倉敷市環境局資源循環部資源循環推進課 大瀧慎也氏

2026年4月
目次
3.受援マニュアル策定のポイント
(1)受援体制の整備
(2)支援要請の方針
(3)支援要請の方針
(4)支援要請の実務
(5)受入れ環境の整備
1.平成30年7月豪雨時の状況
平成30年7月豪雨災害では、発災前から多くの住民が避難所での避難生活をしていたが、発災直後からは避難者の数は劇的に増加し、災害関連業務が次々と発生した。その影響は環境部局にも及び、通常業務や災害廃棄物処理対応に優先して、全庁的な庁内応援体制への協力が求められることとなった。
その際、環境部局からも多くの人員が招集され、残った人員の多くは混乱した現場へ出向いて対応することで、内部のマネジメントが手薄となっていた。人員補充を急ぐあまり、必要人員を精査しないままに派遣要請を行い、派遣されてきた支援職員へは指示ができず業務を任せきりにするなど、指揮命令系統は徐々に崩れていった。
いったんこのような状況下に陥ると、それに対応するための対策を講じることは非常に難しく、職員が適切に役割を果たすことができずに、時間だけが経過することとなる。
2.受援マニュアル策定に至る経緯
この経験を踏まえ、地域防災計画の改定時に、大規模災害時における災害廃棄物処理業務の重要さを防災部局と共有し、廃棄物部局の担当者が発災後に災害廃棄物処理に集中できるよう災害廃棄物処理を地域防災計画に明記することとした。
次に、廃棄物処理事業業務継続計画(BCP)を策定し、組織体制の構築、指揮命令系統の明確化するとともに、災害廃棄物処理初動マニュアルを策定し、業務ごとの初動時の民間事業者等との連携開始の手順や作業フロー等を明確にした。
ただ、このままでは受援体制が十分ではなかったことにより支援の力を十分に活かすことができなかったことに対する課題が残るため、このたびの災害廃棄物処理計画の改定にあたり、平時から国及び都道府県、市区町村及び指定地方行政機関等(以下「支援団体等」という。)への支援要請に関する作業の標準化を図るとともに、受援体制を構築するための具体的な手引書として倉敷市災害廃棄物処理受援マニュアル(以下「受援マニュアル」という)を令和8年3月付で策定し、受援体制の整備を行った。
そして、倉敷市災害廃棄物処理計画、倉敷市廃棄物処理業務継続計画(BCP)を補完するものとして計画の体系に位置付けた。
3.受援マニュアル策定のポイント
受援マニュアルの作成にあたり全国の計画・マニュアル策定の状況を調べてみたが、災害廃棄物処理に関するものはほとんど見当たらなかったため、内閣府(防災担当)の「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン(平成29年3月)(以下「ガイドライン」という。)」を参考にすることとし、平時から本市の受援に関する考えを「明確化し、共有できている」状態をあるべき姿とイメージし、まずは全体的な構成を決定し章立てを行った。その際、現時点での民間事業者等との連携状況や職員の災害対応力(スキル・人員等)の分析をしっかりと行いながら作業するよう心掛けた。
主な構成は、(1)受援体制の整備、(2)支援要請の方針、(3)受援対象業務、(4)支援要請の実務としたが、その概要は次のとおりである。
(1)受援体制の整備
大規模災害の初動時においては被害状況の全容が不明確で、要請が必要な業務内容や要請する人数の見通しを立てることが困難であり、積極的な要請を行うことができなくなることが想定される。このような状況下では、担当者の実態を把握していない意思決定者自らが支援要請の要否判断を担当し、トップダウンで命令を下す傾向が見られる。
支援の必要性の判断に際しては、多くの情報を持っている業務担当者が受援という選択肢があるということを常に認識しておくこと、及び業務担当者のニーズを正確に拾い上げることが重要である。そこで、意思決定者と業務担当者との調整役となる受援担当者(窓口)の役割が鍵となると考え、平時から受援担当者を特定するとともに主な役割を明記し、災害時には窓口担当者を一本化し速やかに内外に周知できるよう整理した。
(2)支援要請の方針
支援の要請を検討するには、速やかに支援されている状況をイメージできることが必要である。そこで、支援をイメージしやすいよう、ノウハウ(災害廃棄物処理に関する知識)の提供と、人的資源(作業スタッフ・技術職)の提供の2種類があること、発災直後の短期的なものと中長期的なものがあること等を示した。併せて支援の概要を明記した。
また、イメージするためにはどこの団体から来ていただけるのかが大きな要素となるため、支援の区分と要請先を一覧表にまとめた
なお、そこには要請する際の窓口となる要請先を記載し、速やかに相談を開始できるようにした。
(3)受援対象業務
ガイドラインでは、あらかじめ受援対象業務を特定しておき、その業務の具体的内容を整理し、支援側に依頼する範囲を明らかにしておくことで、実効性が高まると記載されている。
そこで、受援マニュアルの作成にあたり「自分たちでできること」と「できないこと」の整理を行った。整理に際しては、ノウハウの不足とマンパワーの不足の両方の側面から自己分析を行った結果、受援の中心となる業務は公費解体であることが分かった。
そこで、公費解体事業については、特にその業務内容を因数分解しタイムラインで見える化を行い、受援対象の想定を特定した。
(4)支援要請の実務
支援要請の流れを(1)庁内応援の要請、(2)受援業務、人数の決定、(3)支援の種類、期間の決定、(4)支援の要請、(5)支援の受入、(6)受援の開始(調整会議の開催)、(7)支援職員の交代、(8)支援の終了の8つのステップでフローにまとめるとともに、ステップごとに詳細事項を整理した。
本章は、受援担当者及び業務担当者が担う業務を標準化した手順書として、平時から読み込むことで実務の流れを理解しておくことを想定しまとめた。
(5)受入れ環境の整備
災害時に支援職員等を円滑に受入、効果的に支援活動を行っていただけるよう、執務場所、物品・資機材、宿泊場所についてまとめた。
特に、人的支援を受け入れるにあたり、支援には終わりがあることも常に念頭に置き、支援職員等の助言を受けながら、本市のみで災害対応業務が遂行できるよう目指すことが重要であると実感している。また、支援者の座席の配置や本市職員とのペアリング等、ちょっとした工夫で大きな効果が得られるため、そのような要素を引き続きマニュアルに反映させていくことで実効性を高めていくことを期待する。
4.支援要請シート
受援マニュアルの本編では、人的支援の受入に係る役割の明確化や受援対象業務等の特定、受入れ手順等の標準化を行ったが、受援体制をより効果的・効率的に機能させるためには、迅速に支援要請できる準備として、支援要請シートの作成が重要であると捉え、平時においては、業務の担当者、業務の概要、支援職員などに要請する業務などを明確化するとともに、執務スペースや、必要な資機材などを整理し、受援対象業務ごとにまとめた。
また、災害時においては、調整窓口の担当者や支援を検討している団体等が支援の決定を行う際に参照する資料として、また、受援担当者が受入環境の整備を行うために確認、調整する資料として活用することを想定している。
なお、受援担当者が発災後に支援要請を行う際は、「支援要請シート」を基に、業務担当者と業務内容の確認・調整を行い、発災後の状況に応じて修正のうえなるべく早い段階で要請先(調整窓口)の担当者へ伝達するよう努める。
収集運搬 支援要請シート
(倉敷市災害廃棄物処理受援マニュアルp.17)
5.マニュアルの形骸化を防ぐために
本マニュアルを策定することにより、受援に対する方針や受援につなげる具体的な手順の明確化への課題は改善が図られると感じている。しかし、本マニュアルが内部で十分に共有されなければ、いざという時に機能しない。
ガイドラインにおいても、計画やマニュアルの策定だけでなく、研修や訓練を通じて実効性を高めることの必要性を強調している。
そこで、訓練を通じて受援の意思決定や手続きを模擬体験することで、担当者がイメージを高めていくことが重要である。
このような地道な取り組みを広げれば広げるほど、災害発生時にできることの選択肢が広がり、そのことが、災害対応力を高めていくということにつながると期待している。