横浜市資源循環局旭工場
2020年8月
はじめに
横浜市旭工場では2019年度の焼却施設見学会で、災害廃棄物に関する展示・イベントを行いました。旭工場を訪問し、資源循環局旭工場工場長の荒井昌典さんと職員の金澤貴海さん、松本慧さんにお話を伺うことができましたので、ご報告します。
目次
旭工場ふれあい見学会の概要
市資源循環局旭工場では、毎年11月の最終日曜日に「ふれあい見学会」として地域住民等の見学会を開催しています。ごみ収集車両の乗車体験や工場見学会(通常ルートと異なる箇所も見学できる)、リユース家具抽選会が人気で、缶バッジ作成等の参加型企画が多数あります。
また横浜市資源循環局北部事業所からは、以前から災害時の仮設トイレ対策の展示を行っています。
第13回になる2019年度は、横浜市が災害廃棄物処理計画を策定したタイミングで、市民向けの啓発の必要性もあったことから、災害廃棄物に関するパネル展示、ラジコンを使った災害廃棄物積込体験ゲーム等を行いました。
災害廃棄物の体験ゲーム
当初は、「災害復旧支援隊」の横断幕をつけた収集車両の乗車体験や災害廃棄物に関するパネル展示、体験ゲーム、災害時のトイレ対策をまとめて「災害コーナー」とし、野外で実施する予定でしたが、開催当日は天気がよくない予報であったことから、屋内展示に切り替えて準備を進めました。当日は曇り空であったものの、見学会に612名(大人・子どもは約半々)が来訪し、災害廃棄物の体験ゲームは人気のイベントとなりました。
体験ゲームは、お菓子を詰めたカプセルを災害廃棄物に見立てて、ラジコンのダンプカーやショベルカーで運ぶというもので、参加者に災害廃棄物処理の大まかな流れを知ってもらうことを狙いとしました。最初にダンプカーをラジコンで操作してカプセルを仮置場まで搬送し、次に仮置場でカプセルをショベルカーに積替えて移動し、焼却工場へ搬送するという流れです。ゲーム後、参加者にはお菓子が入ったカプセルをお土産として持ち帰ってもらいました。
災害廃棄物のパネル展示
参加者が体験ゲームの順番を待つ間に、大人向けにパネル展示の説明を行いました。パネルでは、近年自然災害が増えていること、もし横浜市で大規模な地震が発生すると阪神淡路大震災と同程度の量の災害廃棄物が発生すること、処理するまでは仮置場で災害廃棄物を保管すること等を説明し、さらに行政が災害廃棄物を処理する工程も示しました。
説明では、災害廃棄物は決められた場所に出すことや、災害時であっても廃棄物の分別が大切であり、生ごみと片付けごみは分けて出すことなど、市民に協力をお願いしたい事項も伝えました。
市民の関心や質問
説明を聞いた市民からは、「災害時に他都市へ支援に行っているんですね、知らなかった。」という感想や、以下のような質問がよせられ、職員が丁寧に説明しました。
- 仮置場はどこですか。
- 災害廃棄物はどうやって出すのですか。
- 災害時にどうやって情報を入手できますか。何を見たらわかりますか。
成果と課題
災害廃棄物の体験ゲームは大変人気があったので、その順番を待っている間に、大人に対してパネルを説明することができましたが、体験ゲームのラジコン操作に職員が時間をとられて、十分にパネルの説明ができないことがあったとのことです。次回はクイズラリー方式で、パネルを見てクイズに回答してから、ゲームに参加するような工夫も考えているそうです。また、工場には普段から多くの小学生や町内会が見学に訪れるため、今回作成したパネルを常設展示にすることも検討しているそうです。
取材した感想
災害が起きる前に、市民に災害廃棄物について伝える取り組みは、まだ少ないのが現状です。横浜市旭工場では、従来からあった見学会に災害廃棄物の展示を加えたことで、幅広い市民へ無理なく伝えることができた好事例だと思います。子どもをターゲットにした体験ゲームと大人への説明の組合せも絶妙にうまく、日ごろから地域とのコミュニケーションを大切にしている背景が伺えました。
地域住民と定期的な交流の機会を持っている清掃工場は多いと思います。こうした既存の取り組みをうまく活用することで、行政側も大きな負担を強いられることなく、幅広い市民に災害廃棄物について理解してもらう機会を提供できるのではないでしょうか。
横浜市におけるその他の広報啓発活動
横浜市ではこの他、市のウェブサイトとパンフレットに「災害時のごみと資源の分け方・出し方について」を掲載し、市民が平時から災害廃棄物について関心を持ち、理解を深めてもらえるよう取り組んでいるそうです。