関係者とつながるリレー寄稿 Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】保田静生(やすだしずお)

保田 静生(やすだしずお)

三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 プラント事業部 技師長(大阪府出身)
(2018/7/31掲載)

保田 静生(やすだしずお)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 1995年の阪神・淡路大震災の仮設焼却炉の運転調整が最初でした。それまで未経験の災害廃棄物には何が含まれ都市ごみと何が違い、それを踏まえてどのように工夫して炉の運転を安定させるかが課題でした。2011年の東日本大震災では、福島県内の除染廃棄物を主体とする仮設焼却炉の建設に携わり、全く未経験分野の放射能に関する知識の習得から始まりました。

もっとも強く印象に残ったこと

 東日本大震災では宮城県下の既存のごみ焼却施設の復旧と石巻ブロックの仮設焼却炉にも関与しましたが、何と言っても福島県の放射能汚染廃棄物を焼却した際の放射能の挙動の推定が最も苦慮したことでした。国環研大迫センター長のアドバイス、環境省福島環境再生事務所(当時)の指導の下、最初の大型仮設炉となる富岡町減容化処理業務では2014年3月から現場代理人を務めました。三菱重工の原子力部門の放射線管理の知見を得て共同で汚染廃棄物のセシウム挙動の推定と放射線管理のマニュアルを策定しました。もう1点は、被災者の心情に留意した施設建設のあり方です。環境省のご担当と密に情報共有しながら建設工事を進めました。富岡町の建設完了後は変動する廃棄物性状に合わせた安定運転と放射性物質濃度の変化による排ガス中の放射性物質濃度の管理、発生する焼却残さ(焼却灰とばいじん)の放射性物質濃度の把握と放射能バランスの確認のため、初動段階でのデータ収集・解析が主な任務でした。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 富岡町の運営が順調に推移するのと並行して、開閉所(川内村・田村市の境に設置)と大熊町の減容化処理業務でも、施設建設に携わり、富岡町で培った知見が活きました。富岡町では鹿島建設株式会社が所掌した仮設破砕選別施設から持ち込まれる津波堆積物・家屋解体廃棄物などと焼却炉の稼働との連携は重要な留意事項でした。今後想定される大規模地震ではこれらの知見が活かされ迅速に対処できるよう知見を整理して残していく必要があります。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 阪神・淡路大震災では市町村が発注された仮設焼却施設が主体でした。東日本大震災では環境省・県・政令指定都市から発注されました。省庁・県がそれぞれ情報の集約はなされているので個々の情報は回っていますが、全ての情報の存在が系統的に情報公開されることで今後に活かされると思います。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 災害廃棄物の仮設焼却施設の建設・運転に深く関与してきましたが、建設・運営する企業の立場としては、迅速に廃棄物を処理して住民の生活の復旧・復興に寄与することが任務になるわけですが、広域処理や法令の緩和が検討されることで、施設の建設の初動が早まり、ひいては住民の生活の早期復旧に貢献できると思います。

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