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寄稿:北海道胆振東部地震の災害廃棄物処理~被災市町村に対する北海道の支援について~

北海道 後志総合振興局 保健環境部 環境生活課 西本潤平

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2021年3月

 

 平成30年9月6日に北海道胆振東部地震が発生し、震源地近傍の厚真町では北海道で初めて震度7の揺れを記録しました。北海道環境生活部環境局循環型社会推進課と、北海道胆振総合振興局・日高振興局の保健環境部環境生活課では、被災地に職員を派遣すると共に、国などと連携し被災自治体に対し災害廃棄物の処理に係る支援や助言を行いました。本稿では、震源地近傍の厚真町、安平町、むかわ町、日高町における災害廃棄物の発生状況と処理および北海道が行った支援内容について著者の視点から記されています。今後の取組として災害廃棄物処理計画の策定推進と共有等について述べられており、今回の災害から得られた知見を反映した対応が期待されます。

目次

  1. はじめに
  2. 発災後の道の支援対応
    1. 発災直後の状況と対応
    2. 発災直後の仮置き場の状況と災害廃棄物処理体制
    3. 広域処理の調整と災害廃棄物処理協定に基づく要請
    4. 災害廃棄物等処理事業報告書の作成
  3. 災害廃棄物処理の実績
  4. 今後の取組
  5. さいごに

1. はじめに

 平成30年9月6日に胆振地方中東部を震源とするマグニチュード6.7の北海道胆振東部地震が発生し、震源地近傍の厚真町では本道で初めて震度7の揺れを記録した。この地震によって震源地周辺では山体斜面の崩壊が多数発生したほか、震源から50km以上離れた札幌市でも造成地の大規模な液状化現象が見られた。最終的に全道で死者44名、負傷者785名、住居の全壊491棟、半壊1,816棟、一部損壊47,105棟という甚大な被害となった【表1】。

表1 平成30年北海道胆振東部地震による被害状況等(北海道総務部危機対策課まとめ、令和2年9月1日現在)

平成30年北海道胆振東部地震による被害状況等

 地震の大きさから災害廃棄物が大量に発生することが予想されたため、北海道環境生活部環境局循環型社会推進課及び震源地近傍を管轄する北海道胆振総合振興局・日高振興局の保健環境部環境生活課では、被災地に職員を派遣するとともに、国などと連携し被災自治体に対し災害廃棄物の処理に係る支援や助言を行った。特に被害が大きく自治体規模の小さい震源地近傍の4町(厚真町、安平町、むかわ町、日高町)に対しては、災害等廃棄物処理事業報告書作成のため道職員を常駐または巡回させる対応を災害査定までの間行った。

 当時、私は環境局環境政策課で北海道環境基本計画の担当であったが、循環型社会推進課への応援要員として発災後の現地調査に同行し、また発災2ヶ月後から災害等廃棄物処理事業報告書作成のため約4ヶ月間、安平町役場へ週3日程出張し書類作成作業の補助を行った。本稿では、そこで私が見聞きしたことを中心に、被害の大きかった震源地近傍の4町における災害廃棄物の発生状況と処理及び道が行った支援内容について記載させていただく。

サンプル画像1

写真1:地震による土砂崩れ(厚真町、2018/9/12撮影)

サンプル画像2

写真2:地震による液状化現象(札幌市、2018/9/20撮影)

2. 発災後の道の支援対応

1 発災直後の状況と対応

 北海道胆振東部地震は平成30年9月6日3時7分に発生した後、苫東厚真発電所が被災したことが起因となり3時25分に全道で停電(ブラックアウト)が発生した。道環境生活部環境局循環型社会推進課では、発災後順次職員が参集し全道14の各(総合)振興局の環境生活課を通じ被害情報の把握に努めたが、停電の影響により情報収集がスムーズに進まない面もあった。停電は発災日から徐々に復旧に向かったが、一部被災地域を除き全道的に解消されたのは2日後の9月8日8時であった。長期間の停電により冷蔵・冷凍庫が使用不能となったため、地震被害のない地域でも生ごみが大量に発生し1日の排出量が通常の4倍程度となった地域もあった。

 循環型社会推進課では発災5日後の9月11日から12日にかけて、4町の災害廃棄物発生状況を現地確認するため第一陣として職員を2名派遣することとなり、私もその一員として参加することとなった。現地入りする前日に仮置き場の設置状況を各町のホームページで確認したところ、既に4町とも設置場所を広報していた。最も被害の大きかった厚真町では土砂崩れや道路の損傷による通行止めが数多く発生していたことや、住民の利便性から、各集落のコミュニティ会館など20カ所以上に一次仮置き場が設けられ、二次集積所が2カ所別に設けられた。むかわ町では3カ所、日高町では10カ所の仮置き場が設けられたのに対し、安平町では当初から1カ所に限定されていた。

2 発災直後の仮置き場の状況と災害廃棄物処理体制

 現地へは発災翌日から現地入りしていた環境省の災害廃棄物対策専門官とともに回ることとなり、仮置き場の保管状況を現地確認し、運営体制や住民への広報の状況、今後の運搬や処理の見込みなどについて町の担当者から聞き取りを行った。

 被害の大きかった自治体では避難所の運営などに人員を割かれていたこともあり、災害廃棄物への対応は4町とも限られた人数で行っており、専任の職員を置けない町もあった。そのため、一部小規模な仮置き場では分別等を指示する管理者を置くことができず、また管理者がいても持ち込まれる廃棄物の量に対して仮置き場が狭く、当初は分別されていた廃棄物も量が増えるにつれ次第に品目毎の境界が曖昧となり、混合状態で集積されている状況がみられた。ある仮置き場では住民が自主的に分別の管理を行っていたが、持ち込み量の多さに対応できず、我々に対し行政が速やかに現場の管理を行うよう求められた場面もあった。また、自治体が設置したものではない住民自らが設置した仮置き場(いわゆる勝手置き場)も数カ所見受けられた。

 混合廃棄物が大量に発生するとその後の分別や廃棄物の運搬・処分に多大な労力と時間を要することから、小規模な仮置き場を閉鎖し、適正に管理できる数まで減らすこと、ボランティアや業務委託により管理者を置き分別を徹底すること、閉鎖した仮置き場の廃棄物を集積することを各町に助言した。管理者のいない小規模な仮置き場は搬入禁止の立て札を立て、その旨を町の広報や防災無線等で周知したが、閉鎖後も仮置き場に廃棄物を持ち込む住民が後を絶たなかった。そのため、胆振総合振興局の環境生活課職員が廃棄物をブルーシートで覆い、それ以上の持ち込みをさせない措置を行ったところ、その後は持ち込まれることがなくなった。

 仮置き場に持ち込まれた災害廃棄物の量は発災5日後の時点で既に膨大となっており、発災の翌々日には再開していた生活ごみの収集運搬を担う事業者が生活ごみの収集と掛け持ちをして運搬できる量ではなかった。また通常の運搬先である一部事務組合の処理施設も、被災や地震前の定期点検の影響で処理能力が落ちていたため、仮置き場からの搬出先も目処が立たない状況であった。長時間の停電により発生した生ごみや地震で損壊した冷蔵庫が中身ごと災害廃棄物の仮置き場に持ち込まれたため、腐敗による周辺の生活環境への影響が懸念され、また持ち込み量が想定よりも多くなり仮置き場のスペースが圧迫されたことから、早急な搬出が必要であった。

サンプル画像1

写真3:災害廃棄物の分別が曖昧になる小規模仮置き場
(日高町、2018/9/12撮影)

サンプル画像2

写真4:混合化した小規模仮置き場
(厚真町、2018/9/12撮影)

サンプル画像1

写真5:再分別が必要となった大規模仮置き場での混合廃棄物
(厚真町、2018/9/14撮影)

サンプル画像2

写真6:分別された大規模仮置き場の廃棄物
(厚真町、2018/9/14撮影)

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写真7:再分別が終了した大規模仮置き場の廃棄物
(むかわ町、2018/10/29撮影)

3 広域処理の調整と災害廃棄物処理協定に基づく要請

 9月11日、12日の現地調査中から、北海道では4町の災害廃棄物の搬出先を確保するため近隣の市町村処理施設での受入について調整を行い、最終的に3市(苫小牧市、岩見沢市、登別市)の処理施設で災害廃棄物の受け入れと一部運搬についても協力をいただくこととなった。また公益社団法人北海道産業廃棄物協会(以下「産廃協」、現:公益社団法人北海道産業資源循環協会)とも仮置き場の状況を確認しながら、民間の産業廃棄物処理業者による運搬、産業廃棄物処理施設での処分について調整を行った。最終的に各町からの要請により、北海道の「大規模災害発生時における災害廃棄物の処理等に関する協定」に基づき協力依頼を行い、3市の処理施設への運搬のほか、複数の民間処理場で災害廃棄物の受入について各町からの委託により実施していただき、発災10日後には生ごみの搬出を開始することができた。

 3市の処理施設で災害廃棄物を受け入れるにあたっての品目、量、条件や時期の調整は北海道が行った。仮置き場で混合状態となっている廃棄物や、仮置き場での分別状態では受入出来ない処理施設が多かったため、積み込み前に仮置き場で再度分別する作業が発生した。これらは運搬や分別作業を委託した企業や産業廃棄物協会、シルバー人材センターのほか、町職員や他市町村の職員、一般ボランティア、地元企業の応援派遣の方々にも作業いただいた。夏の終わりに発生した災害であったが分別は雪が降る時期まで続き、最終的に4町全ての片付けごみが仮置き場から搬出されたのは年を越えた1月であった。

4 災害廃棄物等処理事業報告書の作成

 他市での広域処理や民間事業者への委託については、廃棄物処理法に基づく手続き(受入市への通知、産業廃棄物処理施設で処理する一般廃棄物に係る届出)や契約事務が必要となった。各町の民間事業者への委託は大部分を産廃協と一括で契約する形をとったが、家電リサイクル法対象品目や電池等一部品目の運搬・処分、金属くず等の売却は各民間事業者と個別契約が必要となった。これらの手続き書類や契約書類は国の補助事業の申請書類(災害廃棄物等処理事業報告書)の添付書類となるため、契約に係る費用の算定は国の算出基準に沿って行う必要があった。

 震源地近傍の4町では前述のとおり自治体規模の割に被害が大きく、災害廃棄物処理に係る事務作業を町の担当職員だけで行うことは難しい状況であったため、発災2ヶ月後の11月上旬から翌年2月に行われた国の災害査定までの間、厚真町・安平町については道職員各3名を週3日程度常駐させ、またむかわ町、日高町については週1日程度道職員を巡回させ、災害廃棄物等処理事業報告書の作成作業を補助した。報告書の作成は各町の災害廃棄物担当職員のほか、損壊家屋撤の解体撤去事業に係る廃棄物量の見積もりのため、建設部局の職員とも協力し作成を行った。

 私も含め北海道の4町への応援職員は災害報告書の作成経験があるわけではなかったため、環境省北海道地方環境事務所からも多くの支援をいただいた。過去の災害経験市町村(福岡県朝倉市)をご紹介いただき、報告書作成の留意点等についてご助言や参考資料を提供いただいた。また査定前に報告書作成における疑問点や留意点について、環境省を訪ね補助金担当者に直接聞く機会を設けていただいた。これらの支援もあって、査定では一部を除き概ね補助対象事業として認められることができた。

3. 災害廃棄物処理の実績

 北海道胆振東部地震での災害廃棄物処理事業は、仮置き場の復旧工事も含め令和2年7月をもって全て完了した。国への補助事業申請を行った7市町の総事業額は約40億円(廃棄物処理施設災害復旧費を除く)、災害廃棄物処理量は片付けごみと解体撤去ごみあわせて約74,000tとなった。

 市町村別の総事業費及び災害廃棄物の処理量は【表2】のとおりで、片付けごみの98%以上が周辺4町での発生であったのに対し、損壊家屋の解体撤去ごみは札幌市が厚真町に次ぐ量となった。建物密集率が高い都市部の住宅地で局所的に液状化現象が発生したためとみられる。

表2 災害廃棄物処理に係る総事業費及び災害廃棄物の処理量

災害廃棄物処理に係る総事業費及び災害廃棄物の処理量

4. 今後の取組

 北海道胆振東部地震では、発災時点で災害廃棄物処理計画が策定されていない被災自治体が多かった。そのため、仮置き場の候補地や平時の体制で処理できない場合の廃棄物処理ルートなどは、発災後に白紙の状態から決めていく必要があった。加えて、今回の震源地近傍のような人口規模の小さい自治体では、平時の廃棄物処理を一部事務組合で行っていたこともあり廃棄物の担当職員が少なく、発災時は避難所運営等他の業務にも充てられるなど、被災自治体のみで初動の体制を整えるのは困難となる。

 災害廃棄物処理計画の策定は、単に発災時のマニュアルとして機能するためのものではなく、策定時の検討において市町村の廃棄物担当者以外にも災害廃棄物処理の重要性を共有する機会となる。また計画に仮置き場や災害廃棄物の処理体制を明記しておくことは、発災時に支援に入る国や都道府県、他の自治体関係者が被災自治体をサポートし、速やかに処理体制を整えるためにも重要である。

 北海道では市町村の災害廃棄物処理計画の策定が進んでいないことから、環境省北海道地方事務所の「災害廃棄物処理計画策定支援モデル事業」と連携し、各(総合)振興局単位で勉強会・ワークショップの開催を行っている。策定時点から北海道、特に各地域の担当となる(総合)振興局が関わりその内容を把握しておくことや、勉強会等で近隣市町村が互いの計画を知っておくことは、発災時の速やかな初動と効果的な応援行うためには非常に重要となる。今回の災害で私自身が経験したことについても、そういった機会に共有し次の災害への備えに生かせるよう取り組みたい。

5. さいごに

 今回の地震では、道による災害廃棄物仮置き場の現地状況確認が発災5日後と非常に遅い対応であった。被災市町村や関係機関から電話・メールで状況を聞き取り、広域での災害廃棄物処理に係る調整準備をしていたとはいえ、刻々と変わる現場の状況を早期に把握できていなかった。先にも述べたとおり、小規模自治体では廃棄物の専任職員を置くことが難しいため、自治体内の災害廃棄物の状況を職員だけで正確に把握することは不可能に近い。被災住民に最も近い被災自治体職員は住民の安全や苦情への対応が優先され、また役場内での調整や意思決定など応援職員ではできない役割が重要となる。現場を走り回っての状況把握は都道府県や応援自治体職員の最初の役割と考え、現場で何が足りており、何が不足しているかを把握し、スムーズな災害廃棄物処理に向けた体制構築に繋げることが、特に災害廃棄物処理計画がない自治体への支援として重要であろう。それが速やかな災害廃棄物処理に繋がり、ひいては被災地の速やかな復旧復興に繋がる。

 また今回、災害廃棄物処理及びその事務処理は各市町村から北海道への事務委託は行なわず、それぞれの市町村で行っていた。4町での災害報告書作成業務も出張という形で応援を行っていたため、契約事務等で決裁に係る部分等、町職員しかできない仕事があり、町の担当者に事務が集中してしまう事が多々あった。被災自治体の負担軽減を考えると、地方自治法に基づく正式な職員派遣が1名でもあれば良かったのではないかと思う。

 最後になったが、北海道胆振東部地震の災害廃棄物処理にあたり、被災自治体の職員や住民はもとより、ご協力いただいた苫小牧市、岩見沢市、登別市の方々、産廃協をはじめとする民間事業者の方々、多くのボランティアの方々、並びに貴重な助言をいただいた福岡県朝倉市及び環境省の皆様方には、あらためてお礼を申し上げ、結びとさせていただきます。

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