愛媛県宇和島地区広域事務組合環境課長 兼 環境センター施設長 兼 汚泥再生処理センター施設長 宮本清司
令和2年4月
目次
1.施設の概要
宇和島地区広域事務組合環境センターは平成29年10月から本稼働した施設で、宇和島市・松野町・鬼北町・愛南町の1市3町の一般廃棄物(ごみ)を処理する広域施設であり、主に2系統の処理施設となります。熱回収施設(ごみ焼却施設)処理能力120t/日(60t/24h×2炉)とリサイクルセンター(破砕・選別・圧縮・梱包・一時保管)処理能力20t/日(5h)の規模となります。
宇和島地区広域事務組合汚泥再生処理センターは同じく1市3町の一般廃棄物(生し尿・浄化槽汚泥)を処理する施設であり、処理能力257㎘/日(生し尿+浄化槽汚泥)の規模となります。平成27年8月に本稼働した施設です。
私は平成30年4月から宇和島市より出向し、環境センターと汚泥再生処理センターの両施設長を拝命しています。
2.発災直後の調整や協議
去る平成30年7月の豪雨により、広域事務組合圏内の1市3町も被災し、多量の災害廃棄物が発生しました。
まず、汚泥再生処理センターについては、雨水混入による生し尿の受入量は増えたものの、特に混乱は生じませんでした。避難場所からの生し尿についても許容範囲内でした。環境省の専門官から、近隣の大洲市のし尿受入をお願いされ、組合長の許可を得て受入可能とし、7月16日(祝日)に35㎘の受入体制をとりましたが、大洲市側と業者の連絡がうまくいかず、最終的に受入はありませんでした。
環境センターは、基本的に広域圏内の家庭ごみ・事業ごみを処理する施設であり、膨大な量の災害廃棄物を受け入れることは難しく、施設の許容量を超えるため、まず圏域市町と協議し、受入れのルール作りをする必要がありました。
3.受入れの優先順位について
環境センター施設内に、災害廃棄物保管用地を確保しました。敷地面積は3,900平方メートルで、二次仮置場でしっかりと分別されたごみの受入がなんとか可能な面積です。(写真1)
被災した圏域自治体と協議し、災害廃棄物のうち、まずは分別された可燃ごみから受け入れることとなりました。さらに可燃ごみのうち、畳を優先的に受け入れることを決めました。これは、私が平成26年~平成28年の期間、環境省所管による中国四国ブロック災害廃棄物担当者会議に参加させてもらっていた経験から得た知識であり、発火する危険性も高いことから、優先的に処分を行ったものです。また、災害廃棄物保管用地は無舗装で砕石を敷いている用地であることから、災害廃棄物の下に畳を敷くことにより、ある程度の用地保全ができました。(写真2)
腐敗性の災害廃棄物に関しては、殺菌消毒剤のオスバンS(逆石けん液)を使用し、畳も含めた雑菌の繁殖を抑制しました。(写真3)
畳の破砕処理は、可燃性粗大せん断機を使用。当初は30枚/日が限度でしたが、運転委託会社と協議し人員増と残業により、50枚/日、最終的には100枚/日を超える処分が可能となりました。通算で7,560枚の処分をおこなっています。(写真4)
写真1:環境センターの災害廃棄物保管用地全景
写真2:畳敷設状況
写真3:殺菌消毒剤 オスバンS
写真4:可燃性粗大せん断機による畳破砕処理
4.混合ごみへの対応
可燃ごみは、プラットホームから、炉に投入前の「ピット」というコンクリート造りの穴に入れられます。きちんと分別がなされた可燃ごみは、塵芥収集車(通称:パッカー車)により、ピットに直接投入することが可能となりますが、災害廃棄物の可燃ごみはきちんと分別されていることが非常に少ないため、プラットホーム上か、あるいは災害廃棄物保管用地での分別が必要となりました。
宇和島市の災害廃棄物処理の場合、自治体直営か一般廃棄物許可業者による運搬計画であり、自治体からの指導があれば、災害廃棄物の分別はきちんとできるだろうと考えていましたが、実際はうまくはいきませんでした。
発災後、一般廃棄物許可業者から搬入される災害廃棄物のうち、可燃ごみはパッカー車によりピットへ直接投入しました。しかし、ピット内で漁業用のおもり付き漁網を発見。これは漁網の下部分に鉛でできたおもりがついている物です。分類上は産業廃棄物扱いとなります。当施設で処理できる物ではなく、ピットから取り出すのに苦労しました。そのため、その後、可燃ごみであっても、直接ピットに投入することを止め、ピットの入り口前であるプラットホームで一旦落としてチェックした後、ピットに投入することにしました。しかし、あまりにも分別ができていないため、プラットホームでの分別もあきらめ、災害廃棄物保管用地にて分別することに切り変えました。(写真5、6、7)
写真5:プラットホームで展開した分別されていない災害可燃ごみ
写真6:一般廃棄物許可業者より搬入 災害可燃ごみ1
写真7:一般廃棄物許可業者より搬入 災害可燃ごみ2
5.焼却施設での受け入れ管理
宇和島市の場合、災害廃棄物は発災地近くの暫定仮置場から近くの一次仮置場に搬送。その後、宇和島市大浦に一次仮置場を集約して、そこで分別。分別された建設廃材等の産業廃棄物様の廃棄物は産業廃棄物処理へ、可燃物や布団等の一般廃棄物様の廃棄物が当環境センターへ搬入となりました。宇和島市は一般廃棄物許可業者の他に建設業者と委託契約をし、大型ダンプで環境センターへ搬入しましたが、仮置場から災害廃棄物を積み込む際、分別のことを理解している自治体職員が現場で不足していたため、環境センターで処理できない廃棄物が大量に搬入されることとなり、当施設での保管用地での受入を制限することもありました。発災一ヶ月後くらいから、泥等を除去してもらうことを条件として、金属等の災害廃棄物不燃ごみの受入も開始しました。
被災者の家庭からの災害廃棄物については、ごみの形態に関わらずすべて受け入れました。通常は受入禁止となっている家電4品目も一旦受入れし、搬入者の自治体ごとに仮置。その後、各自治体で集荷搬出してもらいました。少しでも被災者の負担を減らすための方法を取りました。また、通常は自治体への手数料免除申請を行って無料となる搬入料金についても、自治体の発行する「り災証明」の持参だけで可としました。この措置は令和元年10月になるまで継続しました。
持ち込みされた災害廃棄物の中には、きれいで本当に災害廃棄物なのかと疑う物も多くありましたが、事前に自治体とも協議し、すべて受入としていました。災害廃棄物の個人持ち込みは令和2年2月10日で終了しました。残りは二次仮置場のぶんが持ち込まれればすべて完了です。ようやく終わるという感じです。
6.焼却施設の環境規制への対応
平成30年7月8日から令和2年2月末までの約1年半の間に処理した災害廃棄物の量は、可燃ごみ約1,946t、不燃ごみ約108t、合計で約2,054tとなります。
当施設のような焼却施設では、焼却する際、公害防止に関して環境省で定められた厳しい基準が設けられています。法律による規制値の他に施設基準値を設け、適正な管理をしています。今回法律による規制値を超えることはありませんでしたが、施設基準値にせまる数値となりました。それは排ガスに関する規制値の中の、SOx(硫黄酸化物)とHCL(塩化水素)です。
SOxについては、可燃ごみに建築廃材が大量に混入されていたこと、また、HCLについては、可燃ごみの中に大量の塩化ビニール管のような廃プラスチックが混入していたことが原因と思われます。その後の対応については、圏域自治体の担当者の方たちに厳しく指導していただくよう要請し、改善されました。
自治体の方が厳しいチェックを行っても、ある程度の搬入禁止物や処理困難物は搬入されてきます。発災当初は炉で燃焼する際、災害廃棄物と家庭ごみとの処理割合を1:2としていましたが、施設基準値を順守するため、1:3に変更。その後、最終的には1:4とし、数値は安定となりました。
7.処理のための体制の確保
委託業者の人員については49名で稼働していますが、これは通常ごみを処理するのに必要な人員であり、災害廃棄物保管用地において、分別業務を行ったり、プラットホームで分別したりする災害用の作業人員が足りません。まずはシルバー人材センターに相談に行きましたが、宇和島市の浄水場が豪雨で破壊され、給水所の方に応援しているため余裕人員はなし。ハローワークにて募集しましたが、なかなか確保できませんでした。
災害現場のボランティア等で、市内の宿泊施設もいっぱいとなり、市外からの人数確保も難しい。道路も破損箇所あり。やはり交通の便が悪い地域は人の確保は厳しいです。そのため、運転委託会社の他施設からの応援や残業により対応し、その後、ハローワークで募集した臨時作業員が少しずつ増えて何とか対応しました。
8.大量のペットボトル
災害の場合、人命が第一となり、被災地域の方たちへの応援が優先されますので、環境施設の人員対応が後になるのは仕方のないことだと思います。
宇和島市では、浄水場の被災により、地区住民の皆さんの飲み水確保が最重要課題となり、住家や仮設住宅での水確保の際、大量のペットボトルが住民の皆さんで所有されました。代替浄水施設の復旧により被災から二ヶ月後に全区域で通水し飲料可となりましたが、通水となると、大量のペットボトルは、その時点より一気に不要な廃棄物となります。環境センターで通常処理量より多量のペットボトルごみが搬入されてきたことにより、通常のラインでは処理ができなくなり、急遽置き場所の確保が必要となりました。軽くて丈夫で便利なペットボトルですが、処分は大変です。
9.失敗の経験
災害廃棄物保管用地において分別作業を行う際、人力ではとても処理できないため、小型のバックホウをレンタルしました。それでも処理が進まないため、その後中型バックホウをオペレーター付きでレンタルしました。しかし、圏域内でバックホウが不足し、通常の価格でレンタルすることはできませんでした。最後の一台しか残っていなかったバックホウを確保する際、通常の倍くらいの価格でのレンタルとなりました。災害補助の査定時、通常価格を超えた分は補助の対象となりませんでしたが、確保するためにはやむを得ないことでした。有事の際の協定等をしっかりと締結することが必要だと思います。
他に失敗したこととして、大量の畳が搬入されてきましたが、ブルーシート等で覆っていなかったため、降雨の際、濡れてしまいました。これを教訓として備えたいと思います。途中からブルーシートで覆うことにより、幸い微生物等による発酵熱で自然発火する前にはすべて処分することができました。(写真8)
写真8:保管用地の畳受入状況。
各自治体等の皆様には、私たちが経験したこと・失敗したことを参考にしていただき、少しでもスムーズな災害廃棄物処理に役立てていただければ幸いです。
本記事は以上になります。