関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】鈴木薫(すずきかおる)

鈴木 薫(すずきかおる)

国立環境研究所 資源循環領域 資源循環社会システム研究室 特別研究員 (埼玉県出身)
(2022/3/31掲載)

鈴木 薫(すずきかおる)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 東日本大震災です。当時私は岡山で低線量放射線のリスクに係る情報共有について調査研究をしており、その関係で福島原発から放出された放射性物質が含まれる廃棄物の仕事に関わらせていただきました。元来人前で話すのが苦手な性分なのですが、ない頭を絞って必死でリスクの分かりやすい伝え方を考え、多くの方々と関わり、助けていただいた日々でした。

もっとも強く印象に残ったこと

 災害廃棄物の処理という点では、東日本大震災で岩手県沿岸部に設置された二次仮置場を訪れた際の、手選別処理ラインの光景が強く印象に残っています。機械で破砕したがれきからコンクリート以外の異物を取り出す工程で、ベルトコンベアの横に立ち防塵眼鏡とマスク姿で黙々と作業をするのは、ほとんどが被災者でもある地元の皆さんでした。プレハブの室内は粉塵がたちこめて、窓からの光がくっきりと白い帯に見えました。ベルトコンベアの騒音で説明する方の拡声器の声も聞き取れないようななか、より分けられた金属や木くずが階下に落とされるカラン、カチン、という音が不思議なほどはっきり聞こえ、今も耳に残っています。
 災害廃棄物の再生利用はとても重要ですが、そのためには大変な手間やコストがかかります。そうした負荷をさらに増やす混廃化をどう避けるか考えるとき、あの時の音を思い出します。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 現在は、高齢世帯が災害ごみの片付けやごみ出しを行う際、どのような課題があるのか、その支援はどうしたらよいかについて調査・研究を行っています。高齢者のみの世帯が増加する中、自助にたよった災害ごみの回収は難しくなっていくことが予想されます。地域での助け合いやボランティアの支援、行政による支援など、共助・公助のあり方を考えていく必要があります。地域社会の状況に対応したよりよい施策検討に役立つような調査を行えればと思います。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 地域住民の皆さんが共同で行う美化活動や防災活動、近所同士の助け合いなど、平時の取組が災害ごみの片付け・排出での助け合いにつながることが期待されます。実際の災害で、地域でどのような助け合いが行われ、なぜそれが可能だったのかなどについて、情報収集していきたいと思います。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 南海トラフ地震や首都直下地震では、被害想定エリアに人口密度が高い都市部が多く含まれます。電車に乗っているとき、高い建物が密集し、道路も狭いエリアなどにさしかかると、そこで災害ごみを集める方法を考えることがあります。都市部は空き地が少ないので、地域の皆さんの応急的な排出場所として街区公園などを想定している自治体も多いですが、大災害時には災害ごみの排出量に対して広さが足りない恐れがあります。混廃化を防ぐため、市民のみなさんに排出日時や方法についてより主体的に協力いただく必要があるだろうし、そのための施策やその実現可能性について検討する必要があると思います。

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