関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】鈴木慎也(すずきしんや)

鈴木慎也(すずきしんや)

福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 准教授 (愛知県出身)
(2020/8/31掲載)

鈴木 慎也(すずきしんや)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 2016年4月に発生した熊本地震の際に、廃棄物資源循環学会九州支部の一員として、D.Waste-Netによる支援チームに参加したことがきっかけです。九州地方では埋立処分に関する研究が盛んで、その当時としても災害廃棄物処理における埋立処分場の役割を再認識するべく実態調査を進めました。その経験も踏まえつつ、学会九州支部メンバーで申請した文部科学省科学研究費「災害廃棄物を受け入れた埋立地の環境リスクの評価」が採択され、災害廃棄物処理に関する研究を本格始動しました。

もっとも強く印象に残ったこと

 2016年5月だったと思いますが、熊本県南阿蘇村付近で土砂崩れが多く発生していた地域を運転中に緊急地震速報が鳴り、「ああ、このまま家族に何も言えずに小宮さん(九州大学)と一緒に死ぬのか・・・。」と嘆いたことです。というのは半分冗談で(半分本気)、被災地の皆様の多くが、いつも明るい笑顔で迎えていただけることです。過去に何度も大きな自然災害に遭遇した日本では、その度に立ち上がって一から積み上げ直していく力強いDNAが国民一人一人に力強く刻まれているのを実感します。支援に入っているはずの私の方こそ勇気づけられます。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 国立環境研究所の多島良氏にお誘いいただき、環境省環境研究総合推進費「災害廃棄物対応力向上のための中小規模自治体向けマネジメント手法の開発」に携わっています。本研究を通しても、また被災地の現場支援に入っても各自治体の担当職員のご苦労を痛感します。何とか研究活動や様々な支援が実を結ぶように祈る毎日です。また、ずっと以前から高田光康氏にお世話になっている「退蔵物」の研究を究めていきたいと考えています。日本の今後の社会を考える上で、極めて重要課題と考えています。
 今後は、学者ならではの視点で、被災地支援の新機軸を提案できるようにしたいです。災害廃棄物処理における「学」の役割、学の貢献とは何か?常に自問自答しながら、何とか世間の皆様に認めていただけるような活動を進めて参りたいと考えています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 現地に支援に入ると、現地だからこそ得られる情報があります。ただし、広域災害の場合には、ともすると近視眼的な情報収集になり全体を網羅する視点が弱くなることも、一方では生じるかも知れません。そのためには個々の取り組みもさることながら、全体マネジメントの機能を今以上に強化する必要があると考えています。
 問題は、それをどのように実現するか?これだけIT等が進化した時代にあっても、情報の共有は意外と難しいものです。現場の第一線には、様々な支援者が入り込み、コミュニケーションをとりながら対応を進めていきますが、ほぼ初対面であることが多いので、ぎこちない笑顔と挨拶から始まります。そうかと思えば、とある組織体の内部事情に少し突っ込んでしまう事実が得られたりして、(仮に情報共有することが最善策だと分かっていたとしても)共有相手の選び方を常に考えてしまうものです。例えば、情報共有に関するそんな課題を上手に乗り越えながら、中枢機能に対しては「今まさに現場で起こっていること」を的確に伝えられる体制を構築することが求められていると思います。
 我々学会チームにスケールダウンして考えても、同様な指摘が成り立つかも知れません。現場の第一線に入り込んで行う支援と、後方支援を上手く組み合わせて、初動時の対応をスムーズにできるようにしたいです。
 ・・・いただいたお題とは少しずれた回答となってしまいました。今共有したい情報としては、2020年7月に熊本県庁に設置された災害対策本部には、新型コロナ感染予防対策を徹底する中、アベノマスクを身につけている人は一人もいませんでした(皆不織布マスクでした)。苦笑

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 私は国立環境研究所の災害廃棄物情報プラットフォームを初めて拝見した際に、内容の充実ぶりに感銘しました。できるだけ多くの関係の皆様に、この素晴らしいサイトの存在を伝えていければと考えています。
 各地の成功事例をもとに、(入退出の動線を含めた)仮置場のレイアウトをデータベース化するとよいかも知れません。ダムカード、ダムカレーなどがダム愛好家を上手に取り込んでコアなファンを定着させたように、災害廃棄物処理の分野でも、仮置場カード、仮置場五目弁当をつくって愛好家を増やしたいです。「木くずをそこに置いたか~」とかつぶやきながら、肉そぼろ食べてみたいです。

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