平時の対策を知る処理計画Pre-disaster preparedness actions 平時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

愛知県における災害廃棄物処理計画策定に向けた取組

愛知県環境部資源循環推進課
岩川 誠

2014年8月

1. はじめに

 愛知県の人口は、名古屋市の人口約230万人を含め、約740万人で、全国で4番目となっています。また、平成24年度の製造品出荷額等は40兆332億円と全国の約13%を占め、36年連続で全国1位となっています。産業別では、製造業を始めとする第二次産業の割合が約3分の1を占めており、特に、製造業の構成比は全国に比べて極めて高く、愛知県における産業構造の特徴となっています。

 愛知県では、昭和19年の東南海地震(マグニチュード7.9)、昭和20年の三河地震(マグニチュード6.8)の後、震度5を越える地震は発生していません。一方、水害は昭和34年の伊勢湾台風、平成12年の東海豪雨などが発生し、大きな被害を受けました。

 南海トラフ沿いで発生する大規模地震については、約100~150年の間隔で発生しており、前回発生した東南海地震から70年近くが経過し、今後30年以内にマグニチュード8以上の地震が発生する確率は60~70%と言われています。

2. 愛知県における東海地震・東南海地震・南海地震等の被害予測調査結果

 愛知県では、平成26年5月30日に開催された愛知県防災会議において、これまでの地震被害予測調査を最新の知見に基づいて見直した新たな地震被害予測調査結果が公表されました。この調査結果によれば、南海トラフで繰り返し発生している地震・津波を参考としたモデルにおいて、建物の全壊・焼失棟数は約94,000棟、災害廃棄物及び津波堆積物の発生量は約2,000万トンと推計されています。

3. 「災害時の一般廃棄物処理及び下水処理に係る相互応援に関する協定」の締結

 愛知県では、平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災の後、県内全ての市町村と一部事務組合が参加する「一般廃棄物処理に係る災害相互応援に関する協定」を平成8年3月に締結しました。この協定は、災害の発生に起因してし尿やごみの処理に支障が生じた場合に、(1)被災した市町村の要請に基づき、要請を受けた市町村がし尿やごみの処理の応援を行う、(2)被災した市町村は必要に応じて県に調整やあっせんを要請するというものでした。

 平成23年3月に発生した東日本大震災では、仮設トイレのし尿が処理できなかったり、下水道が被災しマンホールから下水があふれる事態が起こりました。このような場合には、バキュームカーで仮設トイレのし尿や、マンホールからの下水を受入可能なし尿処理施設又は下水処理施設に運び、速やかに処理する必要があります。

 このため、愛知県では、前記の協定を見直し、新たに下水道管理者を加え、平成26年1月1日に県内全54市町村、21一部事務組合、50下水道管理者及び県の126団体で「災害時の一般廃棄物処理及び下水処理に係る相互応援に関する協定」を締結しました。この協定により、仮設トイレのし尿やマンホールからあふれた下水を、被災していないし尿処理施設や下水処理施設で処理することが可能となりました。このようなし尿処理施設と下水処理施設の相互応援協定を県内全域で締結するのは、全国で初めての取組となりました。

 また、新たな協定では県の役割を明確化し、被災自治体等からの要請に基づく調整・あっせんや、被災自治体等が応援要請できない場合に他の自治体等に応援についての必要な指示を行うことを盛り込みました。

4. 愛知県における災害廃棄物処理計画の策定に向けた取組

 愛知県では、大規模災害を対象に、災害発生後の県民生活及び産業活動の早期の復旧・復興を目指し、災害発生時から速やかに対応するための、広域的な処理体制を盛り込んだ「愛知県災害廃棄物処理計画」策定に向けた検討に着手し、平成27年度末までに策定することとしています。    

 今年度はまず、過去の事例における課題の抽出、県内の廃棄物処理施設の処理能力の把握及び災害廃棄物の種類別の発生量の推計などの基礎的な情報の整理・検討を行い、これらの結果を基に、廃棄物の種類別処理フローを検討しています。     

 現在の法律では、災害廃棄物は一般廃棄物とされ、その処理責任は市町村にあります。そのため、愛知県が災害廃棄物処理計画を策定したとしても、県内の市町村が災害廃棄物処理計画を策定していなければ意味がありません。また、特に東日本大震災のような大規模災害については、一つの市町村で災害廃棄物処理を完結することは困難であり、市町村と県、あるいは近隣の市町村の災害廃棄物処理計画を整合のとれたものとすることが、計画を実行的なものとするために重要であると考えています。     

 このため、先に述べた検討とは別に、市町村の災害廃棄物処理計画の策定を促進すること、また、県と市町村や近隣の市町村間で整合のとれた災害廃棄物処理計画とすることを目的に、今後、愛知県内を4つのブロックに分け、ブロックごとに地域別の処理体制を検討する会議を開催することとしています。現在は市町村の計画策定促進や地域別処理体制の構築に向けた効果的な会議プログラムについて検討しているところです。愛知県災害廃棄物処理計画には、この会議で検討した地域別処理体制も盛り込んでいく予定をしています。

5. 今後の課題

 はじめに述べたとおり、愛知県では前回に発生した東南海地震から70年近く経過しており、このような大震災を経験した職員は県にも市町村にも今はほとんどおりません。このため、大規模災害を想定した災害廃棄物処理計画を策定しようと考えても、災害の具体的なイメージが沸かず、災害時に何をしたらよいのか分からない中で始めなければなりません。愛知県では、7月に県内すべての市町村と一部事務組合が参加する会議の場に、岩手県陸前高田市の職員の方をお招きし、陸前高田市における災害廃棄物処理について御講演いただきました。実際に災害廃棄物処理に携わった方から写真を交えて生の声を聞く機会を得て、これから災害廃棄物処理計画を策定していく県・市町村の担当者にとっては、災害を我が身のこととしてとらえる第一歩となったのではないかと思っています。

 愛知県では、平成27年度を目途に災害廃棄物処理計画を策定すべく取組を進めていますが、計画づくりは災害廃棄物処理対策の最初の一歩です。計画を作ることを目的とするのではなく、計画策定後には、人材育成や災害を想定した訓練を実施するなど、災害廃棄物処理計画を実行性のあるものとするため、方策を検討していかなければならないと考えています。

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