災害廃棄物情報プラットフォーム編集部

2026年2月
目次
1.災害廃棄物情報交換会について
災害廃棄物対策の取組みやアイディアを共有しつつ、関係団体同士の緩やかなつながりを作っていくために、国立環境研究所では「災害廃棄物情報交換会」を開催しています。令和7年度は、「都道府県による市町村への支援のあり方」をテーマとして、第1回は都道府県による災害時の事務委託と職員派遣について意見交換が行われました。
| 災害廃棄物情報交換会(令和7年度第1回) | |
|---|---|
| 日時 | 2025年11月11日(火曜日) 13:30 ~ 16:20 |
| 場所 |
廃棄物・3R研究財団大会議室/Webハイブリッド開催 |
| 出席者 (敬称略) |
座長 鈴木 慎也 福岡大学工学部社会デザイン工学科 教授 委員(氏名五十音順) 石田 陽子 広島県 環境県民局循環型社会課課長 片山 啓示 岡山県 環境文化部循環型社会推進課課長補佐 佐藤 尊秀 岩手県 環境生活部資源循環推進課資源循環担当主査 庄子 克巳 宮城県 環境生活部廃棄物対策課課長 山本 充巨 富山県 生活環境文化部環境政策課副主幹(災害廃棄物担当) オブザーバー(氏名五十音順) 岩嵜 享史 宇治市 まち美化推進課ふれあい啓発係主査 宇田 仁 中間貯蔵・環境安全事業株式会社 河原 隆 総社市 選挙管理委員会事務局長 後藤 潤 延岡市 市民環境部資源対策課 瀬古 智秀 南伊勢町 子育て・福祉課課長 半澤 大 館山市 市民生活部危機管理課係長
国立環境研究所 廃棄物・3R研究財団 |
2.意見交換会の成果
大規模災害が発生すると、被災自治体は膨大な災害廃棄物の処理に直面します。市町村単独での対応には限界があり、都道府県が事務を受託して広域的に調整することが有効な場合があります。本意見交換会では、過去の災害事例を振り返りながら、事務委託に至った背景、職員派遣による支援のあり方、さらに平時からの準備や都道府県に期待される役割について意見交換を行いました。
(1)過去の事例で事務委託に至った背景
東日本大震災では、多くの役場職員が犠牲となり、庁舎も被災したことから、県が対応しないとならないと判断されました。津波による災害廃棄物は塩分濃度が高く、一般の処理施設では受け入れができなかったため、仮設焼却炉の設置が必要となりました。また、セメント工場など受け入れ先がある自治体ばかり処理が進むといった偏りを避けるため、県全体で調整を行う必要がありました。破砕選別設備や仮設焼却炉の設置など広域的な調整が求められ、さらに、放射性物質の問題も事務委託を進める要因となりました。
都道府県が事務委託に乗り出すことには、「強いメッセージ性」がありますが、本来市町村の所掌である業務を都道府県が代行するのですから、そこには合理性が必要で、効率性があることも欠かせません。
熊本地震では、県中央部の複数市町が大きな被害を受けたことから、県が二次仮置場を設置する方が効率的でした。
平成30年7月豪雨では、広島県のほとんどの市町村が被災した中で、特に坂町は土砂災害による廃棄物量が突出しました。交通網が途絶していた状況では広域運搬は非効率であり、県が主体的に対応する必要がありました。広島県知事が「県が全面的に市町村を支援する」という姿勢を示したことも、事務委託を後押ししました。
(2)都道府県職員派遣による支援の事例
県が、市町村の意向や課題を把握し整理することで、適切な助言・人的支援が可能となり、市町村が自力で対応できる体制づくりにつながります。市町村の共通課題として、処理先の確保が困難という点が挙げられ、ここに県の産業廃棄物に係る知識とスキルが活かされます。
広島県では平成30年7月豪雨で坂町のみを事務委託の対象とし、他の市町には職員派遣による支援を手厚く行ったため、大きな不満は生じませんでした。令和元年東日本台風において宮城県では、県南部で土砂混じりのがれきが多く発生し、中央部では稲わらが大量に発生するなど、地域によって廃棄物の性状が異なりました。そのため、県が一律に処理を担うのではなく、南部には職員を派遣し、中央部には県庁が助言を行うことで広域処理を支援しました。
富山県では、令和6年能登半島地震により氷見市や高岡市で多数の家屋被害がありましたが、市の職員の対応能力が高く、市独自での対応が可能でした。氷見市は被害が大きく、またこれまで災害対応経験が無かったことから、関係機関と迅速に連絡調整できるよう、県職員を連絡員として派遣しました。
大船渡市の林野火災では、市から岩手県へ陣頭指揮を依頼され、県は人材バンク登録職員を含む6人のチームを大船渡市内にある県の出先機関に常駐しました。県・市・産資協で処理の全体像を共有し、対応を円滑に進めることができました。
(3)事務委託を判断する目安
意見交換会では、これまでの実績を踏まえ事務委託を判断する目安を整理しておくことが重要であるとの認識が共有されました。これは都道府県だけでなく、市町村にとっても「どこまで自力対応が可能か、支援を要請するか」を判断するための参考となります。
議論の中では、事務委託を検討する際の主な判断材料として、次のような点が挙げられました。これらはあくまで議論の中で示された視点であり、今後さらに精査していく必要があります。
- 市町村の庁舎損壊・職員不足などで事務遂行が困難か?
- 災害廃棄物量が多いか?
- 災害廃棄物の性状が特殊(津波・土砂・放射性物質による汚染等)で一般廃棄物処理施設では処理困難か?
- 被災自治体数や密集度:仮置場・中間処理を県主導で行うことで効率化できるか?
例えば、土砂災害や津波による災害廃棄物は、様々な廃棄物が混合状態で発生するため、広い仮置場や機械選別施設の設置が不可欠となります。そのようなケースでは、災害廃棄物を集約し、中間処理する機能を県が担うことが有効となる可能性があります。また、災害廃棄物は、市町村が普段処理する一般廃棄物とは様相が異なるため、市町村に十分な知見がありませんが、都道府県が有する知見を活かして処理できることから事務委託を検討する要素となり得ます。さらに、被災自治体の広がりや密集度、同質の廃棄物を効率的に処理できるかどうかも判断材料として挙げられました。
(4)災害廃棄物発生量について
災害廃棄物発生量は、早期に正確に把握することは困難ですが、事務委託の要否を判断する上で不可欠な情報です。広島県では人口当たりの災害廃棄物発生量を整理し、関係者への説明に活用しました。近年は、環境省やD.Waste-Netが防災科学技術研究所の情報を活用し、迅速に推計を行う体制が整いつつあります。今後は、こうした推計結果をどの段階で、どのように判断に反映させるかについて整理していく必要があります。
(5)都道府県に求められる人的リソースと専門性
都道府県が、事務委託や広域調整に対応する上で、人的リソースと専門性が求められます。災害廃棄物の処理フロー全体を見通し、二次仮置場でどの程度の中間処理を行うかについて、関係者と共に調整のうえ、決定していくことが必要になりますが、災害廃棄物処理は施設整備や工程管理など多くの点で土木分野に近く、設計や積算システムを扱える土木職員が不可欠です。東日本大震災では、道路・河川・農地の津波堆積物やがれき処理に加え、二次仮置場の水道設備整備、資源化先の確保、測量、環境影響評価、廃棄物処理法などに関する多岐にわたる知識が必要となりました。円滑な事業執行のためには契約や予算措置、議会対応に精通した人材も欠かせません。このため、宮城県では、土木職・環境系技術職・事務職がチームを組み、分野横断的に対応しました。
また、岩手県では他部局から土木職等の応援を受けた他、全国の自治体からも支援を頂いた。例えば、仮設焼却炉の設置にあたり、焼却施設建設工事発注の経験者を環境省に要望し、政令市である名古屋市や福岡市から長期派遣を受けるなどにより体制を補強しました。
市町村は許可手続きや調査、発注業務を単独で担うことが難しい場合も多く、特に政令市や中核市以外では、都道府県による発注支援があることで単独対応が可能になることも考えられます。この点からも、都道府県が専門性を備えた支援体制を平時から整えておくことが重要といえます。
(6)平時の取組の成果
近年、平時の取組が成果を上げてきています。災害廃棄物処理計画の策定率が上がり、仮置場候補地選定を事前に行う自治体が増え、研修や訓練によって「すぐ仮置場を設置するべき」という認識が浸透してきました。一方で、発災時の仮置場の運営管理や協定の活用ができていない事例も見受けられます。
毎年同じ内容の研修を繰り返す自治体がありますが、内容を工夫し、実践的で災害対応力を高める必要があると指摘されました。
都道府県に期待される役割として、平時の研修・訓練の開催に加え、災害時の単価設定が挙げられました。公費解体の単価設定は県が担うとよいという意見があります。産業資源循環協会が平時に単価を決め、それを目安にしている県もあります。熊本県は産業資源循環協会と災害時の単価を毎年協議しています。
その他の取組みとして、富山県では、市町村は職員数が少なく、災害時に職員自身が被災者となり対応できない可能性があるため、災害廃棄物対応が属人的にならない仕組みを模索しており、県内で初動マニュアルを共有し、全市町村が同じレベルで対応できるよう取り組んでいます。また、県内に廃棄物処理業者が多いことを活かし、県がハブとなり市町村をつなぐことで、災害時に民間事業者の力をフル活用して進めたいという考え方で、民間事業者対象のセミナーを開催し、産業廃棄物処理業の協会や解体業協会との連携を強化しています。
3.次回に向けて
今後、事務委託に至りやすい災害やケースを統計モデルで表現することが課題です。具体的には、ロジスティック回帰分析などを用いて、廃棄物発生量、被災自治体の体制、被災自治体数やその密集度などを説明変数とし、事務委託に至った事例を分析します。また、都道府県と市町村との普段の関係性や意思決定のプロセスといった定性的要素も含め、次回の議論につなげたいと思います。