関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】浅利美鈴(あさりみすず)

浅利美鈴(あさりみすず)

国立大学法人京都大学 地球環境学堂 准教授 (京都府出身)
(2018/4/26掲載)

浅利 美鈴(あさりみすず)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 2011年東日本大震災です。発災直後に廃棄物資源循環学会に立ち上がったタスクチームの一員として、発災後の2週間後から現地に行かせて頂きました。仙台市の支援に向かう京都市(環境政策局)のバスに乗せていただいての現地入りでした。京都市との関係等から、(当時、災害廃棄物については素人の)私が派遣されることになりましたが、現地では、全国の学会員への情報発信と、情報収集のハブ役として活動し、災害廃棄物処理のためのマニュアル開発などにあたりました。

もっとも強く印象に残ったこと

 仙台市では、私たちが到着したときには、早くも仮置場の準備や、仮設焼却炉の検討が進められていました。そこで市役所の方から尋ねられたのは、「焼却炉はどの様式が良いか?」「塩水を被った災害廃棄物はどうしたらよいか」ということでした。即答できず、詳しい学会員の方々とやり取りをして回答したことを覚えています。災害廃棄物は、廃棄物処理・管理に関するあらゆる知識を総動員しなければならないと強く感じました。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 現在は、災害廃棄物の研究が、私自身の研究の柱にもなっています。自治体がいかに効果的に備えることができるか、住民や災害ボランティアの目線からどうか、多角的な視点から検討しています。同時に、災害廃棄物から見えてくる根本的な課題や、平常時との効果的な連携について、より力を入れていきたいと思っています。例えば、災害廃棄物は、災害時にいっきに廃棄物化するために、処理が困難になりますが、災害がおきなくても、いつかは処分しなければならなかったストックというふうに捉えると、空き家問題、高齢化問題、有害廃棄物問題など、様々な問題との接点が見えてきます。それらに事前に備えることが、広義での社会コストを下げられるということを示していければと思います。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 現在、住民や災害ボランティアの方々との連携について検討しており、近くマニュアルのようなものを出したいと思っております。是非、多くの自治体の方々に見ていただきたいです。また、廃棄物資源循環学会においても、災害廃棄物のネットワークを継続的に運用していく予定です。そこには自治体の皆様からのインプットが不可欠ですので、ご参加・協力、よろしくお願いいたします。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 非常に個人的な話ですが、東日本大震災では、多くの自治体の方々と、大変な時間をともにさせていただいたことで、忘れられないつながりができました。今でも何かあるごとにお会いしたり、ご相談したりしています。今後の災害でも、こうした人と人とのつながりに結びつくような支援・受援の輪が広がればと思います。確実に来ると言われている南海トラフ地震や首都直下地震・・・人の輪を広げつつ、地道な準備を継続できればと思っています。

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