関係者とつながるリレー寄稿 Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】松野陽子(まつのようこ)

松野 陽子(まつのようこ)

益城町文化財保護委員(熊本県出身)
(2021/5/31掲載)

松野陽子(まつのようこ)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 熊本地震で震度7を2回経験した益城町に住んでいますが、膨大な量の災害廃棄物で埋め尽くされていく仮置き場を見てショックでした。
 文化財保護委員として、貴重な文化財が災害廃棄物として捨てられないように歴史愛好家の仲間たちと保護活動に取り組みました。これは災害廃棄物を少しでも減らし、環境を守ることにつながる取り組みといえると思います。

もっとも強く印象に残ったこと

 築100年以上の住宅がどんどん壊され、銘木の床柱や大木を使った柱や梁、格子戸や舞良戸まいらど、欄間など書き尽くせないほど多くの貴重なものが、重機でいとも簡単に潰されていく光景に心が痛みました。
 災害で公費解体は必要な制度ですが、歴史的建造物についてはその後の相談と検討期間を長くすることで、解体をしない選択肢が増えると考えます。これは災害廃棄物を減らすことにつながるのではないでしょうか。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 建築士会が取り組んでいる災害地の建物調査に参加し、所有者に長い伝統に育まれた歴史的建物の価値を伝えています。
 歴史的建造物を残すことで地域の貴重な文化財を守り、解体する建物を減らすことで災害廃棄物の減少を目指したいと考えます。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 新たな災害地の状況

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 災害発生後、最初に行われるのは運搬ルートである道路の復旧工事です。道路沿いには歴史の証人である地蔵や石碑などがありますが、倒壊や破損したものは瓦礫として処分されてしまいます。益城町では地震発生後の早い時期にテープを貼り「捨てないでください」と表示することで廃棄をまぬがれた石造物が多くあります。災害が発生すると、文化財レスキューや文化財ドクター制度で全国から支援を頂きますが、地元の事情に通じた人々の意識の高い取り組みが無ければ対応は後手後手になってしまいます。
 災害発生の早期から文化財や歴史的建造物などの保護活動に取り組める体制があれば、災害廃棄物は大幅に減少出来ると考えます。

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