災害廃棄物情報プラットフォーム編集部

2026年3月
目次
1.災害廃棄物情報交換会について
災害廃棄物対策の取組みやアイディアを共有しつつ、関係団体同士の緩やかなつながりを作っていくために、国立環境研究所では「災害廃棄物情報交換会」を開催しています。令和7年度は、「都道府県による市町村への支援のあり方」をテーマとして、第2回は話題提供として事務委託の判断に関わるモデル、都道府県アンケート結果の紹介の後、災害廃棄物処理に係る事務委託に関する議論の継続と都道府県の災害廃棄物処理計画の実効性向上等について意見交換が行われました。
| 災害廃棄物情報交換会(令和7年度第2回) | |
|---|---|
| 日時 | 2026年2月2日(月曜日)13:30 ~16:20 |
| 場所 |
廃棄物・3R研究財団大会議室/Webハイブリッド開催 |
| 出席者 (敬称略) |
座長 鈴木 慎也 福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授 委員(氏名五十音順) 石田 陽子 広島県 環境県民局循環型社会課課長 片山 啓示 岡山県 環境文化部循環型社会推進課課長補佐 佐藤 尊秀 岩手県 環境生活部資源循環推進課資源循環担当主査 庄子 克巳 宮城県 環境生活部廃棄物対策課課長 山本 充巨 富山県 生活環境文化部環境政策課副主幹(災害廃棄物担当) オブザーバー(氏名五十音順) 岩嵜 享史 宇治市 まち美化推進課ふれあい啓発係主査 宇田 仁 中間貯蔵・環境安全事業株式会社 後藤 潤 延岡市 市民環境部資源対策課 瀬古 智秀 南伊勢町 子育て・福祉課課長 半澤 大 館山市 市民生活部危機管理課係長
国立環境研究所 廃棄物・3R研究財団 |
2.意見交換会の成果
話題提供
(1)事務委託の検討判断について
第1回の情報交換会をふまえ、以下のような場合において、都道府県へ事務委託して災害廃棄物処理を行う判断に至るとの認識が共有されました(図1)。判断する上で重要な論点は、A.本格的な(仮設処理プラントのような)二次仮置場の設置有無、B.被災市町村の対応能力、の二つがあるという整理です。
Aについては、その背景に以下の状況が存在するという議論がありました。
- 災害廃棄物が著しく混合し、選別のために二次仮置場の設置が必要な場合
- 災害廃棄物の発生量と県内の処理能力を比較したときに、想定される期間内に処理しきれない場合
- 被災市町村の数や密集度を踏まえ、二次仮置場を設置して一体的に処理する方が効率的な場合
また、Bについては、以下の点が影響するという議論がありました。
- 市町村の庁舎や職員の被災状況が著しい場合
- 被災市町村の平時の対応能力がそもそも足りていない場合
図1 第1回情報交換会における議論のまとめ
上記の整理をふまえ、発災後の早いタイミングで発生量推計値を得た段階で、事務委託をどの程度真剣に検討すべきかを判断・説明できるようにするための統計モデル(Firth補正ロジスティック回帰モデル)について、国立環境研究所より話題提供がありました。具体的には、事務委託に至った35事例と市町村が自前で処理を行った476事例について、災害廃棄物の負担に関する指標(災害廃棄物等発生量など)と平時の対応能力に関する指標(廃棄物担当職員数など)を用いて検討した結果、予測性能の高い2つのモデルが得られたとの報告でした。
- 人口あたりの災害廃棄物量と県内処理業許可数で推定するモデル
- 災害廃棄物平時換算年数と人口で推定するモデル
これにより、事務委託に至る確率を表現し、「次の災害」において事務委託を検討すべきか否かの判定を支援する判定図が作ることが可能であることが紹介されました。運用にあたっては、判定図を目安にしつつ、個別の状況を加味して事務委託を判断することが必要との考え方も示されました。
Q:中核市、一部事務組合というくくり方をするとどうでしょうか。
A:人口規模で解析しているため大きな変化は出ないが説明しやすくなるかもしれません。
Q:このモデルを誰がどう使うか。災害前に都道府県の心構えとして使うこともあると思いますが、発災時使うのであれば定量的な点と定性的な合わせ技で使う必要があると思いました。だいたいのゾーン分けを定量的に行ったうえで、チェックボックスで実態を確認して事務委託の緊急度を判断するなどできるとよい。
A:たしかにおおざっぱに分けた中、個別に判断する必要がある。この図は使う意図によって線の引き方が変わり得るので、判定図をどう使うかについて、どういう趣旨の図なのかきちんとお伝えしないといけないとも感じました。
コメント:南海トラフ地震や首都直下地震でどの市町村が事務委託になる可能性が高いから、○○県では覚悟して準備が必要などに使えるように思い興味深い。
(2)都道府県における災害廃棄物処理支援に関する調査結果
大正大学教授岡山朋子氏と国立環境研究所高田光康氏の共同で、都道府県の災害廃棄物対策に関するアンケート調査しました(2022年廃棄物資源循環学会発表)。発生量推計、補助金事務については、どの都道府県も支援の可能性高いと回答しています。支援要請の有無に関わらず人的支援を行うと回答したのは5県、収集運搬戦略立案、仮置場、し尿処理は重要と思っても支援に自信が無いと回答した都道府県が多かったという結果でした。
全体討議
(1)事務委託の要請にNoと判断する根拠や材料について
都道府県の立場から
・市町村から事務委託の要請があった場合に、県はNoと言いづらいとは思いますが、令和7年の林野火災では単独の自治体範囲内で被害が収まり、これは県が事務を受託するメリットは薄まると思います。県が受けることで広域処理などにメリットはありますが、事務委託受けることで事務が煩雑になります。また、都道府県はし尿処理・一般廃棄物処理を行っておらず、収集運搬などを県が市町村と同様に実施できるかというと準備が不足しているため自信はありません。事務委託は広域的な被害であれば検討に上がるかと思います。
・先の国環研の説明にあったように事務委託の要請があった時に、判断要素として被災自治体数と密集度、災害廃棄物量、二次仮置場設置必要性、処理能力があり、県が出ることが適切かどうか、事務委託が効率的かどうかがあります。また、データ上に表れないような事業者との関係性や災害廃棄物処理の経験値を含めて、他に解決策があれば事務委託をNoということもあるかと思います。
市町村の立場から
・市町村同士で県に相談に行きましたが、県が事務委託を受けてくれずに困った経験があります。市町村は住民対応をしているため、事務委託を都道府県にお願いする場合、その時点で無理と言わないでいただきたい。ただ、先が見えれば県の協定を使って事業者等と連携して、市町村が自前で対応できるかと思います。
(2)適当な災害廃棄物処理期間について
過去の経験から
・東日本大震災では、県内業者で時間をかけて処理すればよいという意見もありましたが、被災地の復興や被災住民の感情を踏まえ、また国庫補助制度が3年で運用されていたため、3年間としました。廃棄物を置ける場所が生活空間から離れていれば、4~5年でも許容されると思います。
・逆に、阪神淡路大震災では3年間は長いようで短かった。神戸市は単独で仮設処理施設を設置して処理しましたが、仮設炉、破砕選別施設を設置するためのアセス、手続きなど実際に稼働するまでに半年以上かかってしまい、補助金の期限が3年間となると、3年目には施設を撤去して原状復旧のための補助金ももらわなくてはいけないため、施設が稼働している期間は実質1年半、その期間で処理しなければなりません。そのため、巨額の費用が掛かる施設が必要となり、もっと期間が長くてよいのであれば小さい施設で済みます。処理を急ぐことで、大きな金額を要してしまう側面もあります。
・熊本地震でも二次仮置場が稼働したのは12月で発災から8か月要しました、処理期間は東日本大震災より短い2年間を目標とし、行政事務の負担は相当大きかったと思います。
被災住民への配慮の観点
・処理期間3年は短いようで長く、住民が戻ってこられる目途として考えていただきたい。
・災害時の応急仮設住宅ができる期限までに、被災現場から災害廃棄物が撤去されているのが理想と思われ、入居期間は基本的に2年のため2年以内で処理を終えられるのがよいのではないでしょうか。復興工事に影響がないように処理期間はなるべく早く調整したほうがよく、事例によっては急ぎ過ぎているところもありますが、基本的には早い方がよいと思います。
・イタリアからの留学生に聞いたところ、だいたい2~3年で災害廃棄物処理を終わらせ、少し残ったごみは10年かけているそうです。
・広島県では、住民に身近なごみは早く処理する必要があると考え、夏に発災して12月末までに撤去しましたが、人家から離れた仮置場では1年半かけて撤去を行いました。地域によってメリハリがあってもよいと思います。
・能登半島地震では、損壊家屋は住民に近いところで残ってしまいます。そのため、できるだけ早く撤去し、3年以内というのが目途かと思います。
・市町村職員の感触では、被災した住民が許容するのは2年間が目安と思います。
(3)都道府県の災害廃棄物処理計画実効性向上について
都道府県の災害廃棄物処理計画実効性に向けた取組事例
・富山県は、能登半島地震を経験し、県庁内検証会議で災害廃棄物について計画・マニュアルの実効性に問題があり、対応がわからずに時間がかかったことが指摘され、マニュアルの見直しを行っているところです。職員の異動による技術的知見の継承が課題であることから、誰でも一定レベルの対応ができるよう、受援が困難な初動の1週間を自分たちで乗り切り、残りの期間は支援を受けながら実施していけるようなマニュアルを予定しています。災害廃棄物処理計画はそのマニュアルを踏まえて見直しし、訓練を受けていない職員でも計画・マニュアルを見れば対応できるものを目指しています。
・鳥取県は、県内全市町村の計画と県の計画を見比べて、矛盾が無いかを洗い出し、整合を図って計画改定を進めています。整合が取れて初めて県の計画が機能すると思われます。
・都道府県の計画は概括的な内容に終始してしまいがちで、市町村の計画にどこまで実行性があるかが大切で、岡山県では市町村の受援計画策定を県の事業で実施し、市町村の視点を基に県の計画を改定しようという逆のアプローチを考えています。
都道府県の行動を記載した計画
・県の災害廃棄物処理計画は、県内市町村にひな形を示す考え方と整合性をとる考え方がある一方で、県がどういう状況でどう判断・行動するか具体的に記載されているものは少なく、環境省の災害廃棄物対策指針の改定でもその議論をきちんとしてこなかったと思います。
・宮城県は、基本的に県の行動に関する計画になっていて、具体的な手順は手引書に記載しています。災害対応の都度、その反省を踏まえて計画をブラッシュアップしており、能登半島地震への支援を踏まえて、自県の対応だけでなく、他県への支援の際に用いるものとして計画を改訂しています。
都道府県へ期待すること
・被災市町村が災害廃棄物処理に対応しますが、法制度など技術的部分を県に頼りたい、また、災害時に国の情報を転送するだけでなく、重要な情報を共有していただきたいため、県には災害時の体制を充実していただきたいです。
・広島県は、県の体制として地域事務所を活用できていなかった点を反省し、地域をよく知っている地域事務所が市町の情報を吸い上げる体制を構築しました。また、情報収集だけでなく、重要な情報を県地域事務所から市町へ提供する目線も含めて県の体制を作りたいと思います。
・計画の実効性については、コミュニケーションツールとして他部署・関連機関と連携する根拠にできることが有効と思いました。
都道府県へ支援・受援調整の役割を期待
・能登半島地震の被災市担当者から、支援者の人数に波があって依頼しにくくて辛いと伺いました。支援の人数がその都度異なると、仕事を作ったり、引継ぎがうまくいかないため、定量的に支援を入れるために、県には被災自治体と支援自治体をつなぐ、受援調整の役割を担うこともあるかと思います。また、経験者が支援に入る際は、できれば人口規模をあわせていただくとよく、1万人規模の町村に大都市から支援が来ると、書類がかなり異なってそれをクリアするのに苦労があります。
(4)都道府県職員の対応能力向上
支援経験が対応力向上に有効
・これまで話しを伺う中で、支援の経験にOJTの効果があることがわかりましたが、県職員のための研修がないと思われますがいかがでしょうか。
・宮城県は、能登半島地震で被災した町へ、環境省の災害廃棄物処理支援制度(人材バンク)に基づき4チーム交代で1か月程度入りました。チーム編成は、東日本大震災の経験者で土木職・環境技術職1人ずつと未経験の環境部局2人からなる4人1組としました。町に入ったため、県の立場では普段知る機会がない町の業務を細かく知ることができ、貴重な機会でした。
・被災市の担当者から、人材バンクの人によって言う内容が変わって困った話しを伺いました。宮城県のチーム編成のように良い事例を共有するような研修があれば職員をどんどん行かせたいです。
・能登半島地震はかなり特殊で、環境省の肝いりで大量の人を投入し、現地でコミュニケーションが取れないまま対応していくことになっていました。
支援は派遣体制・引継ぎが重要
・前任者からの引継ぎができていないと何をしらたよいかわからないことになりがちです。被災自治体に入ってコミュニケーションとることは必ずしも容易ではありません。被災自治体にどのような悩みがあるかを聞き取ることも技術の一つであり研修で学ぶとよいでしょう。被災自治体にどんな問題があり、どう解決するかの考え方をきちんと引き継ぎすることで、被災自治体に負担をかけることなくより良い支援になります。
・被災現場には独特の空気感や焦燥感があり、それは研修で再現することができず、学ぶには限界があります。支援には、経験者・未経験者で組になって入って学ぶことが大切です。
・また、研修で「支援は循環」ですと伝えています。受援した自治体は、今度は支援にいくということを心がけていただく必要がありますが、能登半島地震では全国の自治体や民間から多大な支援が投入されたことで、知見等が市に残っていないことが問題です。こういったことも常に頭に置きながら人材育成のあり方を考えないとなりません。世代交代してノウハウを伝達していく努力は常に必要と思います。
・県の幹部職員が支援に入ることで説得力、影響力があることと、担当者が行って県職員に寄り添えることでうまくいくこともあります。宮城県は自主的に車で現場を回るなどして状況を把握して報告し、うっとうしいと思われているかもそれませんがそうやってコミュニケーションをとっています。
都道府県のための研修を
・都道府県は、市町村向けに発災後の対応を研修していますが、都道府県自身の行動について深掘りしたり、検証する研修がないと思います。都道府県の中で研修訓練を実施する他、地域ブロック協議会で広域的調整の訓練をするとよいと思います。研究者サイドからも研修の設計を考え働きかけてもよいかと思いました。
3.まとめ
本日の議論の中で、今後の計画実効性向上に向けてとても示唆に富む議論がありました。経験が少ない人が被災地に入っても被災自治体の要望に合った支援をすることは難しいため、平時からトレーニングすることが必要である一方、被災自治体の緊迫感は研修では難しいとのことでした。災害が増えている中で経験者が経験のない人にリアルに伝えること、派遣体制など効果的な支援の経験値を現地支援や研修を通じて伝えていくことが必要と思いました。また、地域ブロック協議会で都道府県同士の情報交換・研修訓練ができる仕組みが必要と思います。都道府県の知識や経験を被災市町村支援にどう生かすか、良い意味で課題が多く、今後の伸びしろに期待できる部分と思います。
都道府県による市町村への支援のあり方として、事務委託に焦点を当てつつ、それ以外の支援もあること、また、受援のバッファ機能を都道府県に担ってほしいという要望は確かにそのとおりだと思いました。災害廃棄物処理支援制度(人材バンク)には、環境省のみならず被災都道府県が要請する仕組みもあるため、受援調整の役割を整理しておかないと被災都道府県が蚊帳の外になっていきそうであり、国でも取り上げて議論すべきと思いました。しかし、一般廃棄物は市町村に処理責任があるのに、平時から都道府県は処理支援前提として準備するのか、準備に時間をさけるのかと、前向き後ろ向きの議論があるでしょう。
事務委託の判定図の研修を進めて、都道府県に示すことでより実効性のある計画策定に効果的かもしれないと感じました。