平時の対策を知る処理計画Pre-disaster preparedness actions 平時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

三重県における災害廃棄物処理計画策定の取組について

三重県環境生活部廃棄物対策局廃棄物・リサイクル課
主幹 駒井 克也

2014年7月

 ※本レポートの掲載後に「三重県災害廃棄物処理計画(2015年3月)」が策定・公開されております。計画はこちらからご覧頂くことができます。

1.はじめに

 東日本大震災を契機として、防災対策は大きな転機を迎えています。三重県においても南海トラフを震源域とする巨大地震の発生が懸念されており、災害廃棄物の処理を含めた総合的な見直しを進めているところです。

 さらに、東日本大震災の災害廃棄物処理に際して、本県は一日も早い東北の復興のため、広域処理に向けた調整等に取り組む中で、災害予防対策に重点を置いた災害廃棄物処理計画の重要性を改めて認識しました。

2. 活用されなかった災害廃棄物処理計画

 三重県では、災害廃棄物処理体制の構築に向けた取組として、これまで、平成16年度に関係4団体等と災害廃棄物処理に関する応援協定を締結するほか、平成18年度には県が「災害廃棄物処理対策マニュアル」を作成し、研修会や個別協議をとおして、市町災害廃棄物処理計画の策定支援を進め、県内29市町のうち21市町で計画を策定しています。

 一方、過去の大規模災害の歴史をたどると、昭和34年の伊勢湾台風まで遡る自治体も少なくなく、市町における体制整備に向けた緊急性が十分に浸透しているとはいえない側面があります。

 しかし、そうした三重県においても、局地的な災害はたびたび発生しており、平成23年9月の台風第12号災害では、三重県南部を中心に長期間にわたって激しい雨をもたらし、浸水被害や土砂災害が発生し、住家被害は、県内15市町にのぼり、3市町で「災害救助法」が適用されました(紀伊半島大水害)。

 発災直後の被災地では、倉庫が原型を維持したまま別の場所に流され、水害の爪痕として布切れが電線に垂れ下がるなど、その時の被害の様相は、想像を超えるものでした。

 被害にみまわれた市町では、膨大な水害廃棄物が発生し、市町施設の受け入れ条件に合わない混合廃棄物などは、県が調整を行い、一般社団法人三重県産業廃棄物協会との応援協定に基づき処理(再生利用)を進めるとともに、県と29市町で結んでいる応援協定により、県内のほとんどの市町が何らかの形で被災市町に対する支援に関わり災害廃棄物の処理を進めることができました。

 一方、災害廃棄物処理計画については、計画を策定していた被災自治体においても混乱が生じ、計画が実効的に活用されませんでした。

 このことは、計画を策定したものの、その後の計画の運用や見直しが不十分であったこと、そして、災害経験の少ないことが結果的に計画を形骸化させてしまったとも考えることができます。

3. 実効性・柔軟性のある計画とするために

 現在、三重県では、南海トラフ地震等の大規模災害に備え、環境省の災害廃棄物対策指針や三重県地域防災計画に基づき、県および全市町で災害廃棄物処理計画の策定に向けた取組を進めています。

 平成24年度には、「東日本大震災における初期対応調査」を実施し、発災初動期の課題について整理を行いました。また、災害廃棄物の広域処理に向けた調整の経験の中で、実際に宮城県、岩手県の各自治体と協議を行い、初動期のみならず復旧・復興期の対応について、意見交換を重ねることができました。

 そして、平成25年度には、市町災害廃棄物処理計画の策定を支援するための研修会や個別協議を実施するとともに、計画の基本となる事項をとりまとめた「市町災害廃棄物処理対策マニュアル」を作成しました。

 本マニュアルは、環境省の新指針に基づき、以下の事項に留意して作成しています。

(1)新たな被害想定に基づく市町計画の策定(改定)
 三重県防災対策部が新たな科学的知見を加え実施した三重県地震被害想定調査(平成26年3月)に基づいて作成しています。

(2)被害防止、被害軽減を図るため、災害予防対策を明記
 ごみ処理施設における補修資材の備蓄や協力支援体制の構築について定めるなど、事前準備、災害予防に重点を置いた構成としています。

(3)教育訓練の実施と災害廃棄物処理計画の更新
 発災時に災害廃棄物の処理のための組織が有効に機能するよう、平常時から職員の訓練や研修を実施するとともに、地域防災計画の見直し等にあわせた処理計画の定期的な改定について定めています。

(4)発災時の災害廃棄物処理担当組織の強化
 発災時に災害廃棄物処理の事務を担う組織の構成と役割分担を定めるとともに、処理の進捗に伴う組織見直しについて定めています。

(5)地域特性に即した廃棄物の処理
 地域特性により災害の様態や災害廃棄物の処理方法が異なることから、地域の実情に合わせた処理の考え方を示すとともに、適正な処理が困難な廃棄物の処理上の留意点について定めています。

(6)広域処理の対応
 多量の災害廃棄物の発生により域内処理が困難となった場合の広域処理に対する受援、支援の両面から手順、考え方を示しています。

(7)仮置場の確保
 災害廃棄物を集積し、保管する仮置場の設置・運用および仮設処理施設の設置手順等について示しています。

 市町の災害廃棄物処理計画の策定を支援するためには、それぞれの市町の抱える課題や地域事情に即した対応が求められます。また、防災担当課はもとより、避難所ごみやし尿等の関係から災害救助法担当課、道路啓開・家屋の解体撤去・都市計画の観点から建設担当課等、庁内のあらゆる部署との連携が必要になることは当然ですが、廃棄物関係団体や建設系の団体等の民間事業者、消防・警察・自衛隊等との連携も重要になります。

 これまで、市町との個別協議では、廃棄物担当課に加え防災担当課にも同席を求めて、市町全体の取組として「災害廃棄物処理計画」を策定していくことを強く働きかけてきました。

 そのような市町担当者との協議の中で、例えばとある都市部の自治体の担当者からは、

「いざとなれば計画なんて役に立たないという事態も考慮する必要がある。“組織体制”“災害廃棄物処理”“応援協定”のフロー図が何より重要で、それさえあればとりあえずことが足りる。あとは行政の柔軟な発想が必要である。」

 また、とある沿岸部に位置する町役場の方からは、

 「災害経験の少ない若い人たちのために、これからはリアルな計画が必要だ。」

 といったさまざまな意見をいただいています。

 災害廃棄物処理計画の策定(改定)について、これまでの取組をとおして分かったことは、県と市町で計画を作ることが目的化することなく、計画策定の取組により三重県内の災害廃棄物処理体制を構築し、地域防災計画と連動した訓練や研修等で計画の検証を行う仕組みをつくる。そして、何よりそれらを動かす人材の育成が重要になるということです。

 南海トラフ地震の発生により甚大な被害が予測されている本県にとって、災害廃棄物処理体制を構築することは喫緊の課題です。「東日本大震災を経験した自治体」、「環境省」、「国立環境研究所」、「廃棄物・3R研究財団」等さまざまな関係機関のご助言をいただきながら、県および市町が災害廃棄物処理計画を策定するとともに、人材と計画を育てる取組を今後とも行っていきます。

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