貴田晶子(きだあきこ)
国立大学法人 愛媛大学 農学部非常勤講師 (広島県出身)
(2017/12/28掲載)
災害廃棄物に関わったきっかけ
東日本大震災です。国立環境研究所退職後でしたが、若手研究者が被災地での自治体支援に携わるなかで、廃棄物資源循環学会・国立環境研究所が積極的な関わりを持つ中での必然的なものでした。
もっとも強く印象に残ったこと
個人的なことでは、6月に行った岩手県北部の産業廃棄物焼却施設における調査です。海水かぶりの木材を焼却する際にダイオキシン類発生が問題となり、試験焼却をする中、放射能の調査を行うことになりました。廃棄物・排ガスの放射能測定は初めてのことであり、岩手大学の颯田先生の支援を受けながら、濃度測定及びマスバランスの推定を行い、岩手県に報告しました。不十分な知識のもとでしたが、シュレッダーダストのような不均一な試料の分析に携わった経験からできたものと思います(廃棄物の試験検査が生業である立場から)。発災後1年間は、国立環境研究所を中心にした“こんなときどうする”の質問に対して研究者が意見を出し合ったこと、廃棄物資源循環学会が“社会的貢献・役に立つ研究”を続けたことも重要なことであったと感じています。
現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと
平成27年に災害対策基本法・廃棄物処理法が改正され、その後は各自治体において災害廃棄物対策の計画策定が進められています。広島在住であり、近隣の自治体での策定計画に関与しておりますが、残された課題として処理困難物の対応があります。2005年のクボタショック以来、石綿の課題に取り組んでおり、災害廃棄物となる前の建物等の調査や解体時の課題等を解決すべく努力したいと思っています。環境省が今年9月に発出した災害時の石綿飛散防止マニュアルにおいても、“平時”の対策が重要と記載されており、有害物質対策の観点からも重要と考えています。
災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報
被災した自治体が処理を想定する際に、種々の業界の支援を受けねばなりませんが、どこに連絡すればよいのか、どこが対応してくれるのか、といった具体的な情報がまだまだ十分ではありません。廃棄物処理業以外の団体について情報が欲しいと思います。
その他、災害廃棄物対策に関する思いなど
20代に読んだ本の中で、末石富太郎氏の「都市環境の蘇生」における“廃棄物メガネ”は、特に災害を考える時のキーワードだと思います。災害時は多くのモノがガレキとなります。それをイメージすること、平時においてもそれを意識して生活し、また仕事することが重要だと思います。有害物質中心に研究してきましたが、災害が起こったときに、対処せねばならないことが多々あります。健康被害、環境影響、最少にするための努力を平時に行うことの重要性を感じております。