災害時の対応を知るマネジメントPost-disaster actions 災害時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

寄稿:「災害廃棄物処理支援員(人材バンク)の活動と成果」~スーパーマンではなくても、できる支援~

館山市 建設環境部環境課 一般廃棄物係長 半澤 大

館山市_20220831熱海市派遣_6現地確認(仮置場)_環境省撮影(扉用)

2022年10月

 

目次

  1. はじめに
  2. 人材バンク登録のきっかけ(自己紹介)
  3. 支援の動機
  4. 熱海市への支援内容
  5. 支援のポイント
  6. 受援先の反応と効果
  7. 支援した当市が得たメリット
  8. 人材バンク制度の有効性
  9. おわりに

1. はじめに

 館山市は、令和元年房総半島台風、東日本台風で市内全域が被災し、全国の自治体職員の支援を得ながら、多量の災害廃棄物を処理した。その経験から、令和2年度に環境省が制度を立ち上げた災害廃棄物処理支援員制度(人材バンク)に職員5名を登録し、令和3年8月31日、同制度初の事例として、令和3年7月豪雨で被災した静岡県熱海市からの要請に基づき、職員2名を派遣した。
 「人材バンク制度の活用で、全国の自治体が少しずつでも力を合わせ、被災自治体の一日も早い復旧復興を実現する」そのような制度の一助となることを期待しつつ、当市が行った支援について、紹介する。

2.人材バンク登録のきっかけ(自己紹介)

 令和元年の被災時に当市は、同じ関東ブロックの茨城県常総市、新潟県糸魚川市からの職員派遣をはじめ、岡山県倉敷市、広島県坂町等にも電話やメール等で事務を支援していただくことで、処理を前に進めることができた。
 また、当市は平成29年に、小規模ではあるが仮置場の運営や災害報告書の作成、災害査定を経験したことが、大規模な令和元年の被災においても、業務のアウトラインを想定する上で大いに役立った。
 これらで「災害時において、当市や他市の既存のノウハウが、廃棄物処理を前進させる」ことを痛感したことから、人材バンク制度の趣旨に賛同し、適性のある職員全5名を登録するに至った。

<当市の経験>
〇平成29年台風第21号における、市内一部地域での高潮被害
 (処理量:約83t、事業費:約257万円)
   →仮置場の設置、市外での委託処理、災害報告書作成
〇令和元年房総半島台風、東日本台風における、市内全域での猛烈な風雨による被害
 (処理量:約17,446t、事業費:約19億2,296万円)
   →仮置場の設置、個別回収の実施、市外県外での委託処理、公費解体、災害報告書作成

3.支援の動機

 発災直後、熱海市からの要請に先立ち、環境省から支援の打診があった際は、「自分に務まるのか」と逡巡した。熱海市と当市の被災状況があまりに異なるのも懸念材料であった。しかしながら、「背伸びせず、出来る支援を確実に行い、ほんの少しでも熱海市の力になれれば本望」との思いで、支援することとした。

4.熱海市への支援内容

 熱海市の被災は令和3年7月3日。環境省からの支援打診が7月7日。熱海市からの派遣要請が8月26日。派遣が8月31日。その間、7月9日から、熱海市の被災状況に伴い、メールによる財源確保や広報書類、契約書類などの事務支援に終始した。
 メールによる支援では、信頼関係を構築するコミュニケーション、ニーズに合致する資料提供に特段の配慮をしたが、どうしても、相手の顔が見えない中で、手探りの支援状況が2カ月続いた。
 現地へ派遣され、熱海市の職員と対面し、被災現場を目の当たりにすることで、支援すべき内容は明確化した。

支援内容1 発災~派遣前 「被災市の事務負担を軽くしたい」「円滑処理の力になりたい」
   7月3日:発災
   7月7日:環境省から派遣に向けた「意向確認」
   7月9日:被災市(熱海市)職員と連絡開始(被災市が日中多忙のため、原則、メール)
  発災~2週:事業費確保、初動期の庁内外周知、公費解体スキーム、庁内応援体制等の資料提供
       (当市は長野市、常総市、倉敷市、糸魚川市などから頂いた資料に大いに助けられた)
    ~4週:仮置場、解体の契約関係資料等の提供
    ~6週:仮置場、解体の運用関係資料等の提供
    ~8週:派遣調整(8月26日:派遣要請)

 

館山市_20220831熱海市派遣_2事務支援用資料ストック_館山市撮影

館山市が実施した災害廃棄物処理事業の保管資料
(このノウハウの共有で被災市の事務処理を短縮化できる)
 【写真提供:館山市】

支援内容2 派遣時 「廃棄物の発生状況を現地で確認したい」「職員の考えを対面で深く知りたい」
  派遣:令和3年8月31日
   午前:現場確認(処理方針への助言)
   午後:意見交換(事務体制への助言)
    ⇒ 現場を見て、課題を聴き、経験を伝え、資料を提供し、処理を後押しする
            
  対応者:環境省、静岡県、熱海市(受援)、館山市(支援)
   環境省2名:災害廃棄物対策室 主査、関東地方環境事務所 巨大災害廃棄物対策専門官
   静岡県1名:廃棄物リサイクル課資源循環班 専門主査
   熱海市4名:環境センター 所長、主幹、技師、主任
   館山市2名:災害廃棄物処理支援員(房総半島台風対応経験者 課長1名、係長1名)

午前:現地確認

館山市_20220831熱海市派遣_1&3現地確認(被災現場)_館山市撮影

被災現場(撮影:館山市)
 【写真提供:館山市】

館山市_20220831熱海市派遣_4現地確認(がれき発生状況)_撮影

がれき発生状況(撮影:環境省)
 【写真提供:館山市】

館山市_20220831熱海市派遣_5現地確認(解体対象家屋)_館山市撮影

解体対象家屋(撮影:館山市)
 【写真提供:館山市】

館山市_20220831熱海市派遣_6現地確認(仮置場)_環境省撮影

仮置場(撮影:環境省)
 【写真提供:館山市】

午後:意見交換(助言)

館山市_20220831熱海市派遣_7意見交換の様子_環境省撮影

(撮影:環境省)
 【写真提供:館山市】

意見交換の主な内容

 (1) 被災家屋の解体撤去、費用償還に関する制度設計、運用の留意点
   ●被災市の状況:対象者への意向調査、実施要綱や対応マニュアルの作成は未実施
 (2) 補助金申請事務(災害報告書作成、災害査定対策)の困難さ
   ●被災市の状況:査定資料となる災害報告書の作成に未着手
 (3) 災害廃棄物対策チーム編成(館山市:統括、廃棄物、法務、財務、建築)の必要性
   ●被災市の状況:環境センター職員が増員無く、通常業務と並行して災害廃棄物処理に従事

5.支援のポイント

 支援にあたっては、的外れな助言をせず、少しでも処理の前進に貢献できるよう心掛けた。そのため、「当市が知ることは、出し惜しみせず伝える」「当市が知らないことは、仲介などに止める」ことを徹底した。常に、自分自身が受援先の災害廃棄物処理チームの仲間だという意識を持って支援に臨んだ。
 全力で支援する。誤った情報は与えない。不安に寄り添う。仲間として当然のことをする思いでいた。

支援時の留意点
(1)ニーズの汲み取り(的外れな助言をしないように)
・現場を知る環境省との情報共有の徹底
・相手からの連絡には、時間に関係なく対応
・相手の求めに応じただけでは不足と感じた場合に「この点には困っていないか」と先回りし尋ねたり「当市ではこんな事があった」と付け足して回答(特に派遣前は相手の顔が見えず手探りであった)

(2)助言での工夫(被災市のチームの一員になれるように)
・信頼関係の構築を常に意識
・相手の求めには100%応じる
・経験、資料は出し惜しみしない
・相手と自分の被災状況の違いに配慮
・ノウハウの伝授のほか、相手のモチベーションの維持も意識

6.受援先の反応と効果

 熱海市は被災直後、受援のイメージが湧かない様子だった。当市の被災時もそうであったが、初動期の被災自治体は支援が不可欠であるにも拘わらず、突然大量に発生した災害廃棄物への対応に加え、通常業務、被災者対応、業者対応等に忙殺され、支援を受入れるマネジメントにリソースを割くことが不可能な状況に陥る。
 しかしながら、熱海市の担当者は、当市からの長文メールや多量の添付ファイルも洩れなく確認し、情報への貪欲さ、処理前進への強い責任感が伝わってきた。
 当市としても、熱海市の災害廃棄物処理を少しでも前進させるために、全力で支援したつもりではある。しかしながら、それが、本当に熱海市の邪魔とならず、受け入れられ、役に立ち、僅かでも効果を得たのか。これは、受援先である熱海市の声なくして、評価ができない。
 今後の人材バンクの支援事例が増えるとともに、支援側だけではなく、受援先の振り返り、評価が蓄積されることに期待する。

7.支援した当市が得たメリット

 支援側の当市としても、被災市に提供する資料の確認をしながら、今後の備えへの点検ができ、また、当市と異なる被災状況に関わることで新たなノウハウが積め、得るものが多かった。

異なる被災状況 被災種類 被災範囲 片付けごみ 仮置場 土砂交じりがれき 廃車両 思い出の品 遺跡等文化財
R3熱海市 土砂災害(家屋流出) 局所的 少ない(搬出困難) 予約制 多量 あり あり あり
R1館山市 風雨災害(雨漏り等) 市内全域 多い(発災直後に搬出) 予約不可 なし なし なし なし

 

8.人材バンク制度の有効性

1.人材バンク制度の魅力

〇この制度は被災自治体の「災害廃棄物処理チーム」を拡張する(=仲間が増える)もの
〇小規模な地方自治体でのスタンドアローン的な対応から、全国規模でのクラウド的な対応を可能に
 ⇒多くの被災自治体のリソース不足を解消する、高いポテンシャルを持つ制度

2.今回感じた課題

<受援側>
〇支援の大半は現地ではなく、正式な派遣要請前の非公式な事前のメールによる事務支援
〇現地に行くことにより、はじめて状況を的確に把握し、被災市との円滑なコミュニケーションが実現する
〇早期の現地入りが望ましいが、派遣の決定には被災市による派遣依頼の発出が必要
 ⇒発災直後の被災市には派遣受け入れをマネジメントする人的余裕が無いという課題に直面
<支援側>
〇支援市からの派遣には(派遣を伴わない事務支援も含め)、支援市庁内での合意形成が不可欠
〇人材バンクの制度上、支援義務はないため、支援市庁内の事情で支援できない場合も生じる
〇ある支援員1名が持つ、そのノウハウ、資質だけでは支援しきれない場合が殆ど
 ⇒被災市の状況に適した特性を持つ支援員を、適した人数、安定的に確保できる制度であってほしい

9.おわりに

 人材バンク制度は、受援側の状況や支援側の状況によっては、理想的な支援が困難となる。制度を効果的に機能させるためには、多くの登録者による支援員の多様性の確保や、制度のしなやかな運用が必要だと考える。様々な経歴を持つ様々な支援員の登録が「人材バンクチーム」の力を高め、被災地への効果的な支援を可能にし、全国の被災地の復旧復興を早め、自らの自治体が被災した際には、住民の大きな助けになる。
 私自身の受援、支援双方の経験から、決して、スーパーマンと呼ばれるような万能の支援員ではなくても、複数の支援員が持っているノウハウ等を少しずつでも出し合うことで、スーパーマンのような支援を実現することが可能だと実感している。
 全国の自治体職員が、災害廃棄物処理チームの仲間になる。人材バンク制度が、今後そのように活用されることを期待する。

 

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