関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】吉田登(よしだのぼる)

吉田登(よしだのぼる)

和歌山大学システム工学部 システム工学科 教授 (兵庫県出身)
(2019/12/26掲載)

吉田 登(よしだのぼる)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 2011年8月に紀伊半島を襲った台風12号は、和歌山地域に甚大な被害をもたらしました。当時、災害ボランティアとして現地に赴いた折り、帰路ふと立ち寄った椿山ダムの湖畔で、湖面を覆いつくす大量の流木に目を奪われました。その後、和歌山大学内に発足した災害科学研究センターの活動に携わることになり、災害廃棄物であるダム流木量のモニタリング調査や発生量の推計、活用方策の検討などに関する研究を行うようになりました。

もっとも強く印象に残ったこと

 ダム流木を定点観測し、モニタリング調査を続ける中で、その後も大雨の度ごとに途切れることなく湖面を覆いつくすダム流木を見るにつけ、戦後の拡大造林がもたらした流域の膨大な森林蓄積が改めて印象づけられました。林業の衰退や気候変動に伴い、今後これらの森林ストックはさらにダム流木の発生を加速します。森林を適正に管理することで、バイオマス資源を活用し雇用と産業を創出しつつ災害への耐性を高め、持続可能な中山間地域を共生圏として再構築することがますます重要との思いを強くします。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 現在、災害廃棄物処理計画のための発生量推計に関する研究に取り組んでいます。和歌山といえば、これまでは南海トラフの地震災害を対象とした研究が重要視されてきましたが、頻繁に発生する風水害への対応も大変重要になっています。今後は、風水害に伴う災害廃棄物推計についても取り組んでいきたいと思います。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 災害廃棄物については発災後の迅速な処理を行う観点から、組成や性状に踏み込んだ発生量に関する記録データが乏しく、検証するための情報不足が発生量を推計する方法の開発を遅らせる一因となっています。毎年のように各地で発生する風水害に伴う災害廃棄物のデータを継続して共有していくしくみを整えることが重要であると感じています。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 様々な災害廃棄物の発生を見通し、備えていくことは、適正な処理を越え、さらにはそれらを資源として活用していくことに繋がっていくという意味で、ますます重要な取り組みであると認識しています。災害廃棄物情報プラットフォームの取り組みに期待します。

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