関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】牧紀男(まきのりお)

牧紀男(まきのりお)

国立大学法人京都大学 防災研究所社会防災研究部門 教授 (和歌山県出身)
(2021/7/30掲載)

牧 紀男(まきのりお)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 阪神・淡路大震災当時は、建築学専攻の博士課程の学生として阪神・淡路大震災後の住宅再建についての研究を行っていた。住宅再建のプロセスを調べる中で公費解体に関心を持ったのが災害廃棄物との最初の関わりである。阪神・淡路大震災後の災害廃棄物処理について調べる中で、がれきをプールに入れて分別をしたことや、がれきを海上の埋め立て地で処理をしたことに驚いたりしていた。

もっとも強く印象に残ったこと

 やはり東日本大震災の災害廃棄物処理。沿岸部に集積されたがれきを丁寧に分別し、高い再利用率を実現したこと。その上で阪神・淡路大震災と同じ3年間で処理を完了した。あと、2019年台風19号の災害廃棄物の処理をボランティアと自衛隊が協力して実施したことにも感銘を受けた。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 環境省の災害廃棄物の検討委員会の委員を仰せつかって、南海トラフ地震時の災害廃棄物処理についての検討を行っている。廃棄物の研究者だけではなく中堅・若手の防災研究者が委員会に多く参加していることが非常に良いと思う。現在、事前復興についての取り組みを南海トラフの想定被災地域で実施しており、災害廃棄物の仮置き場とその後のまちづくりの関係についての整理を行っている。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 阪神・淡路大震災の西宮市の事例について、公費解体された建物の物理的被害と建築年の関係についての分析を行った。それ以外の災害についても物理的被害・建築年と建物解体の関係について明らかにすることで、解体される建物の量をより現実的に推計できるようになるのではと考えている。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 毎年のように水害・地震が発生しており、災害廃棄物についての関心が高まっているように感じている。フェイズ―フリーという考え方があるが、自然災害という非常時でもいつもと同じように「きっちりと分別する」ということを社会の常識とする必要がある。ただ、これは世界的に見るとすごいこと。もっと世界に発信していく必要があると考える。

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