関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】中山裕文(なかやまひろふみ)

中山裕文(なかやまひろふみ)

国立大学法人九州大学大学院 工学研究院 准教授 (福岡県出身)
(2019/3/29掲載)

中山 裕文(なかやまひろふみ)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 2008年5月に発生した四川大地震について調査するため、中国の同済大学、西南交通大学の協力を得て組織した調査団(日本側リーダー:九州大学 島岡隆行教授)に同行し、現地の被災状況や災害廃棄物処理状況の調査に初めて参加したことがきっかけです。地震により廃墟と化した市街地をあえて復興せずに災害遺構として保存し、別の場所に新たに町を建設するという方策に衝撃を受けたことを覚えています。その後、2011年には東日本大震災、タイ洪水、2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨災害、イラン・ケルマンシャー地震、2018年熊本地震、西日本豪雨等において調査に参加し、災害廃棄物の発生や処理に関する記録を残す作業に参加させていただきました。

もっとも強く印象に残ったこと

 最近の災害廃棄物調査で強く印象に残っていることは、過去に蓄積されてきた知見が、その後に発生した災害に着実に活用されていると実感することです。例えば九州北部豪雨災害では、自治体や関係組織の災害廃棄物担当者が、事前の研修会等を通じて良好な関係を築いていました。発災直後の仮置場を視察したとき、分別配置や被災住民からの廃棄物受け入れ態勢の構築等、初動がとてもうまくいっており、周辺自治体からもすぐに応援がかけつけていたことを覚えています。九州北部豪雨災害の直前にも、熊本地震を経験した自治体職員を講師とした研修会が開催されており、参加していた自治体職員は、発災時には研修で配布された資料が大いに役に立ったと感想を聞いております。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 ドローン、IoT、AI、ビッグデータといった技術を災害時の廃棄物処理にうまく活用するための研究開発や組織体制づくりに関わっていきたいと考えています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 最近では、災害時に仮置場等でドローンを用いた動画撮影や3Dモデルによる廃棄物体積の測量などが行われています。そのようなデータを共有するプラットホームがあればよいと思います。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 多様な専門分野の研究者が、災害対策を通じて情報交換を行い、つながりを持つことができる場が構築されつつあると感じています。例えば、日本学術会議が開催する防災学術連携体のような組織の役割が、今後ますます重要になってくると思います。

スマートフォン用ページで見る