災害時の対応を知る処理業務の全体像Post-disaster actions 災害時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

寄稿:東日本大震災災害廃棄物処理の課題と巨大災害への備え(その1)

一般財団法人 日本環境衛生センター 宗 清生

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2015年6月

 東日本大震災での処理に携わったご経験から、今後の巨大災害にどう備えていくべきかについて、(一財)日本環境衛生センター西日本支局環境工学部 技術審議役の宗清生氏よりご寄稿いただきました。

 本コーナーでは全3回に分けて、いただいた記事をご紹介したいと思います。

宗 清生さんプロフィール

 昭和53年3月東京農工大学工学部化学工学科修了後、昭和53年に(財)日本環境衛生センターに入社。ごみ処理施設に係る検査や建設から解体までの各ステージで技術的評価やアドバイスをする業務に従事する。
 東日本大震災の際には、約2年間、環境省職員としての現地対策本部岩手県内支援チームに参画し、現場で発生する様々な課題に対して技術的支援を行った経験を持つ。また、平成26年8月に広島市で発生した大規模な土砂災害においても、発災当初より現地にて災害廃棄物の処理支援業務を行っている。

1 はじめに

 平成23年3月11日、事務室の片隅で普通の一日が過ぎようとしていた時、突然「大変なことが起こっている」との声が上がり、テレビがつけられました。目に飛び込んできたのは、真っ黒い津波が建物を次々と呑み込んでいく、リアルタイムの現実とは思えない光景でした。想像を絶する大災害の発生。今まで見た事もない全く異質な災害の発生でした。「他人事としては片付けられない。自分にできることは小さいことでも、何かしなくてはいけない」そんな気持ちが自然と湧き上がってくる大災害でした。その日からしばらくして、環境省委託業務である「災害廃棄物処理に係る技術支援」を会社として受託することになり、筆者も被災地の復旧・復興のお手伝いをさせて戴く機会を得ました。当時、「とにかく何でも精一杯やろう」と思ったことを思い出します。
 現地では環境省現地対策本部岩手県内支援チームに所属し、岩手県及び被災市町村の要請に応え各種調査及び技術支援を実施すると共に、定期的に被災市町村をチームとして巡回して処理の進捗状況や課題などに傾聴し、必要な対応を行っていました。
 本稿では、現地で体感したこのような経験や知見をもとに、災害廃棄物処理はどのようなものか概略を述べると共に、災害廃棄物処理の過程で生じた課題と将来の巨大災害に対する備えについて、僭越ながら個人的見解も含めて述べさせて戴きたいと思います。

2 災害廃棄物処理の流れ

 東日本大震災の災害廃棄物処理がどのような流れで行われたのか、岩手県の例を図1に示します。
 先ず、被災現場から災害廃棄物を撤去しますが、その運搬先となる一次仮置場の確保と撤去・運搬を行う業者決定が行われます。一次仮置場及び撤去・運搬業者が決まると災害廃棄物が被災現場から一次仮置場へと動き始め、一次仮置場に山積み(仮置)されていきます。一次仮置場では、仮置された災害廃棄物の適正な管理と、粗選別が行われます。粗選別とは、角材・柱材、コンクリートがら、畳などの大型物、可燃物、不燃物、金属などや、廃油、ガスボンベ、アスベストの含有が疑われる建材などの危険物・有害物を重機や手作業により選別する作業です。ここで選別された鉄くずなどそのままリサイクルできるものは、直接業者に引き渡します。それ以外のものは、二次仮置場に運び、そこで重機や破砕機、各種選別機等により破砕・選別処理し、それにより生じた各種破砕・選別品は中間処理・最終処分先に運搬されます。処理・処分先は、次のような施設等になります。なお、破砕・選別品の大きさや性状は処理・処分先の要求によって決まりますが、それに適合できるように破砕・選別設備が構成されました。

 (1)中間処理施設(リサイクル施設):木材チップ工場、セメント工場など

 (2)既設焼却炉及び仮設焼却炉:再生利用できない可燃物の焼却処理施設

 (3)最終処分場:再生利用できない不燃物等の埋立処分施設

 (4)道路工事等土木工事:コンクリートがらや津波堆積物を資材として使用する工事

 (5)広域処理:被災地では処理できない可燃物等の処理施設

 以上が災害廃棄物処理の流れの概要ですが、各段階で廃棄物処理法やその他の法的手続き、契約手続き及び運用管理が必要になります。東日本大震災では災害廃棄物量が膨大で3.で述べるように「迅速性」も求められましたので、緊迫した空気の中でこの流れが構築されていきました。

図1 災害廃棄物処理の流れの画像

図1 災害廃棄物処理の流れ
(出典:岩手県災害廃棄物処理詳細計画第二次改訂版)

この画像はクリックで拡大することができます)

 

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