関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】鈴木雄一(すずきゆういち)

鈴木雄一(すずきゆういち)

宮城県東松島市 建設部下水道課 経営班 班長 (宮城県出身)
(2019/1/31掲載)

鈴木 雄一(すずきゆういち)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 平成21年度から2年間の予定で宮城県の環境生活部に派遣され、一般廃棄物の3Rに関する業務を担当していました。
 東松島市に戻る直前、平成23年3月11日に東日本大震災が発生し、戻ると環境課に配属されました。
 当時の職員は、自身も被災者であったことや、昼夜を問わず様々な災害対応に追われていたこともあり、通常業務とは大きく異なる災害廃棄物処理事業に手を付ける余裕がありませんでした。そのような中、戻ったばかりで、気力、体力が残っていたことから、自発的に担当したように記憶しています。

もっとも強く印象に残ったこと

 本市を襲った10mを超える津波は、沿岸部の住宅地を壊滅させ、そのまま内陸2kmまで浸水しました。
 災害廃棄物の発生量は3,259千トン(内津波堆積物2,161千トン)で、本市の一般廃棄物の年間発生量300年分以上に相当します。
 市内に散乱したガレキや津波堆積物は、一刻も早く撤去する必要がありましたが、行方不明者の捜索を何よりも優先したこと、資材や燃料の不足、また、災害廃棄物処理事業を担当する東松島市建設業協会42社の全てが被災していたこともあり、発災初期は、被災者の求めるスピードに対応できませんでした。その時の歯がゆさを、鳴りやまない電話の音と共に覚えています。
 また、本市では、仮置場への戸別回収を行っていましたが、被災者の方々の多くが、分別を徹底していました。災害中の混乱期においては、モラルハザードが起こりがちですが、本市においては、そのような事はなく、分別した状態で仮置場に搬入することができました。
 本市の災害廃棄物処理事業は、発災初期から分別を徹底したことによるリサイクル率(99%)の高さと、処理費用の削減に成功した成果と合わせ、「東松島市方式」として広く発信しているところですが、結局のところ、被災者一人一人の意識の高さに支えられたものであったと感じているところです。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 東日本大震災での成功や失敗は、今後の災害対応において、非常に貴重な経験であったと考えています。現在は、その経験について、広く発信することに努めており、今年6月には、消防庁が主催する災害マネジメント総括支援員研修で説明する機会をいただきました。
 本市には、全国の自治体の方々から、未だ多くの支援をいただいていますが、支援職員の方々を対象に、災害廃棄物処理事業の研修会を行っているところです。災害の種類や規模、被災地の地域性等、全てが大きく異なる中で、どうすれば被災者の期待に応えることができるのか、私自身未だ勉強中ではありますが、今後も東日本大震災での経験について、伝えていければと考えています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 被災地への支援方法についても検討が必要であると感じています。
 支援物資やボランティアについては、その在り方への議論が進んでいますが、災害廃棄物処理事業に関しても、検討すべき点があるように感じています。
 東日本大震災の際にも、様々な専門家や経験者が突然被災地を訪れ、一方的に担当者への助言等を行う事案が散見されました。
 支援はありがたいものですが、様々な災害対応に忙殺されている担当者を拘束することは、被災地にとってプラスには働きませんし、与件で対応せざるを得ない状況や地域性、災害の種類や対応事項の優先順位を無視したものでは、意味がありません。
 このような点を踏まえ、今後は、災害廃棄物処理事業における支援と受援の在るべき姿について検討して、発信していくことが、必要になってくると感じています。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 災害廃棄物は、単純に燃やして埋めれば、早く、場合によっては費用も軽減できるかもしれませんが、それでは単なるゴミ処理でしかありません。
 元々は、住民の財産であり、思い出や歴史であったものです。例えば、分別を徹底し、多くのものをリサイクルする事ができれば、倒壊した家屋や、思い出の品も、新しく生まれ変わり、復興の礎になったと感じることができるかもしれません。
 また、仕事を失った方々を仮置場等で雇用すれば、生活を支えることができますし、休憩時間などに被災者同士が他愛もない話をすることで、新たな一歩を踏み出すきっかけを見つけることができるかもしれません。
 もしかしたら、分別等の取組が評価されて、そのことが報道されれば、被災した方々の不安を拭い、復旧復興に向けた希望が芽生えるかもしれません。
 災害廃棄物処理事業は、発災後、復旧復興に向けて立ち上がる、最初の大規模公共事業です。だからこそ、被災した方々に明日への希望を抱かせ、誇りを取り戻す役割をも担っており、また、その期待に応えることが充分可能な事業であると考えています。

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