関係者とつながるリレー寄稿 Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】西村良平(にしむらりょうへい)

西村 良平(にしむらりょうへい)

株式会社鴻池組 執行役員 技術本部副本部長(兵庫県出身)
(2019/1/31掲載)

西村 良平(にしむらりょうへい

災害廃棄物に関わったきっかけ

 青森・岩手県境不法投棄事案を経て、岐阜市北部地区産業廃棄物不法投棄事案で埋立廃棄物の分別に携わっていた平成23年3月に東日本大震災が発生しました。不法投棄事案で培った分別技術を応用すれば、必ず災害廃棄物からも再資源化物を分別することができると考えました。その後、多賀城市、広島市、熊本市において災害廃棄物処理に携わってきました。

もっとも強く印象に残ったこと

 東日本大震災の多賀城市、平成26年8月豪雨の広島市では、既に一次仮置場に集積された災害廃棄物を二次仮置場に運搬・処理すれば良かったのですが、平成28年熊本地震による熊本市の災害廃棄物は家屋解体廃棄物が主体であり、未整備な仮置場の運営を始めると同時に、毎日数千台もの解体廃棄物の搬入車両が押し寄せました。この時感じた恐怖が強く印象に残っています。仮置場での中間処理を最小化するため、熊本市と熊本県解体工事業協会と協議し、コンクリートがらは再資源化施設に直接搬出すること、現場で約40品目に分別解体してもらうことを取り決め、さらに最も嵩高い木くずは未破砕や粗破砕でも受入可能な処理先と広域連携して処理することで事なきを得ました。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 現在、平成30年7月豪雨により被害を受けた広島県安芸郡坂町と東広島市の災害廃棄物処理に携わっています。また、環境省主催の災害廃棄物対策セミナーや関係学会の技術発表会などを通じて、これまでの災害廃棄物対策で得た知見や経験を積極的に発表しています。
 今後は石膏ボードのリサイクルに取り組みたいです。被災家屋の解体で発生する石膏ボードは石綿含有のおそれがあり、ほとんどが管理型埋立処分されています。これを仮置場で検査し、非石綿含有のものはリサイクルしたいと考えています。まずは非石綿含有物であることを識別できるセンサーの開発に着手しています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 処理後物の基準、特に粘土瓦やレンガなどの安定型埋立処分される不燃物をリサイクルするための基準、前述した石膏ボードをリサイクルするための判別基準などが整備されれば、最終処分場の負荷軽減やリサイクル率の向上に寄与すると考えます。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 東日本大震災以降、平成26年8月豪雨、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などを経て、災害廃棄物処理はマニュアル・制度化が進み、現場作業がやりやすくなってきています。また、木くずや可燃物の現地破砕が少なくなり、粉じんの発生や火災発生のおそれが低減されてきました。これらは、災害廃棄物処理に携わる関係者間の情報共有や行政間の相互支援などの賜物と感じています。今後は木くず、畳、ソファ、マットレス、可燃物などを未破砕で受入れ可能な処理先の確保や、仮置場内での中間処理作業を最小化する処理方法を含めた具体的なマニュアルづくりが必要と考えます。

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