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寄稿:能登半島地震による輪島朝市の焼損自動車への対応

公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(JARC)

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2025年11月

目次

はじめに
1.自動車リサイクルのフロー
2.能登半島地震における輪島朝市の被災自動車の対応
 2-1.初動対応と現地調査
 2-2.撤去処理に向けた課題整理と政府対応
 2-3.被災自動車の撤去処理に向けた方針
3.被災自動車の調査、運搬、解体、移動報告の実施
 3-1.被災自動車の調査
 3-2.被災自動車の撤去処理の実施
 3-3.被災自動車の運搬、解体作業の実施
 3-4.リサイクルシステムによる電子マニフェストの発行
おわりに

はじめに

 当財団は、自動車リサイクル法に基づく指定法人として、主に使用済自動車等の適正な再資源化に資する事業を行っています。その一環として、大規模災害時に被災した自動車も自動車リサイクル法に則して適切に処理が行われるよう、特に自治体支援を中心に取組んでまいりました。本稿ではその取組みのうち「令和6年能登半島地震」における被災自動車の撤去処理の概要についてご説明します。

1.自動車リサイクルのフロー

 2005年1月に施行された自動車リサイクル法では、新車購入時にユーザーがリサイクル料金を預託し、当該自動車が使用済自動車となった際に、再資源化処理に使用されます。
 再資源化処理のフロー概要は図1のとおりです。
 関係事業者は、自動車所有者から引き取った使用済自動車について、シュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類を回収し、適切な再資源化を進めていきます。

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図1 自動車リサイクルフロー概要

「令和6年能登半島地震」においても、このフローを原則として被災自動車の撤去処理が行われました。
自動車リサイクル法によって確立された社会インフラを活用することで、非常災害時においても使用済自動車を着実に適正処理することが可能となりました。

2.能登半島地震における輪島朝市の被災自動車の対応

2-1.初動対応と現地調査

 「令和6年能登半島地震」(2024年1月1日発生)後、当財団は石川県庁と連絡を取り、被災自動車の撤去手続きや自動車重量税還付手続きの案内チラシを作成しました。被災自動車は、通常の使用済自動車と同様に所有者が処理手続きすることが原則である為、作成したチラシを住民に配布し、石川県庁ホームページに掲載することで住民に被災自動車を処理していただくよう呼びかけました。 但し輪島朝市の火災における被災自動車は焼損により自動車としての資源価値を喪失し、所有者による処理は困難な状況で処理支援が必要と考えられる為、被災現地に行くことができる条件が整った同年5月2日に輪島市役所と調整のうえ被災地を訪れました。 現地を確認した結果、輪島朝市の火災における被災自動車は、焼損した家屋の下敷きになっているもの、瓦礫に埋もれているもの、また損傷が著しく所有者の特定が難しいものもあり、所有者個人が撤去搬送し処理することは非常に困難であることが分かりました。

 被災車両の処理において所有者を支援する施策が必要であることから、その具体案と実現性について、輪島市と意見交換することとしました。
<輪島市内の被災状況>
輪島朝市消失面積 :約49,000平方メートル
焼失建物 :249棟
被災自動車 :82台(※同年7月3日時点、JARC・一般社団法人日本自動車リサイクル機構(以下「JAERA」)石川県支部調査より)

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被災自動車の様子(1)(2024年5月2日)

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被災自動車の様子(2)(2024年5月2日)

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作成・配布したチラシ

2-2.撤去処理に向けた課題整理と政府対応

現地訪問で判明した課題

 現地確認の後、輪島市役所と被災自動車の処理について被災地家屋処理等の復興計画との整合性をとった上で検討をしました。
 被災自動車は本来有価物であること、所有者の特定と登録抹消手続きが必要であることから、焼損した家屋の撤去処理を罹災証明に基づいて行う際に、家屋廃材と一緒に撤去処理はできません。被災自動車が焼損家屋に埋もれた状態等で残っていると、被災自動車が足枷となり家屋廃材の処理が滞る可能性があります。従って、家屋の処理を行う前に、被災自動車を処理しておかなくてはなりません。 また、所有者の意思確認なく移動することができないため、所有者が特定できない場合は所有者不明自動車として別途手続きが必要になります。
 上記より、被災自動車の処理は家屋の処理を開始する前に、一括して実施する必要があるということと、その際、被災した全車両の所有者を確認し、事前に所有者の許諾を得ておくこと、所有者不明の場合はその所有者不明対応の手続きを済ませておく計画を輪島市と合意しています。その際は大規模な撤去処理となる為、個人で撤去処理の協力事業者を探し、費用を賄うことは難しく、公費で処理する必要があることを確認しました。但し、地理的制約や人手不足によって協力事業者を確保することが容易ではない状況であることも分かりました。

政府および当財団の対応

 輪島市と具体的な進め方を議論している際、環境省の廃棄物対策課より輪島朝市の被災処理に関する意見交換をしたいと申し出を頂き、環境省、輪島市、JARCの3者で、被災の現状と被災自動車を処理する為にこれまで検討してきたこと及び今後の課題を共有しました。その結果、環境省から当財団に対し、輪島市朝市地区の被災自動車撤去処理に関する協力依頼を頂くことができ、その依頼に基づき、公的支援の目途が立つことから日本自動車リサイクル機構(JAERA)に実働協力を要請しました。
 こうして2024年6月26日、環境省・輪島市・JARC・JAERAによる合同プロジェクトが発足し、被災自動車撤去処理が本格的に始動することとなったのです。

2-3.被災自動車の撤去処理に向けた方針

 このような状況下、輪島市では朝市地区に限定して焼損した被災自動車について、所有者が公費による撤去、解体に同意したものを対象に、公費で撤去処理する方針を決定しました。決定に基づき輪島市、JAERAと被災自動車の公費による処理の計画を自動車リサイクル法に基づいた上で検討をしました。
 被災自動車の流れを図2に示しますが、最初に全被災車両の車台番号をJAERAが確認し、その結果から被災地からの撤去解体に対する所有者の意思確認を輪島市が実施することとしました。所有者の同意を得られた後、被災現場からの車両撤去はJAERA会員事業者が重機で実施しますが、解体業者への搬送は複数台をまとめて積載する為、現場撤去後に車両を保管する仮置場を設け、撤去した被災自動車を当該仮置場に移動することとしました。その後、トラックに積載し解体事業者へ運搬、解体から破砕そして最終処分場における処理は、事業者が通常のリサイクルの流れに沿って処理します。

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図2  被災自動車の処理フロー

3.被災自動車の調査、運搬、解体、移動報告の実施

3-1.被災自動車の調査

 石川県の登録許可業者であり、JAERA会員事業者から選定した解体業者が調査を担当しました。車台番号の確認、リサイクル料金の預託状況の調査、建物内の危険個所から搬出可否判断するためドローンの操縦ライセンスを保有する事業者へ依頼し、上空からの調査を行う等、1台ごとに丁寧に実施しました。また、白マーカーで番号を割り当てるなど、適切な管理も行いました。

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被災自動車の調査(1)

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被災自動車の調査(2)

3-2.被災自動車の撤去処理の実施

 被災自動車の仮置場としては、輪島朝市地区内の寺院を借用させて頂くこととなり、土壌の保護の為、仮置き場には鉄板を敷き詰めた上で、自動車の一時保管場所として指定しました。撤去はクレーン車で被災自動車をクランプし吊り上げ、仮置場まで移動し以下の写真の様に集結させました。

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被災自動車 一時保管場所移動(1)(2024年8月7日)

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被災自動車 一時保管場所移動(2)(2024年8月7日)

3-3.被災自動車の運搬、解体作業の実施

 仮置場への移動が完了したのち、解体許可業者へ被災自動車の運搬を開始しました。JAERA会員事業者、石川県廃棄物収集運搬許可業者延べ10名の実務担当者にて、大型自動車2台を用い、1日2往復(片道約70km)の運搬を行い、4日間で完了しました。被災自動車は登録許可業者に搬入された後、通常の使用済自動車と同様に処理されました。具体的には、フロン類やエアバッグ類の回収取り外しを行い、被災自動車の状態を目視で確認しながら、必要に応じて解体・破砕作業を進めました。

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被災自動車 解体業者への運搬作業(1)(2024年8月30日)

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被災自動車 解体業者への運搬作業(2)(2024年8月30日)

3-4.リサイクルシステムによる電子マニフェストの発行

 解体処理作業を確実に実施、電子マニフェストを発行するため、引取工程の「引取報告」から、破砕工程の「引渡報告」までの移動報告を行いました。
 その後、被災自動車は廃車ガラとして最終処分場へ送られ、一部は資源として再利用され、すべての行程が完了しました。

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自動車リサイクルシステム 移動報告情報(1)(2024年9月17日)

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自動車リサイクルシステム 移動報告情報(2)(2024年9月17日)

おわりに

 ここまで、「令和6年能登半島地震」における被災自動車の撤去処理の概要についてご説明しました。今回、輪島朝市地区で発生した被災自動車は、多くが自宅や駐車場で被災した自動車であったため、容易に所有者や自動車を識別でき、また通常のリサイクルルートで対応するにあたってリサイクル料金が預託済みであることの確認や所有者への撤去処理の意思確認も円滑に進めることが出来ました。
 一方で、輪島朝市地区における今回の対応は、自動車の状態にかかわらず協力事業者が引取を拒否しない取り決めとしたこと、一部公費(災害等廃棄物処理事業費)を活用したこと、さらに地理的要因から十分な協力事業者を募ることが困難なため随意による事業者選定としたことなど、環境省、輪島市、JARC並びに業界団体、関連事業者が一体となり個別の事情に応じて実施した事例となりました。
 南海トラフ地震では約3万台もの被災自動車が発生すると想定されています。この膨大な被災自動車を迅速かつ適切に処理するためには、平時の事前準備が重要です。被災自動車の処理に関わる自治体、関係者の連携・役割分担や行動計画の立案、一時保管場所の事前指定と地図上における位置確認、デジタル技術を活用した被災自動車管理、法的・制度的対応策の整備、広域連携と相互支援体制の構築等が、自然災害への対応力と防災意識の向上に繋がると考えます。 
 令和6年能登半島地震及び同年9月の奥能登豪雨の災害被害でも、2025年9月現在、石川県や関連市町において様々な支援制度が構築され、復旧復興が進められていますが、今も多くの県民の皆様が避難生活を続けており、一刻も早い生活再建が望まれる状況です。
 最後に、国内各地で発生した災害にて被災され、現在も避難生活をおくられている多くの皆様に心よりお見舞いを申し上げるとともに、復旧、復興に向けて尽力されている政府、自治体、関係機関の皆様に深く敬意を表しまして、本寄稿の締めくくりとさせていただきます。

支援のご案内

 当財団では、2018年度より自治体向けに被災自動車の処理対策に関する説明会、研修会を実施しており、これらを通じて自治体職員の皆様が災害時の対応手順を認識いただき、迅速な対応を行えるよう準備を進めていただくことが重要であり、そのための自治体支援を推進してまいります。
 自治体の皆様からの説明会や研修会開催のご依頼、その他、被災自動車処理に関する個別のご相談も随時受け付けておりますので、ぜひご連絡ください。

〔説明会、研修会等のお問合わせ、ご相談先〕
公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(JARC)再資源化支援部
TEL : 03-5733-8302
URL : https://www.jarc.or.jp/
E-mail : shienbu1-2@jarc.or.jp

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