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取組紹介:広島県「平成30年7月豪雨の被災経験を踏まえたマニュアル作成と研修の取組」

広島県環境県民局 循環型社会課

取組紹介:広島県「平成30年7月豪雨の被災経験を踏まえたマニュアル作成と研修の取組」

2020年7月

目次

1 はじめに
2 マニュアルの作成
(1)マニュアルの作成方法
(2)マニュアルの構成
3 災害廃棄物処理に係る研修・訓練
(1)スケジュール
(2)研修・訓練の内容
(3)研修・訓練の成果及び課題
4 今後の取組
関連資料

1 はじめに

 平成30年7月豪雨災害における災害廃棄物の処理に当たっては、災害廃棄物処理計画に基づき、環境省や東京都をはじめとした他県の皆様や廃棄物処理業者の皆様などの協力を得ながら、廃棄物を生活圏域から可能な限り速やかに撤去することを目指して、取り組んできました。

 しかしながら、災害廃棄物処理計画では、国や他県自治体職員、業界団体などからの支援の受入や要請に関する具体的な対応方法や手順が定められていないため、処理体制を構築するまでに時間を要したこと、あらかじめ具体的な仮置場を想定できていなかったため、人家に近い場所に廃棄物が積み上がったことなどの課題が明らかになりました。また、災害廃棄物の処理は市町が主体となり地域の民間業者等の力を活用しながら対応に当たる必要がありますが、具体的な業務内容と手順が整理されておらず、適切に対応できない例もありました。

 このため、災害廃棄物処理計画を補完するものとして、この度の災害における対応を振り返り、発災直後から機能する体制やルールづくりを行うなど、国や市町、業界団体の皆様と協力しながら、今後の対応に係る具体的な改善策を定めた「災害廃棄物処理に係る市町等初動マニュアル(以下「マニュアル」という)」を策定しました。また、災害廃棄物処理に係る対応能力の向上を目的として、市町等を対象に本マニュアルを用いた研修・訓練を実施しましたので、これらの取組についてご紹介します。

2 マニュアルの作成

 平成30年7月豪雨の教訓を今後の災害対策に活かすため、早期の復旧・復興のために特に重要である初動期の対応について検証を行い、災害廃棄物の処理主体である市町の対応を中心とした、標準的なモデルとして令和元年5月に本マニュアルを作成しました。

(1)マニュアルの作成方法

 平成30年7月豪雨災害において生じた課題と改善策について、市町のほか、関係業界、環境省、国立環境研究所から幅広く意見を聴取してとりまとめました。

(2)マニュアルの構成

 発災後概ね2週間以内の初動対応期に必要な役割分担を整理し、役割ごとの具体的な業務について、タイムラインを作成しました。

災害廃棄物処理に係る市町等初動マニュアル(令和元年5月 広島県)

  • 詳細は広島県HPをご参照ください。
  • 当プラットフォーム上でも同じ資料を掲載しています。
    処理計画>災害廃棄物処理計画に取組んでいる自治体>広島県

<表1 災害時の初動対応タイムライン>

災害時の初動対応タイムライン

3 災害廃棄物処理に係る研修・訓練

 令和元年6月には、作成したマニュアルに基づき、災害廃棄物処理に係る対応能力の向上を目的として、発災から概ね2週間以内の初動対応を想定した研修・訓練を実施しました。

(1)スケジュール

令和元年6月3日(月曜日)~4日(火曜日)
(1) マニュアルの研修(ワークショップ)【1日目AM】
(2) マニュアルを用いた図上訓練【1日目PM、2日目AM】
(3) 訓練の振り返り(ワークショップ)【2日目PM】

(2)研修・訓練の内容

(1) 座学研修・ワークショップ

 座学研修では、マニュアルの説明・読み合わせを行い、マニュアルの内容を参加者間で共有しました。併せて、グループワーク形式により、平成30年7月豪雨における災各市町の害廃棄物処理事例の情報交換を行いました。災害当時、実際に現場で対応にあたった担当者も多かったため、初動で特に困ったこと等について、活発な意見交換ができましたが、その中でも「仮置場を早期に設置することの重要性を痛感した」「候補地の選定や管理体制の検討など、平時の備えが必須である」など、仮置場の設置・運営に関する意見が多く出ました。災害廃棄物処理経験の少ない市町からは「今後の災害対策を検討するための参考になった」という意見をいただきました。

(2) 図上訓練

 図上訓練では、仮想の災害を設定し、様々な付与条件に応じ、マニュアルに沿った災害廃棄物処理対応を実践しました。訓練には、関係業界団体にも参加いただき、発災時における支援要請の手続き等を確認しました。

【図上訓練の設定条件】

 広島県を含む広域の範囲において、平成30年7月豪雨に相当する豪雨災害が発生し、広島県内の仮想都市X市で土砂災害・河川氾濫が発生したことを想定して、訓練を行いました。

<表2 X市想定災害の概要>
発災日時 6月2日未明
時間最大雨量 60mm/hr
累積降水量 500mm
避難者数 約2千人
その他被害情報
・市内の複数個所で土砂崩れが発生
・市内X川の氾濫により家屋浸水被害が発生
・発災直後から市内の広範囲で停電が発生
・ガス、上下水道等その他インフラは一部の箇所で被害
・被害により市内の複数個所で道路・橋梁が損壊し通行不能

【付与条件】

 土砂崩れによる廃棄物処理施設の被災や、廃棄物の収集に関する住民からの問合せ等、平成30年7月豪雨で実際に起こった事例を基に、付与条件を設定しました。また、マニュアルに沿った対応が実践できるよう、各付与条件に対するマニュアルの該当箇所を確認しながら訓練を進めました。

<表3 図上訓練の付与条件>
発災後 時間 No 発信元 具体的な付与内容 マニュアル
該当箇所
1日目
(6/3)
8:00 1 市災対本部 廃棄物部局の職員の安否と、庁舎への参集状況を確認し、リーダーの指示のもとに各人の役割体制を確立し災害対策本部に報告すること。 1.組織体制の確立(p.4)
9:00 2 市クリーンセンター職員 X市クリーンセンターの裏山が崩れ、施設に一部被害が発生し稼働停止したため情報共有すること。 2.情報収集・報告(p.6)
10:00 3 市の窓口担当課 B地区の住民から、災害ごみはどこに持っていけばよいのか問合せがきている。とりあえず平時のステーションに出してもよいのか指示してほしい。 6.住民等への広報(p.15)
以下続く

【全体の構成と役割】

 市町廃棄物担当職員は1チーム6名程度で構成される「X市災害廃棄物処理チーム(プレイヤー)」に、事務局(県廃棄物担当職員、委託業者)は「コントローラー」に分かれて班分けを行い、協定関係団体参加者は、1つのテーブルに集合し、災害協定に基づく対応を行いました。

訓練の全体の構成

<図1 訓練の全体の構成>

この画像はクリックで拡大することができます)

<表4 コントローラーの主な役割>
役割名 訓練での役割
県(循環型社会課、厚生事務所) 市町が実施する災害廃棄物処理につて、県全体での調整や技術的支援を行う。
X市災害対策本部 災害対応の全体を統括し、X 市災害廃棄物処理チームに被害情報の伝達や対応の指示を行う。
X市土木部局 災害廃棄物と同時に発生する土砂の処理について、廃棄物処理チームと連携する 。
X市クリーンセンター職員 焼却施設X市クリーンセンターの運営に関わるX市職員。
環境省
(D.Waste-net)
D.Waste-net及び他自治体からの支援の調整や、発生量の推計を支援する。
市民 災害廃棄物処理に関する不明点について、問合せをX市災害廃棄物処理チームに行う。

 

マニュアルを用いたワークショップ

<図2 マニュアルを用いたワークショップ>

初動対応に係る図上訓練

<図3 初動対応に係る図上訓練>

 

(3)研修・訓練の成果及び課題

 今回の研修・訓練により、災害廃棄物処理の初動で必要な役割と対応について理解を深めるとともに、災害時に想定される様々な状況に対して、マニュアルをどのように活用するかを確認することができました。また、平成30年7月豪雨の対応事例の情報交換や図上訓練を通じて、県と市町、業界団体で顔の見える関係となり、今後の災害時における支援要請等がスムーズに行える関係の構築に繋がりました。

 研修・訓練後の意見交換では、「島しょ部における孤立時の対策や、ごみ処理施設と本庁との情報伝達の方法の検討など、各市町の実情に応じてマニュアルをカスタマイズしていく必要がある」といった意見が上がっていました。

 今後は、習得した知識や過去の災害で得られたノウハウを継承していくための継続的な取り組みや、災害廃棄物処理経験の少ない市町が自市町における災害廃棄物対策を考えていくための実践的な知識の習得などが必要であると考えています。

アンケート集計結果1アンケート集計結果2アンケート集計結果3

 

(1)1日目、午前中の講演とワークショップを通じて、平成30年7月豪雨における災害廃棄物処理の特徴や対応のポイントが理解できましたか。

 

 

(2)2日間の図上訓練及びワークショップを通して、災害廃棄物処理に係る初動対応の流れを理解できましたか。

 

 

(3)2日間の図上訓練及びワークショップを通して、初動マニュアルの内容を理解できましたか。

 

<図4 アンケート集計結果>

4 今後の取組

 対応力の向上やノウハウの継承のため、定期的に研修・訓練を実施するとともに、机上の研修のみでなく、現場対応に係る実践的な知識の習得を目的として、初動対応で特に重要となる一次仮置場の設置・運営に係る模擬訓練を行う予定です。あわせて、各市町の実情に応じた市町版マニュアルの作成を支援するなど、今後とも、市町と連携しながら、処理体制の強化を継続的に図っていきたいと考えています。

関連資料

一次仮置場の設置運営に係る手引き(令和2年6月 広島県)

  • 災害発生時に、各市町において速やかな一次仮置場の開設が可能となるよう、一次仮置場を設置し運営する手順を取りまとめた、「一次仮置場設置運営の手引き」を策定しました。(本手引きは、基本的に、「広島県災害廃棄物処理計画」及び「災害廃棄物処理に係る市町等初動マニュアル」のうち、仮置場に関する部分を引用しつつ、より具体的に必要となる事項について追記したものです。) ※広島県HPより抜粋
  • 当プラットフォーム上でも同じ資料を掲載しています。
    処理計画>テーマ別参考資料集>仮置場
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