平時の対策を知る対策とは?Pre-disaster preparedness actions 平時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

中部地方環境事務所における災害廃棄物の取組について

環境省中部地方環境事務所 廃棄物・リサイクル対策課 小岩真之課長

2014年5月

1. 中部地方環境事務所の紹介

 環境省は全国を7ブロックに分けて、地方環境事務所を配置しており、このうち、中部地方環境事務所は、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、愛知県、三重県を管轄区域としています。

 各地方環境事務所では、廃棄物・リサイクル対策、地球温暖化対策、環境教育・環境保全活動の推進、公害・化学物質対策、自然環境の保全整備、野生生物の保護管理等の業務を行っています。

参考:中部地方環境事務所のホームページ
http://chubu.env.go.jp/

2. きっかけ

 中部地方環境事務所が大規模災害時に発生する災害廃棄物に関する取組を進めるきっかけは大きく分けて二つあります。

 一つ目のきっかけは東日本大震災以降の環境省の取組です。環境省では、東日本大震災で発生した膨大な災害廃棄物の処理を円滑に進めるために、平成23年から平成26年にかけて、災害廃棄物処理事業に対する補助率の特例措置、処理支援体制の整備、災害廃棄物処理に係る法令上の措置、災害廃棄物処理に係る指針の策定、広域処理の調整等を行ってきました。また、東日本大震災の教訓を踏まえ、将来起こりうる災害に対応するため、環境省では平成24年から災害廃棄物対策指針策定に向けた検討、平成25年から巨大地震発生時における災害廃棄物対策に関する検討を行っています。これらの環境省における経験、検討内容を、南海トラフ巨大地震に備えた検討を進める自治体に伝えるとともに、自治体の意見を環境省における検討に反映するための連絡体制が必要と当事務所では考えました。

 2つ目のきっかっけは、南海トラフ巨大地震に備えた中部地方における防災体制づくりの動きです。平成23年10月に中部地方整備局が事務局となり、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、岐阜県、三重県の国・県等の行政機関、学識経験者、経済界等で構成される東海・東南海・南海地震対策中部圏戦略会議が設立されました。この会議では、東海・東南海・南海地震等の巨大地震に対して総合的かつ広域的視点から一体となって重点的・戦略的に取り組むべき事項についての検討を行い、平成23年12月に「中部圏地震防災基本戦略(中間取りまとめ)」を公表しました。この中間取りまとめでは、各機関の緊密な連携なくしては達成が難しく、かつ緊急に対処すべき10項目の課題を「優先的に取り組む連携課題」として挙げ、各課題について幹事等を決め、具体化を図ることとなりました。この10項目の課題の一つである「災害廃棄物処理のための広域的連携体制の整備」については、中部地方環境事務所が幹事となって具体的な検討を進めていくこととなっていました。

参考:東日本大震災で発生した災害廃棄物への環境省の対応
http://kouikishori.env.go.jp/

参考:環境省の災害廃棄物対策関連のホームページ
http://www.env.go.jp/recycle/waste/disaster/index.html

参考:東海・東南海・南海地震対策中部圏戦略会議のホームページ
http://www.cbr.mlit.go.jp/senryaku/senryaku.htm

3. 大規模災害時の廃棄物処理に関する連絡会

 2. に記載した、東日本大震災以降の環境省の取組と南海トラフ巨大地震に備えた中部地方における防災体制づくりの動きの二つをきっかけに、中部地方環境事務所が幹事となって、平成24年3月に「大規模災害時の廃棄物処理に関する連絡会」を設置しました。

 連絡会は、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、岐阜県、三重県の5県、岐阜市、静岡市、浜松市、名古屋市、岡崎市、豊田市、豊橋市、四日市市の8市、愛知県産業廃棄物協会、中部経済連合会、国立環境研究所の専門家、中部地方環境事務所、中部地方整備局の担当者で構成されています。

 連絡会では、各自治体における災害廃棄物対策の検討状況に関する情報交換、環境省における災害廃棄物対策指針等の検討に関する情報提供と意見交換、中部圏地震防災基本戦略に関する情報提供等を行うとともに、連絡会における議論を整理した「災害廃棄物処理のための広域的連携体制の整備に係る取りまとめ」を平成25年3月にまとめました。

 「取りまとめ」では、まず、災害時の協力協定の締結状況、災害廃棄物の仮置場候補地の検討選定状況、震災廃棄物処理計画等の策定状況等の各自治体の災害廃棄物対策の現状を整理しています。また、広域的大規模災害への備えとして検討おくべき事項として、都道府県間の協議の場の開催は国が担うべきといった協議・連携・連絡体制の構築に向けた検討の必要性や国有地の利用など仮置場等の確保が課題であることを示すと共に、各自治体において準備しておくことが適当な事項として、仮置場等の確保に加えて、最大規模の災害を想定した全市町村の災害廃棄物処理計画の策定等が必要としています。さらに、今後の方向性として、広域的連携体制の整備、仮置場候補の確保に向けた情報共有、災害廃棄物処理計画策定に向けた支援等を進めるとしています。

参考:災害廃棄物に対する中部地方環境事務所の取組のホームページ
http://chubu.env.go.jp/recycle/mat/r_8.html

4. 中部地方における協議の場の設置

 3.に記載したとおり、「災害廃棄物処理のための広域的連携体制の整備に係る取りまとめ」では、広域的連携体制の整備を進めるとしています。また、環境省における巨大地震発生時における災害廃棄物対策に関する検討の中間取りまとめとして、平成26年3月に公表した「巨大災害発生時のおける災害廃棄物対策のグランドデザインについて」では、地域ブロック単位で協議の場を設置し、必要となる施設の整備や連携・協力体制の構築に向けた検討を行うことに加え、管内関係者間での災害廃棄物対策に係る情報共有をすべきとされています。

 このため、中部地方環境事務所では、平成26年度中に中部地方における協議の場を設置できるよう準備を進めているところです。既に「大規模災害時の廃棄物処理に関する連絡会」が設置されていることから、この連絡会を母体に、富山県、石川県、福井県の北陸3県と政令市等を加える形で協議の場を設置する予定です。

 東日本大震災の教訓を踏まえ、内閣府や環境省が首都直下型地震や南海トラフ巨大地震の被害想定等を行ったことを受けて、東海地方では南海トラフ巨大地震への備えが大きな課題として認識されています。南海トラフ巨大地震のような巨大災害への対応を進めることが重要なのはもちろんですが、中部地方全体を見渡した場合、南海トラフ巨大地震のみを想定するのではなく、様々な大規模災害が起きうることを想定する必要があると考えています。南海トラフ巨大地震による被害が想定される自治体だけでなく、全ての自治体が自らの地域で地震、風水害等の大規模な災害が起きうることを想定し、災害廃棄物を円滑に処理するための詳細な計画づくりを進めることが極めて重要です。

 このため、中部地方における協議の場で、まずは、環境省の検討の成果、東日本大震災等の過去の大規模災害の知見、既に先進的な計画策定を進めている自治体の知見等、必要な情報の提供・共有を行い、各自治体による災害廃棄物処理計画策定を支援していきたいと考えています。

 災害廃棄物処理計画策定を進める中で、被災自治体のみで出来ること、出来ないことが明確になってくると思います。また、環境省が平成26年3月に策定した「災害廃棄物対策指針」において、災害廃棄物処理計画には自らが被災した立場に加え、支援する立場も想定して策定するとされていることから、被災しなかった自治体が被災自治体をどこまで支援できるかということも明確になってくることを期待しています。さらに、東日本大震災等の過去の災害では民間団体の協力も大きな力となりました。現在、自治体と民間団体との災害時の協力協定を結ぶ動きが大きく広がっています。

 中部地方における協議の場では、被災自治体のみで出来ること、出来ないこと、被災しなかった自治体が支援できること、民間団体が協力できることについて、情報共有した上で、県域を越えた広域連携のあり方について協議していきたいと考えています。

 今後、起こりうる大規模災害の全てを想定することは不可能です。巨大な災害に対して我々が出来ることには限りがあります。しかしながら、今の我々に可能なこと・不可能なことを明らかにし、過去の経験に学び、我々に可能なことを広げ・高めていくことは可能であり、また、着実に積み重ねていく必要があると考えています。このように大規模災害への備えを進める関係者が、継続的に情報共有し、協議していく場を中部地方に作りたいと考えています。

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