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災害廃棄物処理における新型コロナウイルス感染症対策について

災害廃棄物情報プラットフォーム編集部

災害廃棄物処理における新型コロナウイルス感染症対策について

2022年8月

目次

はじめに

1.災害時の廃棄物処理に関わる新型コロナ感染症対策のガイドライン等
(1)環境省
(2)総務省
(3)全社協 全国ボランティア・市民活動振興センター

2.令和2年7月豪雨の仮置場における感染症対策(アンケート調査結果)
(1)災害廃棄物の仮置場設置自治体へのアンケート調査の概要
(2)アンケート調査結果(抜粋)

3.応援団体の対応

おわりに

 

はじめに


 令和2年4月、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い緊急事態宣言が発出され、全国的にマスクの着用や消毒の励行、移動の制限が行われました。このような状況のもと、令和2年7月(九州南部)、令和3年8月(長崎県、佐賀県、福岡県、広島県)に大雨が発生し、コロナ禍での災害廃棄物処理対応を余儀なくされています。
 本レポートでは、コロナ禍での災害時の廃棄物処理に資するため、以下に示す新型コロナウイルス感染症対策について、環境省九州地方環境事務所による調査結果を参考に、整理しました。
 ○災害時の廃棄物処理に関わる新型コロナ感染症対策のガイドライン等
 ○令和2年7月豪雨の仮置場における感染症対策(アンケート調査結果)(調査機関:環境省九州地方環境事務所)
 ○応援団体の対策事例

1.災害時の廃棄物処理に関わる新型コロナ感染症対策のガイドライン等

(1)環境省

 新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、環境省では廃棄物処理における対策ガイドラインや業務継続計画ひな形等を発出しています。

廃棄物に関する新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン

新型インフルエンザ・新型コロナウイルス等の感染症の発生時における廃棄物処理事業継続計画作成例

新型コロナウイルスなどの感染症対策のための避難所でのごみの捨て方について

[1] 避難所の運営者向け


[2] 避難者向け

 

コロナ対策チラシ_避難所の運営者向け

[1]

コロナ対策チラシ_避難者向け

[2]

 

収集運搬作業における新型コロナウイルス対策


収集運搬作業における新型コロナウイルス対策

 

(2)総務省

総務省「被災市区町村応援職員確保システムに基づく応援職員の派遣における新型コロナウイルス感染症に係る留意事項について」(令和2年5月22日付総行派第20号)

総務省が運用する被災市区町村応援職員確保システム(災害マネジメント総括支援員の派遣及び対口支援方式による支援)における新型コロナ感染症対策として発出された通知では被災自治体に主に以下の対策が求められている。

(1)応援職員等の執務スペースの確保

新型コロナウイルス等感染症まん延時の発災も考慮し、十分な換気ができること、「三つの密」(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けることなどを考慮のうえ執務スペースの確保に努める。

(2)感染症対策の物資・資材の整備

感染症対策に必要な物資・資材について、平時の事前準備も含め、その確保に努めること。

(3)受援対象業務の遠隔地支援の検討

遠隔地において処理が可能な応援業務内容や、地元事業者等への業務委託等について検討し、業務の効率化・省力化を図り、遠隔地間での感染拡大の抑止に留意する。

(4)感染者発生状況等の情報提供

応援要請にあたって受援側自治体の感染者発生状況等の情報を応援側自治体等へ提供し、受援開始後も提供すること。

(5)応援職員に感染が疑われる場合の対応

被災地で応援職員に感染が疑われる場合は、受援自治体を管轄する保健所及び応援側自治体へ円滑に連絡すること。

 

(3)全社協 全国ボランティア・市民活動振興センター

活動にあたっての衛生配慮にかかわるガイドライン【第1版】

 

災害ボランティア活動にあたっての衛生配慮にかかわるガイドライン~【第 1 版】

 

2.令和2年7月豪雨の仮置場における感染症対策(アンケート調査結果)

(1)災害廃棄物の仮置場設置自治体へのアンケート調査の概要

 災害廃棄物の仮置場における新型コロナ感染症対策について、九州地方環境事務所が令和2年7月豪雨において災害廃棄物の仮置場を設置した自治体を対象としてアンケート調査を行っています。(回答数23自治体)。その中から抜粋して以下に紹介します。


出典:仮置場開設時の感染症対策の実施状況(アンケート調査結果)
第12回大規模災害廃棄物対策九州ブロック協議会(令和3年3月2日)資料4-6

 

【仮置場開設時の感染症対策アンケート調査項目(抜粋)】

問1:仮置場内での新型コロナ感染症対策として、現場での運営に係る職員に向けて、具体的な内容があればお教えください。

設問 対策内容(複数選択可)
1)職員の装備 1.マスクの着用
2.フェイスシールド・マウスシールドの着用
3.ゴーグルの着用
4.防護服(タイベック等)の着用
5.手袋の着用
6.その他
2)仮置場内に設置したもの 1.消毒液(アルコール等)
2.体温計
3.サーモグラフィ
4.飛沫防止用シートやアクリル板(受付対応時等)
5.その他
3)運営上のルール 1.人との離隔距離の設定
2.作業前の検温の義務付け
3.休憩ルールの設定(休憩時間をずらして密集を回避する、休憩中の会話を控えさせるなど)
4.作業時間中の定期的な手洗い・うがいの実施
5.装備品やいす等の定期的な消毒の実施
6.決まった職員同士を組ませる(シフトを固定し、接触者を増やさない)

 

問2:仮置場内での新型コロナ感染症対策として、仮置場への搬入者(市民、収集運搬業者、ボランティア等)に向けて、具体的に実施した内容があればお教えください。

設問 対策内容(複数選択可)
4)搬入時のルール 1.マスクの着用
2.車から降りない(積み下ろしは現場職員で対応)
3.入場者数の制限
4.入場者の検温
5.入場者の消毒の実施(消毒液の噴霧等)
6.接触者の特定を目的とした入場者の記録
7.その他

 

問3:仮置場の運営時に、関係者に新型コロナウイルス感染者(又は濃厚接触者)が発生した場合の対応等についてご回答ください。

 

(2)アンケート調査結果(抜粋)

1)職員の装備について

 仮置場の現場にいる職員に対して、マスク及び手袋の着用はほとんどの自治体で実施されていた。また、マスクの着用に際して、熱中症の注意喚起が行われていた。

職員の装備について

2)仮置場における備品について

 半数以上の自治体で消毒液が設置され、体温計を配置したところもあった。その他の対策として、乗車したまま受付、搬入者用マスクの配置などを行ったところもあった。

仮置場における備品について

 

3)仮置場運営上のルール

 下記の複数の事項を仮置場運営上のルールとして定めていた。

仮置場運営上のルール

 

4)搬入者に向けたルール

 仮置場への搬入者(市民、収集運搬業者、ボランティア等)に向けた対策として、マスク着用を求める対応は、対策を取ったすべての自治体で実施されていた。検温、消毒、入場者の記録等の実施は、少数の自治体にとどまっていた。

搬入者に向けたルール

 

5)仮置場の運営時に、関係者に新型コロナウイルス感染者(又は濃厚接触者)が発生した場合の対応(自由記述)

1.感染者に対する対応

・直ちに抗体検査、PCR 検査を実施し、2週間程度出勤を停止とする。
・感染の疑いのある者は、保健所に連絡して指示に従う。また仮置場の一時休止を行う。
・2週間程度の欠勤

2.仮置場を一時休止し、運営を再開するための方針

・全体に体調確認を実施し、必要に応じて検査キットを用いて検査する。
・保健所の指示に従い、施設設備等を入念に消毒を行う。

3.仮置場の休止期間中の災害廃棄物の対応

・仮置場運営休止は考えておらず、管理会社、委託業者へ人員を依頼し、最低人員数による受入を実施。
・安全が確認されるまでは作業を中止する。
・他の職員または委託で対応。

4.今後改善したい点

・入場者の制限・記録、仮置場休止時のバックアップ施設の準備などを行う必要があると考えている。
・仮に感染者が発生した場合、仮置場臨時閉場等で処理等が進まなくなる恐れがある。予備の仮置場設置などの設定も必要と思われる。
・コロナ禍における災害廃棄物処理を事前にマニュアル化するなど準備が必要であったと感じる。

3.応援団体の対応

 令和2年7月豪雨において環境省関東地方環境事務所や近畿地方環境事務所等から熊本県内被災自治体へ災害廃棄物処理の支援に入っています。その際、新型コロナウイルス感染症対策として以下の対策を講じていました。

【応援団体の対応】※環境省令和2年度第2回災害廃棄物対策推進検討会資料1-3より作成

1.行動のポイント

 当時熊本県内は一日数名程度の新規感染者数。周囲で感染者が出ても、「環境省は、ちゃんとやっていたよね」と地元の方々に言っていただけるような行動を心懸けた。

2.派遣時の追加持参物

 非接触型体温計、普段使い用マスク、携帯用消毒液を各自が持参した。

3.活動における具体的な対策

 応援業務を遂行するにあたり、以下の対策を講じた。
・接触通知アプリ COCOA (厚生労働省)をインストール
・会話等の際は、できるだけ2m(最低1m)の距離を取る
・車内の3密を避けるため定員の2倍以上の車両で、走行中はなるべく窓開けをする
・派遣期間中は、 携帯消毒液でこまめに手指を消毒する
・執務スペースの換気
・毎朝体温を測り、平熱であることを確認。風邪症状が出た際は症状消失から48時間は休業・休養をとる。
・熱中症対策への配慮:屋外で2m離れれば、マスク着用は不要等

おわりに


 令和2年7月豪雨では、災害廃棄物処理に係る初動対応に追われて、必ずしも新型コロナウイルス感染症対策に配慮しきれなかった自治体もありましたが、平時からの感染症対策を実施し、支援団体も対策を徹底したことで、災害廃棄物処理に関連した新型コロナ感染症拡大に至ることはありませんでした。
 しかし、災害ボランティアの受入れが制限されたことで片づけが進まず、被災者の負担増大につながったことは否めません。コロナ禍を経験したいま、行政として、様々な状況の対応を想定し、準備しておく必要がより増したように感じます。

まとめ:公益財団法人廃棄物・3R研究財団

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