平野 誠也(ひらのせいや)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策研究事業本部
研究開発第1部 地域環境防災グループ グループ長 主任研究員(大阪府出身)
(2019/12/26掲載)
災害廃棄物に関わったきっかけ
阪神・淡路大震災以降、自治体の防災対策業務に多く携わっていました。阪神・淡路大震災でも災害廃棄物の処理は問題にはなっていましたが、緊急輸送路や支援物資、避難所運営、ボランティアの活用などの方がより注目され、私も、地域防災計画や支援物資輸送対策、災害時の班別マニュアルの策定支援などが主な業務でした。そのような中で、東日本大震災が発生し、平成26年度に地方環境事務所の災害廃棄物対策関連業務を御支援させていただいたのが、本格的に災害廃棄物に関わった初仕事です。
もっとも強く印象に残ったこと
被災自治体職員の方々の苦労や努力と、被災されたことを他の自治体にも伝えたいという強い思いです。中には、大きな災害廃棄物処理に対して、うまくできなかったと感じられる職員の方もいらっしゃいますが、その経験を他の自治体に伝えたい、生かしてほしいという気持ちと、実際に被災自治体に支援に行かれたり、被災していない自治体職員にご講演なさったりする強い思いを、いつも感じます。
現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと
被災現地支援に行くことはないのですが、実災害で明らかになった問題点を検証し、それを自治体や地域ブロックの災害廃棄物対策に反映すること、それらを踏まえた訓練の実施支援などが現在の主な業務です。
災害廃棄物対策に限ったことではないのですが、災害対応は後世になかなか伝承することが難しいものです。実際に東日本大震災で大きな被害を受けた基礎自治体で、既に十分に経験が伝承できていないところが出てきています。このような経験や教訓の伝承を、私どものような業者の力を借りることなくできるようにしていくということが使命です。そのような仕組みを自治体の中で構築できるような御支援をしてきたいと考えています。
災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報
繰り返しですが、被災自治体や支援団体の災害廃棄物対策の経験を、共有・継承することが重要と思います。「記録誌」という形でまとめるものが基本ですが、それ以外に経験者から未経験者への継承を行い、さらには別に若い未経験者に継承していくことが大切です。そのためには、良い事例や取組に加えて、なかなか難しいかもしれませんが、未経験自治体職員が陥りやすい間違いや、やや失敗した事例などの情報もあった方が、伝わりやすいと思います。
その他、災害廃棄物対策に関する思いなど
わたし自身、神戸市在住で阪神・淡路大震災を経験しました。正直申し上げて、あの規模ほどの災害は、まあ起こらないであろうと思っていました。しかし、東日本大震災は、それを遙かに上回る災害でした。水害でも、平成30年7月豪雨では西日本に非常に大きな被害を及ぼしましたが、令和元年の台風15号、19号による水害は、これを上回る規模の災害廃棄物が発生しています。これが最大級の災害だとか、自分の地域では大きな災害は起こらない、などという思い込みは厳禁であるということを改めて感じています。
特に、災害廃棄物対策業務はほとんどの自治体職員の方が経験したことのない業務です。このような間違った思い込みで、平常時からの対策が不十分にならないようにしていけるよう、自治体を御支援していくことが私の役割です。これまでも、形だけではない防災対策となるよう多くの自治体を御支援させていただきましたが、災害廃棄物対策でも即時に有効な対応ができるよう実践的な対策を自治体の方々が取れるよう、また組織の中で災害廃棄物対策の経験を継承できるよう支援を続けていきたいと思います。