岡山県 環境文化部 循環型社会推進課 一般廃棄物班 主任 田村未知代
2023年2月
目次
1.はじめに
2.事業の内容
(1)目的
(2)事業期間
(3)検討準備会
(4)実地訓練(令和4年度事業)
(5)事後評価
(6)事例集作成
3.おわりに
1. はじめに
平成30年7月豪雨では、河川破堤等による浸水により、本県がこれまでに経験したことのない規模の災害をもたらしました。
本県では、この災害が発生する前から、災害廃棄物処理計画を策定し、図上訓練や研修など災害廃棄物分野の人材育成に取り組んでいました。しかし、前述の災害により、市町村による仮置場設置や片付けごみの排出方法の住民周知が遅れたことで、路上に大量の災害廃棄物が排出される事態が発生しました。この大量の災害廃棄物は、混廃化したため、その処理に多くの時間と費用を要することとなり、あらためて発災初動期における迅速かつ的確な仮置場設置等の重要性が認識されました。
いつ発生するか分からない次の災害に備えて、この災害での教訓を生かし、災害廃棄物対応経験を継承していくことが重要であると考え、本事業に取り組むこととしました。
2.事業の内容
(1)目的
発災初動期に市町村が迅速かつ円滑に仮置場を設置・運営できるよう、県、市町村及び協定締結団体である一般社団法人岡山県産業廃棄物協会(以下「協会」という。)が連携し、仮置場訓練をモデル的に実施しました。
モデル市町村での訓練成果は、事例集として取りまとめ、その他の市町村と共有することで県内全体の対応力強化を図りました。
災害廃棄物仮置場訓練イメージ図
(2)事業期間
令和2年度から3カ年で実施しました。
各年度1市町村をモデルとして実施し、本県の出先事務所である各県民局単位(3県民局)で1回ずつ実施することとしました。
(3)検討準備会
実地訓練をより効果的なものとするため、県、モデル市町村及び協会(以下「関係者」という。)で検討準備会を2~3回開催しました。
検討準備会では、主に次の内容について関係者で情報共有や意見調整等を行いました。
項目 | 内容 | ねらい |
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(1) 災害廃棄物に関する情報提供 |
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(2) モデル仮置場での仮置場設置計画(案)の策定 |
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(3) 仮置場設置訓練実地計画の策定 |
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検討準備会の様子
(4)実地訓練(令和4年度事業)
(1)開催場所:赤磐市山陽浄化センター
(2)開催日時:10月27月(木曜日) 10:30~15:00
(3)参 加 者:岡山県、赤磐市、協会、有識者(65名)
(4) 見 学 者:環境省中国四国地方環境事務所、岡山県、県内市町村等、協会、地元町内会長等(111名)
(5) 有 識 者:国立研究開発法人国立環境研究所 宗 清生 客員研究員
(6)プログラム:
時間 | 項目 | 内容 |
---|---|---|
10:30~10:45 (15分) |
開会 |
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10:45~11:50 (65分) |
訓練(1) | ○仮置場設置訓練
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13:00~13:45 (45分) |
訓練(2) | ○仮置場管理運営(受付・荷下ろし)訓練
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13:45~14:40 (55分) |
訓練(3) | ○仮置場管理運営(保管物の管理)訓練
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14:40~15:00 (20分) |
閉会 |
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~訓練の様子~
<敷鉄板敷設訓練>
開設に必要となる資機材について、所用時間や手配
方法などの解説を加えながら敷設訓練を行いました。
<ヒアブ車での回収訓練>
勝手仮置場など被災現場から災害廃棄物を
効率的に回収できる車両について紹介しました。
<破砕処理訓練>
処理施設の受入条件に適合させるために仮置場で
必要となる可能性のある破砕処理訓練を行いました。
<受付訓練>
受付訓練者(市・協会)にはシナリオ非開示で
訓練を行いました。便乗ごみなどへの対応や分別
の重要性について理解が深まるものとしました。
<大型車両での搬出訓練>
広さに余裕のない仮置場では搬出が重要となるため、大型車両の
使用を考慮したレイアウトづくりの必要性などを確認しました。
(5)事後評価
訓練での反省点を仮置場設置計画(案)や今後の訓練等に生かすため、関係者で事後評価を行いました。
(6)事例集作成
県内の市町村が災害発生前に検討すべき事項や協定締結団体との情報共有方法等について理解が進むように、仮置場設置訓練結果や仮置場の設置・管理運営に留意すべき事項等を取りまとめた仮置場設置訓練事例集を作成し、モデル市町村以外の市町村に配布しました。
3.おわりに
実地訓練終了後にアンケートを実施しましたが、多くの方から、実際に目で見ることでイメージが沸き、理解が進んだなどと好評なご意見をいただきました。
また、本事業では、モデル市町村と協会は幾度も顔を合わせて意見交換をしており、関係者間の「顔の見える関係づくり」が進んだと考えています。さらに、協会からは災害廃棄物処理の経験者から未経験者への対応内容等の継承ができ、協会での対応力強化にも繋がっているとの意見もいただいており、各団体での経験の継承にも役だったと考えています。
今後も、災害で得た知識や教訓等が継承され、関係者間での連携体制がより強靱なものとなるような取組を進めていきたいと考えています。