関係者とつながるリレー寄稿 Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】鈴木 昇(すずきのぼる)

鈴木 昇(すずきのぼる)

(一社)宮城県産業資源循環協会 仙台支部長(宮城県出身)
(2020/2/28掲載)

鈴木 昇(すずきのぼる)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 平成23年3月11日に発災した東日本大震災による災害廃棄物処理がきっかけでした。東日本大震災では、仙台市内でもがれき類が137万トン、津波堆積物が135万トン、計272万トンという膨大な量の災害廃棄物が発生しました。これらの処理にあたり、仙台市では処理方針の中で、地元業者による処理体制の構築を図ることを決定。3つの地元業界(建設業、解体業、産廃処理業)で請負、管理し、災害廃棄物搬入場(焼却炉を設置した仮置き場)の運営、廃棄物の細分別とリサイクルは(一社)宮城県産業資源循環協会仙台支部(旧団体名:宮城県産業廃棄物協会仙台支部)で担当。約2年半で処理を完了しました。その後、仙台市と3団体は災害廃棄物処理に関する協定を締結。上部団体である(一社)宮城県産業資源循環協会も宮城県と災害廃棄物処理に関する協定を締結しており、令和元年10月の台風19号被害による災害廃棄物処理においては、協定に基づいて丸森町をはじめとした被災自治体の災害復旧支援を行っております。

もっとも強く印象に残ったこと

 業務従事者の仕事に対する使命感と、各団体との連携です。業務従事者は地元の災害復旧に携われること、そして災害廃棄物は、産業廃棄物と同様な性状であるため、産業廃棄物処理の専門業者である私たちが、使命感と責任を持って処理しました。地元の処理体制を有効活用し、地域の被災者と環境へ配慮をしながら、適正に処理しました。地元の建設、解体、私たち産廃処理業界、プラントメーカー、そして自治体が緊密に連携して、迅速で適正、かつ安全に作業を実施しました。これは綿密な協議などにより実現できたものです。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 上部団体の(一社)宮城県産業資源循環協会は宮城県と平成20年に、そして当支部を含む仙台市と3団体は平成30年に、災害廃棄物処理に関する協定を締結。特に仙台市と4団体の協定は、他では珍しい異業種間との自治体を含めた協定となっております。今後は、大学との連携も視野に入れ、産学官の連携を通じた交流が必要と考えております。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 災害廃棄物処理では、搬出先に合わせた分別が重要となります。自治体ごとに、仮置き場の検討、搬出先リスト作成、分別レベル設定をして頂き、私たち災害廃棄物処理従事者と情報を共有してほしいと思います。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 東日本大震災での経験は、2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議において、仙台市と地元業界団体(3団体)が連携して災害廃棄物処理を行い、災害復旧業務の一翼を担った経緯を世界に向けて発表しました。その内容は次の通りです。
 災害廃棄物処理で、私たち民間団体が特に気を配った点は、災害廃棄物は元は被災した方々の財産だということを常に考えて処理しました。災害廃棄物の中からは、貴重品の他、遺影、アルバム、名前の入ったランドセルなど思い出の品々も発見されました。全作業員たちがいつも心にとめて、できる限り回収して、所有者にお返しすることができました。
 そして災害廃棄物処理では、迅速処理、スピード感が求められます。発災後はすぐ行動し、自治体からの要請にいつでも応えられる体制構築こそが、私たちに与えられた使命だと考えております。

スマートフォン用ページで見る