関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】岡田誠司(おかだせいじ)

岡田誠司(おかだせいじ)

広島県環境県民局循環型社会課 課長 (広島県出身)
(2020/5/29掲載)

岡田 誠司(おかだせいじ)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 平成30年4月に広島県の循環型社会課に異動になり、その3か月後の7月に、西日本豪雨災害が発生しました。
 災害廃棄物は、一般廃棄物に区分され、処理の主体は市町村ですが、大規模災害では、市町村を支える県の役割が非常に重要になってきます。
 発災直後から、環境省や東京都をはじめとした他県の皆さまなどのご支援をいただきながら、ごみ処理施設の被害、災害廃棄物の発生量、仮置場の設置、ごみの収集など、様々な情報を収集しながら、最前線で対応にあたる市町を支援してきました。
 また、発災1か月後には、県として災害廃棄物処理の基本方針を示し、2か月後には、県の災害廃棄物処理実行計画をとりまとめ、災害廃棄物処理の見通しを示すことができました。
 県と市町が一体となって、処理を進めた結果、令和2年3月末には、処理進捗率が99.9%と概ね処理が完了し、二次仮置場はすべて解消されました。

もっとも強く印象に残ったこと

 平成30年7月豪雨災害は、これまでに本県が経験したことのない規模の災害であり、災害廃棄物処理についても、何をどこから始めればいいのかわからず、困惑していました。こうした中で、発災直後から、環境省、D.Waste-Netの皆様が支援に入っていただき、現地確認、仮置場の設置・運営、処理方法などの実務の他、県の役割など、数多くの助言をいただきました。
 中でも、東京都の皆様には、発災直後から処理が軌道にのる8月末まで、支援をいただいただけでなく、補助金申請に必要な災害報告書の作成が佳境にかかった10月にも、都内の市区町村職員の皆様とともに、ご支援をいただきました。
 廃棄物処理業者の皆様には、県との協定に基づき、率先して市町の災害廃棄物の収集や処理を支援していただきました。また、発災直後に仮置場に積みあがった混合廃棄物を、緊急対応として、県外で処理していただきました。
 こうした皆様の支えがあって、なんとか初動対応が進み、災害時における支援がいかに大切かを痛感しました。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 平成30年7月豪雨災害において、初動対応の重要性を痛感したことから、令和元年5月に、災害廃棄物処理に係る初動マニュアルを作成し、このマニュアルを教材とした初動訓練を実施しました。
 市町における災害廃棄物処理計画の作成も、本年6月には、100%となる見込みであり、今後は、市町版の初動マニュアルの作成を支援していきたいと思っています。
 また、一次仮置場の設置が大きな課題となることから、一次仮置場設置の模擬訓練も実施したいと考えています。
 今後とも、市町と連携し、初動マニュアルをバージョンアップしながら、処理体制の強化を継続的に図っていきたいと考えています。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 災害時には、被災状況をできるだけ早く収集することが重要です。最近では、デジタル技術を活用した情報収集も可能になっていると思います。災害時において、防災や土木に関する部署を含め、どのような情報収集が可能なのか、それは、災害廃棄物処理にどう活用できるのかといった情報があると助かります。
 また、災害廃棄物処理の実務では、一次仮置場や二次仮置場について、設置・運用の事例、課題となったことや改善方法などを共有したいと思っています。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 災害廃棄物の処理は、環境セクションの仕事の中でも、応用編になると感じています。災害の種類、規模、被害状況など同じものはありません。日々刻々とかわる状況にどのように対応するのか。前例のない中で、廃棄物処理法や指針、通知、マニュアル、計画、補助制度等との整合を図りながら、判断を積み重ねていくためには、日ごろから基礎的知識を習得しつつ、全国各地の事例を学び、助け合うことのできる人的ネットワークを構築することが重要です。
 広島県では、平成26年に広島市において、大規模な土砂災害がありました。そのわずか4年後の平成30年に西日本豪雨災害が起きています。全国でも毎年のように大規模な災害が発生しています。気候変動への適応策としても、災害廃棄物の処理は、環境行政の主要な分野となっています。
 かつて全国で産業廃棄物の不法投棄が多発した際、環境省において産廃アカデミーが開講され、現在まで、毎年、全国の仲間が一同に会して、研鑽を重ねてきています。現在の災害廃棄物についても、こうした継続的な全国研修の仕組みが創設されることを期待しています。

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