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寄稿:震災廃棄物等の回収作業とボランティアとの関わり

仙台市環境局廃棄物事業部 遠藤守也

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2015年10月

 東日本大震災時、仙台市での災害廃棄物処理において、行政とボランティアとの連携により挙げられた成果と課題について、仙台市環境局廃棄物事業部 遠藤守也部長よりご寄稿いただきました。

今回の東日本大震災による震災廃棄物の処理にあたり、ボランティアとの関わりについて振り返ってみた。

震災廃棄物の処理方針等

 本市の震災廃棄物等(がれき・津波堆積物。以下「がれき等」という。)は、本市の一般廃棄物の7年分を超える272万トン(がれき約137万トン、津波堆積物約135万トン)という膨大な量であった。がれき等の処理の実施に当たっては、地元企業の活用による地域経済の復興も念頭に、がれき等の最終処分まで自らの地域内で処理を完結する仕組みを構築することとし、“発災から1年以内の回収、3年以内の処理完了”を目指し取り組みを進めた。
 最初の取り組みは、平成23年3月15日に市内5つの区に1カ所ずつ一般家庭から出る廃棄物を直接持ち込める市民用の仮置き場の確保であった。その後、一部の仮置き場が満杯となって足りないことから3カ所増やし計8カ所となった。
 また、津波被害区域などで発生したがれき類は、蒲生地区、荒浜地区、井土地区の3カ所、約100ヘクタールに搬入場を整備した。搬入場では、可能な限り分別、再資源化を行っていくとし、3月30日から行方不明者の捜索の際に出るものを蒲生搬入場で受け入れを開始した。
 搬入場における焼却処理は平成25年9月に、その他のリサイクル・処理は平成25年12月にそれぞれ完了し、がれきリサイクル率は72%となった。
 津波堆積物は、不用物の除去等必要な処理を行い、海岸防災林や海岸堤防、海岸公園事業・かさ上げ道路事業に活用している。
 津波堆積物の再生処理は平成25年12月に完了し、リサイクル率は96%となった。

ボランティア団体との連携

 ボランティアの皆さんとの関わりは、がれき等の回収作業において大きく3つあった。
 まず、津波被災エリアにおいては、倒壊家屋などのがれき等が広範囲に散在しており、がれき等の中には、アルバムや貴重品などが含まれていた。
 思い出の品9,780点、貴重品1,120点が回収され、保管場所において、ボランティアの方々が清掃などを行い整理し、所有者に引き渡された。
 次に、3月末から被災家屋から濡れたごみの回収を始めた。濡れたごみを道路上に搬出するため、多くのボランティアの方々の支援があった。
 家屋内のがれき等を外にかき出す作業は、行政側とボランティア側で作業分担の棲み分けが自然と行われていた。ボランティア団体が日々、津波漂着がれきの集積を行っていたが、直接、連携を図るため、団体と連絡を取り合い調整するまでには至らなかった。
 また、回収の日程等調整を行っていなかったので、行政側の回収作業が終了した場所においても、ボランティアが入り、再度がれき等が出されており、二度手間となる現場が多く、連携が図られていたら、より効率的に回収が可能な場面もあった。(実際は家屋等を再建するためには、何度も中に入ったがれき等をかき出す必要があり、再度の回収はやむを得ない側面もある。)
 さらに、宅地周りのがれき等の回収は7月末には大方が完了し、農地のがれき等の回収作業にシフトした。農地の復興を主な活動目的としたボランティア団体があり、農地の復旧には時間がかかり、集積したがれき等を数度にわたり回収した。

図1 左:宅地周りのがれき等回収状況 右:回収したアルバムなどをボランティアが清掃し、返却の画像

図1 左:宅地周りのがれき等回収状況 右:回収したアルバムなどをボランティアが清掃し、返却
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図2 ボランティアによる片付けごみ等の画像

図2 ボランティアによる片付けごみ等
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まとめ

 今回の大震災では、ボランティアの活躍は非常に大きいものであった。特に、津波被災地区においては、家族がなくなったり、家庭の歴史、記憶などが流されたり、後に残った目の前のがれきをどのように片付ける気力もない状況であった。
 よって、被災者にとっては地域コミュニティに加え、ボランティアの様々な支援は、がれき処理にとどまらず、まさに、再建に向けた一歩を踏み出すための大きな後押しとなったことは枚挙にいとまがない。
 また、行政としても、被災者の復旧と再建のため、いかに速やかにがれき処理を行うことを優先してきた。
 このような状況において、行政とボランティアの方々との連携には大きな成果を上げる一方で課題があることがわかった。
 まず、家屋や農地からのがれき等回収にあたっては、分別収集の徹底が次の処理の迅速化、効率化に大きく影響するものであったが、分別の周知が思うようにできなかった。
 平成27年9月関東・東北豪雨に伴う災害ごみの処理にあたっては、大震災の経験を踏まえ、速やかにボランティア団体に対し、できるだけごみを分別((1)濡れたごみ、ガラス、せとものなどの(2)われもの、家電などの(3)市が処理できないもの、(4)土砂)するよう要請した。
 なお、ごみの分別区分は、燃えるごみにはプラスチックを除いている地域があるなど、市町村によって異なるものであり、地域外のボランティアには丁寧な説明が必要である。
 また、町内会機能が早くから復活していた地区においては、町内会の方々が回収の日時・場所を調整し、連携できたところもあった。効率的に回収するため、ボランティア団体と回収日時、場所等の調整を試みたが、ボランティアの人数が日によって変わり、計画的な集積作業が出来ないことや、そのような調整は被災者側が行うものと思っているところもあり、断念した経緯がある。
 ボランティア団体は、行政側に束縛されない自主的に活動を行う、緩やかなつながりで組織された団体であることを把握した上で、調整、協議を進める必要があるものと考える。
 行政側としては、ボランティアのニーズや作業量にマッチした作業を業者に依頼する必要があり、十分な話し合いのもと、連携を行うことが理想であるが、業務量が膨大となる震災時にそのような時間が確保できないことが課題としてあげられる。
 大震災において、市内はもとより全国から多くのボランティアの方々のご支援をいただき、震災廃棄物の回収は目標どおり、1年で完了することができた。ここに改めて、感謝申し上げる。

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