しました。

 住民は複数のごみを積載して持ってくるため、仮置場内で時間がかかり、混雑の要因となっていました。ファストレーンは、単品の車両を優先して場内に入れることで、仮置場内の滞留時間を短くすることができました。

 図面のとおり、単品車両と複数品混載車両とでレーンを分けて、単品の車両3台に対して、複数品混載車両1台の割合で仮置場へ受け入れました。

連携啓発_情報交換会2_ファストレーン方式

ファストレーンの方式 提供:人吉市

 当初は住民からの反発もあり、現場が殺気立っているところで、仮置場運営会社が住民に向けて説明する折には警察の協力を得ながら説明を行いました。ファストレーンによって仮置場でスムーズにいくことを住民の方も目の当たりにしたことで『分けたら早い、混ぜると遅い』を理解いただくことができたと思います。住民の声なども仮置場運営会社が作成したビデオでご覧ください。
 https://www.youtube.com/watch?v=yjS_qNSQhI8

 片付けごみの受入れがひと段落した令和2年8月末にファストレーンを終了しました。

 

連携啓発_情報交換会2_チラシ例

住民へのチラシの例

連携啓発_情報交換会2_モータープール

整備後のモータープール 写真提供:人吉市

(4)振り返り

 振り返りとして、仮置場の開設を急ぎましたが結果的に準備不足で混乱を招きました。当初から産資協の協力を得て十分な準備をしてから開設すべきだったと考えています。

 今回の災害を踏まえて産資協と協議を行い、発災直後に配置される支部が決められたため迅速に支援に入ってもらえるようになりました。

  仮置場はアクセスはよかったのですが、渋滞によって周辺住民に迷惑をかけることになりました。仮置場を一方通行にしたり、車両番号で入場を制限するなどの運用方法を決めておく必要があったと思います。また、仮置場設置と運用について、被災者へ周知徹底することも重要です。

 今回のファストレーンは、4.5haの広い土地を使って効果を発揮することができました。仮置場面積の要件が整わないと実現できない方法だと思います。人吉市の仮置場候補地の1か所は、地理的条件から今度被災したときにファストレーンを実施することは難しいため、それぞれの仮置場の条件に応じた運営方法が必要になります。

 平常時と災害時の分別の違いを普段から住民に周知徹底しておく必要がありますが、まだ住民への啓発は十分にできていない状況です。当時を振り返って、住民の方が、災害時に市が被災者へ分別を徹底させたことに不満があると話しをしに来られました。分別の必要性について説明をしましたが、最後まで納得していただくことはできませんでした。災害時に被災者の方々には無理をいただいたと認識しています。住民への説明をうまくできていなかった点もあるため、粘り強く説明をしていきたいと考えています。

 仮置場での受付票は必要と思いますが、持ち込まれたごみが市内で発生した災害廃棄物かどうかの真偽を確認する術はありませんでした。受付票や受付方法の見直しも必要です。

 ファストレーンは、今回の災害の混雑と混乱の末に事業者が考えた方式でしたが、他自治体でも良い取り組みがありますので参考にしていきたいと思います。

・質疑応答

Q: 計画を策定して翌年7月に被災していますが、計画は活用できましたか。
A: 災害廃棄物処理計画は、前任者によって平成31年4月にできたものです。自分が異動してきて計画を見たところ、仮置場候補地2か所は所管部署との調整ができていませんでした。調整しないといけないと思っていた矢先に災害が発生したため、現場対応になりました。
現在、計画の見直しを進めているところですが、市民の意見は仮置場を1か所にしたことが間違いだった、逆に1か所だったから良かったなど分かれています。経験したからわかったこともあり、例えば、仮置場に案内する際の広報について決めておくことが大事で、市民の意見も含めて令和5年度にかけて改定していく予定です。
Q: 仮置場で、受付票をやめて写真のみにした後、写真はどのように活用しましたか。例えば、仮置場への搬入台数の確認に使うなどしましたか。
A: 写真を仮置場への搬入台数の確認に使うことはしませんでした。受付票はあわてて作りましたが、発災後も雨の中で濡れながら受付し、時間もかかりました。また、受付票があっても市内のごみかどうか確認ができませんでしたので、その代わりに記録として写真を撮ることとして災害等廃棄物処理事業補助金の対象になるようにしました。
Q: ファストレーンで単品車両3台に対して混載車両1台を入れるように決めた根拠は何でしたか。
A: 現場の状況を見ながら決めたもので、特に根拠はありませんが、3:1で単品車両を優先して運用したところちょうどよかったと思います。
Q: 車のない人への支援はどのように対応しましたか。
A: 熊本市内の収集運搬業者が長期間にわたって支援に入ってきてくれたため、委託して収集しました。そのため1か月ほどでごみは街中からほとんどなくなりましたが、ごみ出しができない人がいたため、ごみに『災害廃棄物』と貼り紙をして家の前に出してもらい、電話をもらって回収に行く取組みを開始しました。熊本市の業者の支援がなくなった後は、市内の許可業者へ個別に委託して収集を続けました。次第に自分で仮置場へ持っていける人も家の前に置くようになりましたが、やめるにやめられなくなっていたところ、災害査定で必要性を指摘されて令和3年3月に終えました。ただ、仮置場を閉鎖した後にもう一度始めてほしいという声があり、再開したこともありました。

3.話題提供 住民を含めた仮置場ファストレーンの訓練

説明者:国立環境研究所客員研究員 宗 清生

 11月17日、徳島県阿波市で、災害時の分別について住民啓発の重要性を理解すること、仮置場の設置運営方法や手順の習得、仮置場の事前準備の必要性を理解することを目的として、中国四国環境事務所令和4年度仮置場設置運営モデル業務(徳島県中央広域ブロック)「災害廃棄物仮置場実地訓練」が、実施されました。訓練には、徳島県、ブロック内市町、徳島県産業資源循環協会に加え、住民も参加した特徴のある訓練でした。また、見学者として、県内市町村、四国内産業資源循環協会、県議会議員、阿波市長、市議会議員なども集まり、総勢約150人でした。

 訓練では、仮置場設置訓練、片付けごみの受入訓練などがあり、後者の訓練で災害廃棄物の単品積載車両のレーン(ファストレーン)と混載車両のレーンとに分けて受付けすることで、単品で持ち込むと早いことを実感してもらう訓練が実施されました。

 訓練後、参加した住民からは「分別して持ち込まなければ渋滞を招いて周囲に迷惑を掛けてしまうことが分かった」というコメントがあり、一定の成果はあったものと考えられます。しかし、一方では、道路幅が狭いことや、分岐点からの距離は両レーンとも短いことから、災害時には単品積載車のお得感は小さいものになるのではないかと推察されました。

 この訓練に参加した住民は、婦人団体連合会の皆さんで、阿波市合併前の旧4町にそれぞれ組織があるため、地域による偏りがないことや、資源ごみの実証実験に協力をいただいていることから、協力をお願いしたところ、快諾していただけたということです。当日は、連合会の皆さんにより、災害ごみに見立てた粗大ごみが、20台ほど搬入されました。

 今後の住民への周知について、阿波市は、この訓練用に「分けたら早い!ワケハヤ術」のチラシを作成しているので、今後、市の広報誌、ホームページなどで訓練の記事とともに住民に周知していきたいと考えているとのことでした。

 以上、この訓練は、住民が参加した訓練でしたが、仮置場とはどういうものか、災害時には渋滞が起きること、そして、分別することの重要性などを理解していただけたように思います。このような訓練が広まれば、災害対応に係る住民への周知啓発が進むと考えられます。

4.総合討論「いかに住民の理解を得て災害廃棄物処理を進めるか」

座長: 年間テーマである「いかに住民の理解を得て災害廃棄物処理を進めるか」総合討論していきます。

(1)災害時の住民とのコミュニケーション

総社市: 平成30年7月豪雨の際に岡山県総社市は、被災地に現地出張所をおき、対応に長けた職員が入って住民対応をしてくれていました。一次仮置場の受入れ方法が変わったときに周知してくれたり、公費解体の意向やごみ出しができない家を確認したりするなどして現場対応ができていました。住民に近い場所に職員がいたことで、市民に寄り添った対応ができました。現在、地域への情報発信の方法として市のLINEがあり、ダムの放流や河川の状況について情報を発信していることで、住民が安心したり気を引き締めることもできていて、万一のときには現地出張所の設置と情報発信の掛け算で取り組むことで、必要な情報が住民にも伝わると思います。
東松島市: 熊本地震のときに西原村へ支援に入った際、災害対策本部が設置されていなかったため設置するように助言しました。住民は不安になっていて対話が必要ですが、説明する機会がもてないため、広報班を作って広報誌を作ってもらい、まず避難所に貼るように伝えました。広報誌には生活支援事業とともに、仮置場についても記載してもらいました。ただし、避難所は色々な掲示物が貼り出されていることを念頭に置いておくことが必要で、それを踏まえた分別パンフレットを考えること、また、平時の啓発が大切です。
和歌山県: 避難所で広報するのが良いと思っていましたが、避難所には色々なチラシが貼られることに気づかないといけない。効果的な広報について見直す必要があると思いました。

(2)ファストレーンにおける『単品』とは

コメント: とにかく何でも片っ端からトラックに積み込むことと、単品持ち込みとの中間に、同じ品目のものはまとめるなど数品目を整理してトラックに積み込むことがあると思う。単品持ち込みが住民にとって大変な場合、整理して持ってくることでも良しとできるのか、それによって住民の協力の度合いが異なるため、ポイントになると思いました。
コメント: 訓練では単品であり、分けたものを複数の品目を積んでいる場合は混載という判断でした。
人吉市: 人吉市のファストレーンでも、分けてトラックに載せていても複数品目があれば混載とみなしていました。
和歌山県: 和歌山県かつらぎ町の仮置場訓練では、住民に単品での搬入を依頼することは容易でなく、複数のごみをトラックに積むことになります。そのためトラックに積むときは、仮置場で降ろす順を考えて載せることでスムーズに搬入できることを周知できるのではないかと思います。

(3)住民目線の取組のたいせつさ

コメント: 行政が災害廃棄物に関する住民対応マニュアルを作成していますが、『補助金のことを考えて住民に分別してもらう』というのは行政目線であり、住民目線になっていないことが見受けられます。住民が災害時にごみを出すとき、どのような手順でどう片付けるかを考えないと、『分別してください』ばかリ押し付けても住民の理解は得られません。水害や地震のそれぞれでこう片付けたら早く済むといった住民目線の『片付け方の手引き』などを作成し、住民がその通りにしていくと分別ができているといった発想が必要です。
和歌山県: マニュアルが行政目線になっているという指摘はその通りで、行政職員が理解しやすい書き方になっています。その点で、和歌山県が開発した災害ごみのゲームは住民目線で作っているため、広めていきたいと思います。住民が災害ごみを知ることで『お得感』が伴うことがポイントで、単品でトラックに載せる場合は、近所のごみも積むことができ、隣の人がお得と感じてくれることを知ると理解が得られやすくなると思いました。
人吉市: 災害時に分別を強要されたという住民がいるため、住民目線については気になっています。『分別してほしい』とお願いするだけでは伝わらなかったと思います。片付け作業の中でどこまで何ができるものか、片付け方まで配慮できていればよかったと思います。
南伊勢町: 環境省の災害廃棄物のマニュアルには、仮置場の受付で住民に受付票を書いてもらう、写真が必要など多くのことが記載されていますが、住民目線という点から考えて最低限すべきことは何かがわかりません。また、国の指針では災害廃棄物を13品目示されていますが、人吉市は6品目としていました。初動期は6品目程度であれば住民にもわかりやすく、また、家電だけまとめて搬入すれば早く降ろせるなど、周知しやすくなると思いますが、6品目と周知していいかどうか悩ましい。
倉敷市: 住民目線について行政は考えていないわけでなく、悩んだ挙句にギャップが生じているのだと思います。被災経験をもとに災害廃棄物の広報を見直しているところですが、被災者と話していて、行政が何をしているか住民に知られていないことが原因で、行政の考えに理解が得られにくくなっていることがわかります。住民と話して理解していただくと、「被災者も行動を変えないといけない」という声をいただきました。このような理解に結びつけられる広報が必要であると感じています。

(4)住民管理集積所のむずかしさ

コメント: 令和4年9月豪雨による被害を受けた静岡市では、災害廃棄物処理計画どおりに住民管理集積所を作りましたが問題が発生しました。問題は2点あり、住民管理集積所に他地域から運び込まれる可能性があることを自治会も行政も認識していなかった甘さがあります。住民はきちんと持ってきてもらえるだろうという前提にたっていましたが、現実には違っていたこと、二つ目に集積所からどうやって搬出するかという戦略が考えられていなかったことが挙げられます。どこに搬出するかの戦略がないままで住民管理集積所がうまくいくわけがありません。都市部の災害廃棄物処理計画では、住民管理集積所を設置する例が増えていますが、これらの視点がないと酷い状況になります。
人吉市: 人吉市では仮置場1か所で徹底しましたが、市内には勝手に災害廃棄物が置かれた場所が10数か所できました。自治会長が自分たちのために開いて管理しようとした場所が一晩で山のようになりました。それは産資協に別途委託して分別収集して仮置場へ運搬しましたが、対応できたのは発災して1か月後であり、それまで放置されてしまいました。人吉市としては認めた場所のみを収集するとしましたが、どうしても勝手に集積される場所は発生するため、その場合も速やかに片付けられるようにしたい。ごみが置いてあると、ここに出していいと思われてしまうため撤去が必要ですが、持っていってもらえるなら出してもいいと思われてしまうこともあるため、適宜片付けるようにしたい。
南伊勢町: 令和元年東日本台風で長野市では、被災した住民が目の前のものを早くなくしたい気持ちからなんでもトラックに詰め込み、また、ボランティアは何でも袋に詰め込むといった状況でした。災害時の分別について平時から周知しておくことが大切と思っています。

(5)災害廃棄物訓練による退蔵品の削減と災害廃棄物の減量化

コメント: 被災地では、退蔵品が災害廃棄物になっている例が多くみられます。阿波市での訓練のように、平時に退蔵品を出しておくことで、災害廃棄物の減量化につながっています。定期的に退蔵品を集めるイベントと災害ごみの分別の訓練をカップリングさせれば、住民には家が片付くメリットもあり両者にとっていいと思いました。
東松島市: 東日本大震災で被災したときは、テレビの買い替えなどでブラウン管テレビが多量に仮置場に入ってきました。そこで、ごみの広報誌に災害時の分別方法を掲載することとし、第一弾は退蔵品について掲載するようにしました。平時に退蔵品を出しておくことで災害時に減らせることを記事として載せました。
和歌山県: 退蔵品を減らすことについて、和歌山県かつらぎ町の仮置場訓練に参加した県議会議員が広報誌に『断捨離』を掲載してはどうかという意見をもらったところであり、広報しようと考えています。
人吉市: 人吉市は農家が多く、納屋に相当の退蔵ごみが置かれていました。都市部とは異なる事情があり、まだこの解決策は見い出せていない状況ですが検討したいと思います。
南伊勢町: 平時に退蔵ごみを集めて処理することができる補助金があるといいと思います。家の中の退蔵ごみを減らし、退蔵ごみの処理の段階で業者との連携を確認することができ、処理単価もわかってくると思いますので、平時の補助金を考えていただけるといい。
倉敷市: ファストレーンの発想は、災害廃棄物処理の解決の糸口と感じますが、倉敷市には150か所の仮置場候補地があるもののいずれも面積が狭いなど、多くの制約があるため実現が難しく思われます。倉敷市では、平時に住民がごみを持ち込む施設として環境センター4カ所(粗大ごみ)、焼却施設3か所、不燃物受入れ施設1か所がありますが、令和3年度の受け入れ件数は33万2千件であるとおり、場内の動線確保や警備員の配置、出口の確保、搬出ルートの確保など、いわゆる災害時に仮置場を設置する際に配慮すべき点を意識しながら受け入れ態勢の整備をしています。このような業務自体が、災害時の仮置場設置業務の縮小版になっているという意識をもつことで、現場管理に関する知識の蓄積につながっていると思います。

(6)業者との協力・連携について

人吉市: 人吉市の仮置場では厳しく管理したことで混合廃棄物は最低限に抑えることができましたが、発災して7月中は混合廃棄物を仮置場で受け付けなかったため、市内の被災地に混合廃棄物が残されました。支援自治体から、混合廃棄物は施設で受け入れられないと言われることが多かったです。8月から仮置場で受付けましたが処理先がなく、県外へ船で搬出することとなり経費がかかりました。住民目線、業者目線での配慮が足りなかったと振り返っているところです。
東松島市: 東松島市建設業協会とは災害廃棄物処理だけでなく道路啓開や物資搬入などの協定も結んでいます。協会幹事会社12社と話していて、通常の協定は協力関係を示しているだけですが、災害廃棄物に関する協定は1日間の作業種類別の費用を決めてあることで、各社が経済状況を確認せずに支援に入ることができると言われ、このような点も重要と思います。
コメント: 熊本地震の際に西原村へ東松島市が支援に入ったおかげで仮置場での分別ができていて、また、熊本県産資協が入って手配したことで模範的な仮置場になっていました。地域を担当する産資協幹事会社によって分別や処理の仕方が異なるため、災害廃棄物処理計画と異なる分別になることが多いです。業者と協定を締結し、うまくコミュニケーションをとって協定の内容でスムーズに動けるかという確認が必要になります。
コメント: 行政には仮置場を運用し、様々な判断が求められます。東松島市は、中核になる職員が分別の重要性や難しさを実感する研修を実施していますが、さらに地元業者に参加してもらって訓練をすることで初動対応が見えてきて、廃棄物の搬出・処理がしやすくなると感じています。
倉敷市: 民間業者が知識と経験を積み上げていく一方で、行政に対する期待や要求のレベルが高くなっているため、行政もレベルを高めていけるよう災害廃棄物処理経験に基づくノウハウの引継ぎや、業者との顔が見える関係づくりをしておくことが重要だと思います。
 倉敷市では、業者やボランティア団体と協働で図上訓練も実施しましたが、訓練のなかで、災害復旧ロードマップを作っているボランティア団体と一緒に、住民目線での啓発チラシの作成を進めるという話に発展しました。このように普段から、業者や住民と話し合いをしながら一緒にツールを作り、それを使って一緒に啓発するといったプロセスが、住民や業者との目線を合わせることに通じると感じています。

5.まとめ

座長: 災害廃棄物処理マネジメントにおいて市町村・都道府県・産資協の役割や機能が決まりつつある中で、住民というステイクホルダーの役割がまだぼんやりしていて、分別をしてもらうくらいだったと思います。ファストレーンは、共通する品目をまとめて持っていくという住民同士の自主的な組織のようなものを作ることが前提となっていると思います。私は初動期に人吉市へ入ったところ、思った以上に地域コミュニティがしっかりしていて、自主的に分別して搬入してきたり、町内会レベルでチームを組んで分別し、運搬する様子が見られました。災害時に住民に役割を担っていただくことができる手応えを感じました。ファストレーンは単なる仮置場運営だけでなく、住民にプレイヤー、ステイクホルダーとしての役割を期待する新しいステージに入ったと思われます。住民の役割は、市町村によって異なると思いますが、片づけの仕方や、住民の役割が見えてくれば住民から強力なサポートをいただけるのではないかという期待感を持ちました。
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