災害時の対応を知るマネジメントPost-disaster actions 災害時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

寄稿:国による情報集約支援チーム ISUT について ~災害時における情報支援~

内閣府 政策統括官(防災担当)付
参事官(防災デジタル・物資支援担当)付
遊佐 暁

リレー寄稿遊佐氏_サムネイル

2023年1月

 

 災害発生直後、被災都道府県庁の災害対策本部には、災害廃棄物関連情報をはじめ、被災状況や行方不明者情報、避難者情報など、あらゆる情報が様々な形式で存在しています。災害対応業務を行う組織は、それらの情報を一つ一つ整理し、状況判断と対策を検討した上で行動を起こす必要があります。しかし、発災直後の災害対策本部には、行政職員をはじめ、災害対応のために各省庁や関係機関の人員が一挙に集結し、情報の共有や収集が非常に困難な状況に直面します。多量の情報を有効に活用し、各自が状況を把握して行動を起こすには、情報収集・集約・判断・行動の過程を踏まねばなりません。ですが、その工程を各機関が独自に行う事は非常に効率が悪く、相互の情報共有にも困難が発生してしまいます。

 上記の課題を解決し災害対応機関間の災害情報取得と共有を支援するために、内閣府では、平成30年より文部科学省防災科学技術研究所と共同でISUT(アイサット:Information Support Team)というチームを運用しております。ISUTは、災害が発生した際※1に被災都道府県現地対策本部に派遣されるチームです。
 GIS(電子地図)を用い、国・⾃治体・⺠間の関係機関から災害情報を収集/集約を行い、ISUT-SITEというWebサイトにて災害対応機関に共有します(図1)。ISUT-SITEで閲覧可能な情報は、気象や地震等の状況、インフラ・ライフラインの被災状況、避難所・物資拠点の開設状況、災害廃棄物関連情報等多岐にわたります。ISUT-SITEは省庁・⾃治体・指定公共機関のみが閲覧可能なWebサイトとなっており、災害に関連する各種情報について、インターネットを介して閲覧することができます。ISUTは、現地での電子データや紙面等での情報入手のほか、基盤的防災情報流通ネットワーク:SIP4D※2を経由した情報入手も並行して実施しており、各種災害情報を迅速かつ効率的に閲覧することができる体制を確保しています(図2)。

※1:内閣府調査チームの一員として、大規模災害が発生した際に現地に派遣がなされる。平成30年の発足以来、12の災害において現地派遣がなされた。
※2:基盤的防災情報流通ネットワーク:エスアイピーフォーディー。災害対応に必要とされる情報を多様な情報源から収集し、利用しやすい形式に変換して配信する機能を備えた防災情報の組織横断型相互流通を担う基盤的ネットワークシステム。官民の災害関連機関のシステムやデータベースをつなぎ、情報を共有化する「情報パイプライン」のような役割を果たしている。「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として研究開発が進められ、平成31年3月の開発期間終了にともない国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)が運用を開始。

 

リレー寄稿遊佐氏_図1

図1

リレー寄稿遊佐氏_図2

図2

 

 災害廃棄物に関連する対応では、これまでに環境省の皆様との情報連携を多数実施しております。最新の事例では、令和元年東日本台風において、災害廃棄物路上集積所対応の際に、集積所の位置情報や状況等を地図にとりまとめ、環境省・自治体・防衛省・民間ボランティアの各機関の情報連携用地図を作成しました。また、令和4年福島県沖地震の対応では、災害廃棄物仮置場の開設状況や現況写真の掲載を実施しました。さらに、令和4年台風15号の対応では、災害廃棄物仮置場関連情報だけでなく、被災地の路上に集積された廃棄物の情報についても、システムの試験連携によって迅速に情報をいただき、ISUT-SITEへの掲載を実施しました。
 これらの地図作成により、環境省の皆様が保有していた情報を災害対応関係機関に広く共有することが可能となり、さらにはISUT-SITEに掲載されている、環境省以外の機関が発信した情報と廃棄物関連情報を重畳した地図を作成することが可能となりました。
 このように、ISUT-SITEの有用性は、あらゆる機関のあらゆる情報を重畳することで、災害に関するあらゆる状況把握が可能となることにあります。例えば、災害廃棄物関連情報に、推定浸水域や道路規制情報を重畳することで、さらなる廃棄物発生の予想や撤去の行動計画策定等、様々な観点で情報を使用することができます。

 ISUTは、運用開始以降あらゆる災害において活動を実施してきました。現在では発足当初と比較し、ISUT-SITEに掲載される情報の種類および量が大幅に増加しただけでなく、機能の拡張やインターフェースの改善等、日々進化を遂げています。また、災害対応の現場においても、以前はホワイトボードや紙地図のみが情報共有の手段であったものが、現在ではISUT-SITEを通じた情報共有が活発に行われるようになっています(図3)。情報の種類や粒度についても、省庁の皆様だけでなく、被災自治体や被災地周辺自治体の皆様にも広く活用していただける内容となっておりますので、多くの皆様に広くご活用いただきたいと考えております。

 

リレー寄稿遊佐氏_図3

図3

 

 ISUTは、発足以降様々な災害で情報支援を実施してきました。現在では、政府の防災対策に関する基本的な計画である「防災基本計画」にも、災害対応における情報支援チームとして記載がなされています。ISUTは、今後も災害対応における効率的かつ迅速な情報共有を担うチームとして活動を継続すると共に、より一層災害対応に資する情報を提供することができるチームとなるよう、災害対応関係機関の皆様と連携を深めさらなる議論を実施してまいります。

 

【参考リンク:内閣府防災 -ISUT紹介ページ-

 
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