関係者とつながるリレー寄稿Stakeholders network 人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める

【リレー寄稿】河辺尚佳(かわべなおよし)

河辺尚佳(かわべなおよし)

岡山県環境文化部 循環型社会推進課 災害廃棄物対策室 総括副参事 (滋賀県出身)
(2020/11/30掲載)

河辺 尚佳(かわべなおよし)

災害廃棄物に関わったきっかけ

 岡山県に入庁後、大気や水質保全、産業廃棄物対策に携わってきましたが、災害廃棄物対策には縁がありませんでした。
 岡山県は「晴れの国」とも呼ばれる災害の少ない地域ですが、平成30年7月豪雨では、今まで経験したことがない大きな被害が発生しました。
 特に、倉敷市真備町では、5mを超える浸水により道路沿道や高架下は災害廃棄物が山積みになり隣接する総社市とともに混乱を来し、市単独での処理が困難な状況になりました。
 このため、平成30年8月28日、地方自治法に基づき、県が両市から処理事務を受託し廃棄物を代行処理することになりました。
 私は、8月29日、新設された災害廃棄物対策室に異動し、代行処理業務に取り組んできました。

もっとも強く印象に残ったこと

 処理の現場では、日々課題が発生し、一つとして容易に解決できるものはなかったため、県庁から車で1時間半かかる仮置場に休日・夜間を問わず出向きました。
 中でも、発災直後に被災地で山積みされた片付けごみが混合廃棄物化したため、その処理には悩まされました。
 当初、7万トン余と推計した混合廃棄物は、13万トン以上に膨らみ、浸水による付着土砂は想定以上に固着、新たに整備した中間処理施設での選別処理も難航しました。
 処理業務は、14社で構成する共同企業体に委託しましたが、平時は許認可権者と事業者の関係である県と処理業者がお互いに知恵を出し合い、試行錯誤しながら、中間処理施設を基軸に、移動式施設も追加した上で処理フローを再構築するなど、同じ目標に向かい手を携え取り組んだことで、目標期限内での処理完了という成果を得ることができたことはかけがえのない経験でした。

現在の災害廃棄物対策との関わりや今後取り組みたいこと

 令和2年4月16日に県代行処理分を処理完了、そして同年6月17日には県内の被災市町村が全て処理完了し、平成30年7月豪雨で発生した災害廃棄物は発災後2年間で全て処理を完了するとの目標を達成することができました。
 現在は、その経験を記録誌として取りまとめるとともに、来る次の災害に備え、市町村と処理業者団体との連携強化など初動対応体制の整備に取り組んでいます。

災害廃棄物対策に関して欲しい情報、共有したい情報

 発災から半年間は、災害廃棄物の搬出先処理業者と、道路や河川等の復旧工事により発生する産業廃棄物の処理業者が重複するなど、県内事業者の処理能力が飽和状態となり、仮置場の木くずなどの搬出先確保に困難を極めました。
 しかし、県や委託共同企業体のネットワークで確保した県外の処理業者への搬出を進めたことにより、仮置場の閉鎖といった最悪の事態は避けることができました。
 結果的に、搬出先は中国・四国ブロックにとどまらず九州地区の処理業者にまで及びました。
 災害時には、速やかに広域処理に移行できるよう、まとまった量を継続的に受け入れできる処理業者の情報を広域的に共有することは不可欠だと考えます。

その他、災害廃棄物対策に関する思いなど

 災害はいつ、どこで、どう発生するのか予測できず、突発的に発生するため、事前準備もできないことから、日頃から、災害廃棄物処理計画の策定や対応マニュアルの整備のほか、本県が協力協定を締結する県産業廃棄物協会と市町村の顔の見える関係づくりなど、対応体制の強化に取り組むことが重要です。
 一方で、どんなに準備しても、発災時の現場に想定どおりのことは何一つなく、その時々の状況に応じた柔軟かつ機敏な対応や判断が求められます。
 固執した考えや数時間の判断の遅れは、災害廃棄物の不要な滞留を招き被災地の人命救助や復旧活動に大きな支障を来すことになることからも、強い使命感や責任感を礎とした個の対応力の底上げが急がれます。

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