関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】高井敦史(たかいあつし)

高井敦史(たかいあつし)

京都大学大学院 地球環境学堂 准教授(兵庫県出身)
(2022/9/30掲載)

リレー寄稿_高井敦史4

災害廃棄物に関わったきっかけ

 東日本大震災対応で設置された地盤工学会の地盤環境研究委員会の委員として、特に津波堆積物や災害廃棄物を地盤材料として再資源化するための取り組みを発災直後から担ったことがきっかけで、関連する調査・研究を行うようになりました。それまで災害廃棄物に関する研究を行っていませんでしたが、震災の発生が大学赴任直後であったため、自分自身の中で使命感を感じたことを覚えています。

もっとも強く印象に残ったこと

 上述の研究委員会の活動の一環で実施し、全体幹事として担当した、福島県沿岸部での計158地点に及ぶ津波堆積物の現地調査とその後の一斉分析は、一大行事でした。その後、調査対象地が農地として再生され、従前のように復旧を果たしたことは感慨深く思う一方で、生活基盤も含めた真の復興に向けた課題を肌で感じる機会にもなり、印象深く記憶に残っています。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 専門分野である土木工学・地盤環境工学の観点から、災害廃棄物に含まれる土砂分の再生利用に向けた研究を継続して行っています。東日本大震災で発生した災害廃棄物では、質量ベースで約3分の1を土砂が占めていました。このような災害廃棄物由来の土砂分は、被災地の社会基盤整備に再生利用されることが望ましいですが、処理後の土砂分には微細な廃棄物片の混入が不可避です。混合廃棄物を効率的に精度良く分別する方法や、微細な廃棄物片を含む土砂分の材料特性に関する研究を行うとともに、将来的な大災害に向けた平時の取り組み強化を、産官学で連携して行っています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 発災後に災害廃棄物を円滑に処理・処分するためには、手戻りの少ない処理計画を事前検討しておくことが不可欠です。そのためには、自治体と各処理・処分事業者が受入許容量や受入品質について平時から十分に議論し、定期的に新たな科学的知見や状況を踏まえアップデートしつつ、全ステークホルダーが実行性の高い処理方法を共通認識しておくことが重要と考えています。

 

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