荒井和誠(あらいかずみ)
東京都環境局多摩環境事務所 廃棄物対策課長 (大阪府出身)
(2019/5/31掲載)
災害廃棄物に関わったきっかけ
東日本大震災が発生した平成23年3月11日当時、私は、東京たまエコセメント化施設(焼却残さ焼成施設:330トン/日)のごみ処理技術管理者、電気主任技術者等を担当し、その後、3月末までの7回にわたる受電電圧6万Vの計画停電を対応していました。そして、翌月の4月に東京都環境局廃棄物対策部(当時)に異動なり、都内ごみ処理施設で災害廃棄物処理を支援する特命を受け、広域処理を受ける立場で関わることになりました。
また、平成25年10月16日、台風26号に伴い東京都大島町で土石流災害が発生し、その災害廃棄物処理に係る都道府県事務としての市町村に対する技術的な援助、地方自治法の事務委託を受けた島外処理(東京都受託分)を担当し、災害廃棄物処理に係る都道府県事務、市町村の実務者としても関わりました。
もっとも強く印象に残ったこと
宮城県女川町災害廃棄物を都内清掃工場で処理するために開催した住民説明会です。この時期には、放射能汚染を懸念する方々から、抗議や苦情の声が寄せられ、時には罵倒され、ツイッター等のSNSに名指しで誹謗中傷を受けました。そうした中で、東京都職員として、都民の生活環境を第一に考え、被災地において、都内清掃工場で安全に処理するための徹底した分別、3回にわたる放射能測定等について、粘り強く、何度も説明を尽くしてきました。
そして、広域処理が始まってからは、都内に災害廃棄物が到着する前までに、放射能測定の結果を東京都ホームページで公表し、宮城県女川町の災害廃棄物には放射能汚染がないことを伝えました。
現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと
東京都多摩地域(八王子市を除く。)における一般廃棄物処理施設の許認可権者として関わっています。また、直近では、環境省及び広島県からの要請を受け、平成30年7月の西日本豪雨災害に伴う災害廃棄物処理の初動対応として、広島県庁に2週間常駐し、県の災害廃棄物発生量の推計や処理実行計画の策定等の支援を行いました。さらに、応急対策期には、広島県市町に対する災害等報告書の作成支援等を、都内市町村と連携して進めました。
今後、何時どこで起こるかわからない地震や水害等で発生した災害廃棄物の処理には、これまで培った経験やノウハウ等を生かし、被災自治体を支援していくとともに、こうした取組を後輩職員等とともに活動して、次の世代に継承していきたいと思っています。
災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報
一定規模以上の処理能力を有する、災害廃棄物処理が可能な民間の中間処理施設及びその連絡先、輸送手段等の情報を国レベルで整理し公表してほしいです。例えば、災害廃棄物処理実績を有する民間の中間処理施設を、地図上でわかりやすく整理したものを、公開する形でも結構です。
また、共有したい情報としては、東日本大震災での広域処理、大島土砂災害で発生した災害廃棄物処理の経験です。東日本大震災の広域処理については「東京都災害廃棄物処理支援事業記録」(平成26年3月)、大島の災害廃棄物処理は「大島町災害廃棄物処理事業記録」(平成27年3月)にまとめたものを、東京都環境局のホームページに公開しております。
その他、災害廃棄物対策に関する思いなど
平成23年度から東日本大震災災害廃棄物の処理を支援する立場で関わり、平成25年10月の大島土砂災害では当事者として、そして、平成27年9月に、関東・東北豪雨災害に環境省の災害廃棄物対策の検討会ワーキング委員としての初動対応の支援、平成30年7月西日本豪雨災害では、環境省及び広島県からの要請を受け、広島県庁の初動対応と応急対策期の災害等報告書の作成支援等に関わってきました。このように長年の災害廃棄物対策を経験してきた中で、様々な方々と知り合う機会がありました。直近では、平成30年7月に広島県庁で、関東・東北豪雨災害の災害廃棄物処理を邁進していた常総市役所の担当者と会い、その担当者の貴重な経験を踏まえた、臨場感のある支援に繋がりました。
振り返ってみると、災害廃棄物対策での人的なつながりが、災害発生時の初動対応においては貴重なものだと感じます。また、これまでのリレー寄稿を見て感じたこととして、災害廃棄物処理を経験した者が集う機会があれば、人的なつながりの幅が広がり、災害廃棄物対策の底上げになるのではないかと期待しております。
これからも、災害時のみならず平時でも、災害廃棄物対策を一歩でも先に進められるように、これまで培った経験、知見、ノウハウを惜しみなく提供し、継承できるように、今後も努力を続けていきたいと思います。