関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】田畑智博(たばたともひろ)

田畑智博(たばたともひろ)

国立大学法人 神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 准教授 (三重県出身)
(2019/9/30掲載)

田畑 智博(たばたともひろ)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 私はライフサイクルアセスメント(LCA)という手法や考え方を用いて、環境的・経済的・社会的に持続可能なまちづくりのあり方を提案することを研究しています。災害廃棄物の研究を始めたきっかけは東日本大震災でした。この時に、防災・減災に関わる研究に何か貢献できないかという意識が芽生えました。その後、南海トラフ巨大地震への対応が極めて重要になっていることを知り、LCAの考え方を使って、南海トラフ巨大地震を事例とした災害廃棄物処理のシミュレーションを実施するための研究プロジェクトを立ち上げました。

もっとも強く印象に残ったこと

 南海トラフ巨大地震で甚大な被害が想定される自治体に聞き取り調査をした際に、「ある地区は平地が多く、且つ高齢者が多い。津波が来ても逃げられないし、逃げる高台もない。高齢者は老い先短いから、逃げても仕方ないと言う」と語っておられたのが印象的でした。自治体は人命・財産の保護が再優先の責務ですが、経済面の課題だけでなく、地域住民の防災・減災に対する考え方の相違にどう向き合うべきか、という重い課題を抱えていることを知りました。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 現在は、研究プロジェクトで得た知見を生かして、複数の自治体での災害廃棄物処理計画の作成に関する協議に参画させて頂いています。研究では、地域特性を考慮した、災害廃棄物の発生原単位の推計方法の確立に取り組んでいきたいと考えています。その一環としまして、高齢者宅における家財の所有量や耐震固定に関する調査などを行っています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 高齢者が多い地域で、自助・共助の観点から、地域住民が災害廃棄物の撤去や運搬にどこまで携わることができるか。被害が想定される地域の高齢化率、住宅の建築構造、耐震化率や家財の耐震固定状況など、事前の災害廃棄物処理量の推計に役立つ情報。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 防潮施設や住居などの耐震補強、家財の耐震固定などの対策は、人命・財産に対する被害の抑制だけでなく、災害廃棄物の発生抑制にも効果があります。処理だけでなく、発生抑制の観点から防災・減災対策を考えていくことが大事だと感じています。

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