関係者とつながるリレー寄稿 Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】林信太郎(はやししんたろう)

林 信太郎(はやししんたろう)

前田建設工業株式会社 土木事業本部 営業第1部 第1グループ・リーダー(愛知県出身)
(2018/11/30掲載)

林 信太郎(はやししんたろう)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 平成23年の東日本大震災です。福島県の復興関連工事の本社担当となり、当時(平成24年5月)計画されていた今後の本格除染工事や福島県内の津波により発生した災害廃棄物の処理に向け、福島県の楢葉町を視察したのが始まりです。避難されている地元の方々のところにも参り、避難生活を余儀なくされている憤り、生活再建に向けた切実な思いとともに、地元に寄り添った一日も早い復興事業の推進を望まれていることを直接伺いました。

もっとも強く印象に残ったこと

 被災地を視察した当時の福島の浜通り地区は、放射能による環境汚染の影響もあり、手つかずの状況でした。農地は雑草が生い茂り見る影もなく、津波浸水域のがれきは残されたままであり、舗装が割れ、荒れた道路には取り残された牛が悠然と歩いておりました。立ち寄った老人ホームには、入口にたくさんの車イスが散乱した状態で、避難時のまま残置されておりました。私は、入社時にJヴィレッジに宿泊し、楢葉町の木戸ダムで新入社員研修を行ったのですが、当時の思い出の町の姿はなく、大きなショックを受けるともに、被害の甚大さと事態の深刻さを改めて痛感しました。この時、一日も早い復興のために、何かできればという思いを強く持ちました。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 現在、双葉町の被災家屋の解体・除染、中間貯蔵施設の除去土壌の輸送、受入・分別施設、土壌貯蔵施設及び減容化施設等の当社施工中の復興関連工事を技術面等も含めて横断的に支援しております。除染工事及びそれに伴い発生した除去土壌等の処理については、前例がなく、手探りの状況でしたが、発注者様、作業所、技術部門等の関係者と一丸となって、課題解決に向けて取り組んで参りました。今後は、中間貯蔵施設の事業がますます大規模化して参ります。さらには、除去土壌等の再生利用に向けての技術開発や意識醸成のための取り組みが進んでおります。引き続き、地域の方々に寄り添った安心・安全な事業推進に貢献して参りたいと思います。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 災害はいつ起こるかわかりません。よって、災害を想定した事前の備えが重要であると思います。
 一方、山間部や海岸部、あるいは都市部などの地域特性や災害の種類(水害、地震等)によって廃棄物の種類別の発生量は異なると考えられますが、現状はそこまでの分析は進んでいないと考えます。また、これまでの事例において、それぞれ事情により、処理が困難であったものやその際の対応事例が体系的に整理されるとより有効な情報となるのではと考えます。そのような分析や情報がまとまってくると、私たち建設会社が、災害に備えた事前の計画段階から運搬、仮置場、分別処理及び再利用について、より具体的な貢献ができるのではと考えます。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 福島の浜通り地区の復興関連工事では、国や自治体、大学、研究機関、民間(建設業や異業種)、さらには被災された地元の方々をはじめ、多くの方々からご指導・ご支援・ご協力をいただきました。このような有事の際には、あらゆるステークホルダーと有機的に連携し、取り組むことの大切さを学びました。
 過去の災害を風化させず、次の国土を守る世代に伝承していけるような人材育成とネットワークの形成が大切であると思います。私としては、まだまだ学ぶ側なので、これからも初心を忘れずに様々な課題に対して真摯に取り組んで参りたいと思います。

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