関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】平山修久(ひらやまながひさ)

平山修久(ひらやまながひさ)

国立大学法人 名古屋大学減災連携研究センター 准教授 (兵庫県出身)
(2018/12/26掲載)

平山 修久(ひらやまながひさ)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 小生の学術的バックグラウンドは水道工学であり、当時学生であった1995年阪神・淡路大震災から、水道の災害対策をテーマに研究活動を行ってきています。学位論文を取得し、2004年に神戸にある防災研究機関である人と防災未来センターの主任研究員に着任しました。2004年は、佐賀県竜巻災害からはじまり、新潟豪雨など台風10個が直撃し、新潟県中越地震、さらにはスマトラ沖地震津波災害がありました。そのとき、河田惠昭人と防災未来センター長から「君は環境工学だろう。水道だけではなく災害ごみも研究しないといけない」と言われ、災害廃棄物に関する研究に取り組み始めました。

もっとも強く印象に残ったこと

 2011年東日本大震災です。2005年に、スマトラ沖地震津波災害の被災地であるインドネシア・バンダアチェに被災地調査で訪れました。そのときと同じ被災地の風景を、日本で見ることになってしまいました。2004年以降、災害廃棄物量の推定手法の開発など主にマネジメント手法に関する研究を進めていたのですが、東日本大震災では、それまでの自分の研究活動がまったく役に立っていないと悔しい思いをしたことが最も印象に残っています。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 2004年に、小生が災害廃棄物の研究に取り組み始めた頃、我が国で災害廃棄物分野の研究者がほとんどいない状況でした。それから15年余りが過ぎた現在では、災害廃棄物分野がひとつの学術分野として確立されつつあります。
 災害廃棄物対策は、災害時の災害廃棄物を適正かつ迅速に処理する活動を通じて、災害時においても市民や地域の環境衛生面での安全・安心を確保することがミッションとなります。そのためには、地域における環境レジリエンス、すなわち、地域で災害廃棄物という困難を乗り越える力を高めていくことが必要です。今後は、持続可能な社会を目指す環境分野と安全・安心な社会を目指す防災分野とのつながりを、産官学民協働でつくることが必要であり、そのつながりのための場づくりに取り組んでいきたいと思います。また、環境工学の専門家であり、防災学の専門家である災害環境分野の専門家の育成に取り組みたいと考えています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 災害廃棄物処理に関するテクニカルなものだけでなく、防災分野など他分野との協働事例や米国などにおける災害廃棄物対策や統合的な人材育成に関する情報をぜひ災害廃棄物情報プラットフォームで共有していただきたいと思います。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 南海トラフ巨大地震などの国難を克服するためには、廃棄物部局における災害レジリエンスの向上が必要不可欠です。そのためには、廃棄物部局における災害対応の人材育成の重要性を社会で共有し、我が国の制度としての災害廃棄物に関する研修プログラムを構築し、産官学協働での人材育成事業の実装を行い、災害廃棄物対策の主流化を目指すことが肝要であり、その情報基盤としての本情報プラットフォームに大きく期待しています。

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