災害時の対応を知るマネジメントPost-disaster actions 災害時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る

寄稿:災害廃棄物処理における人材バンクの支援

練馬区 環境部清掃リサイクル課 清掃企画担当係 冨澤崇行

人材バンク【練馬区】_01

2025年9月

目次

1.人材バンクに登録したきっかけ
2.災害廃棄物処理支援員としての被災地支援
  (1)能登半島地震による被害を受けた石川県七尾市への支援
    ➀支援のきっかけ
    ➁七尾市での支援内容
  (2)支援からの課題対応
  (3)梅雨前線による豪雨被害を受けた山形県鮭川村への支援
    ➀支援のきっかけ
    ➁鮭川村での支援内容
3.人材バンクの課題
4.災害廃棄物処理支援員の役割
5.おわりに

1. 人材バンクに登録したきっかけ

 令和元年に大規模災害時廃棄物対策関東ブロック協議会からの派遣要請を受け、支援チームの一員として、茨城県常陸大宮市へ5日間の支援を行った。台風19号による浸水害を受けた同市で初めて災害廃棄物処理に対応した。
 この経験から、当時の清掃リサイクル課長の後押しもあり、令和3年度に災害廃棄物処理支援員制度に登録することとなった。

2.災害廃棄物処理支援員としての被災地支援

(1)能登半島地震による被害を受けた石川県七尾市への支援

➀支援のきっかけ

 令和6年1月1日、テレビに映し出された能登半島地震の映像は衝撃的なものであった。人材バンクによる支援が行われることは想像できたが、当初は被災地から近い地域の支援員が派遣されるだろうと安易に考えていた。
 しかし、発災から1か月後の2月1日、環境省から、公費解体を進めるため、派遣の打診があったのだ。この要請を受けた瞬間から、能登半島地震はテレビの中の出来事では無くなり、被災規模の大きさを痛感した。
 打診から数時間後には要請を受諾し、本格的な支援調整が始まった。
 各関係者への説明に始まり、交通網の確認や宿泊先の確保、備品等の持出し調整や派遣に関する費用の予算措置等を行わなければならない。幸いにも同僚職員が宿泊先などの調整を図り、他の職員が予算措置等を行うなど、多くの協力のおかげで派遣に要する連絡調整に専念することができ、1週間後の2月8日から10日間の支援が決定した。

➁七尾市での支援内容

 支援先に向かう道中で実際の被災状況を目の当たりにし、衝撃を受けた。自分が力になれるのかという不安が大きかったが、現地では職員が窓口や電話対応に追われ、庁舎内で寝泊まりする者の様子を目の当たりにし、不安よりも期間中で少しでも復興の一助になりたいという気持ちが上回っていた。
 支援に入った時点で自費解体の受付を開始したが、その後の対応が決定していないため、今後の進め方についての支援や助言を行うこととなった。

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支援状況(撮影:練馬区)

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被災状況(撮影:練馬区)

【業務内容】

  • 公費解体受付に関する制度設計および職員用対応マニュアルの策定
  • 非住家調査に向けた調整
  • 石川県標準単価(案)オンライン説明会への参加
  • 建物被害認定調査システム導入に関する調整
  • 被災者総合窓口の開設に向けた調整
  • 最終処分場被災による収集・運搬調整
  • 損壊家屋等の解体・撤去に関する市民対応

 発災直後から日々刻々と災害廃棄物に関する指針やマニュアルが改訂されたことから、同市の担当職員が常に最新情報を把握することができるよう、環境省の現地リエゾンと協力し、情報共有を図った。不明な事項はリエゾンや本省に確認をしながら、補助金の申請に関する留意事項を念頭に置き、迅速かつ正確な助言を心がけた。
 また、同市の職員と情報共有をしていく中で、最終処分場の崩落被害により埋立ごみの収集が停止していたことで、市民から収集再開を求める要望が増加していることが判明した。私は環境衛生状況の悪化および市民要望に迅速に対応するため、収集の再開を提言した。収集再開にあたり、市の収集・運搬業者との調整や軌道にのるまでの期間および車両台数を聞き取り、同市職員による搬入調整と併せて2月19日から特別区(東京23区)が構成する収集運搬支援チーム(3週間で述べ64台)の派遣に繋げることができた。

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最終処分場の崩落状況(撮影:練馬区)

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収集支援に向かう特別区の清掃車両(撮影:練馬区)

(2)支援からの課題対応

 派遣終了後、今回の支援を振り返り、課題となった事項を整理した。

  • 緊急的な解体における自治体職員の人員不足
  • 公費解体における三者(市町村・申請者・解体業者)立会時の状況把握
  • 仮置場等の安全確保

 これらの課題に対し、被災者への負担軽減や地域の安全を確保するため、支援員として有用と思われる資格を調べてこれを取得した。

(3)梅雨前線による豪雨被害を受けた山形県鮭川村への支援

➀支援のきっかけ

 令和6年7月25日、梅雨前線豪雨の影響で、東北地方に多くの土砂崩落等による浸水害が発生した。発災から20日後に環境省から山形県鮭川村において損壊家屋等の解体工事体制の構築支援を行うための派遣の打診があり、2週間の日程で支援を行った。

➁鮭川村での支援内容

同村では、事前に把握していたとおり、崩落した土砂やそれらによって倒壊した家屋が道路にかかり通行止めとなっている箇所が見られた。この浸水害は激甚災害に指定されたが、同村は早々に半壊以上の損壊家屋等も公費での解体を対象とすることを決定したため、申請件数の増加が見込まれるという状況にあった。

【業務内容】

  • 公費解体に係る解体工事業協会との契約調整
  • 解体工区および解体班のスケジュール作成
  • 罹災証明判定業務
  • 県河川砂防課および県道等啓開調整

 私は、県道を塞ぐ家屋等の撤去にあたり、同村が実施する所有者の意向確認と三者立会い等に同行した。解体の実務的な観点からの助言を行い、同村職員、解体業者、所有者等の関係者間の連携を密に図る一助となることができたと感じている。
 支援期間中での解体完了とはならなかったが、県道を塞いでいた一棟の解体開始と村内全域の損壊家屋等の解体に向け、解体工事業協会と連携した解体チームの編成を要請し、継続的な体制を構築することができた。

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被災状況(撮影:練馬区)

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解体作業状況(撮影:練馬区)

 

3.人材バンクの課題

  人材バンクによる被災地派遣は、職務命令(短期派遣)が基本である。
 派遣に必要な費用をはじめ、宿泊先や移動の手配は、派遣元の自治体が負担と調整を行うという制度となっている。このような制度設計により、派遣元の自治体が費用負担や通常業務を理由に派遣要請を断るなど、支援員派遣への協力が希薄になることがないよう、必要な手当てを講じていただくなど、制度のブラッシュアップが必要と感じている。
 また、近年頻発する大規模災害から支援員数の不足も感じている。支援員は災害廃棄物処理を経験した知見のある者でなければならないが、未経験の職員からの登録要望も聞いている。支援員確保のためには、平時から希望者と支援員との研修を実施し、発災時には補佐員として支援員と同行させ、経験が積めるような仕組みを制度化することも有効なのではないだろうか。

4.災害廃棄物処理支援員の役割

 災害廃棄物処理支援員は、発災後、被災自治体のニーズに応えて、それぞれの支援員が持つ知識と経験でマネジメントを実施する。
 しかし、被災自治体からは、災害廃棄物すべての分野においての専門家として期待され、助言を求められてしまう場合がある。私は、これまでの経験と知識のみならず、平時からスキルアップしておくことが重要であると考え、実行計画の策定から災害報告書の調整に至るまで、被災自治体の費用負担を最小限に抑えるべく、裏方を務める縁の下の力持ちであるとの考えで対応に努めている。
 派遣要請は1週間程度の短期間となることが多く、その中で私ができる助言等は限られていることから、自分の持つすべての知識と資料は被災自治体の職員に伝え、残していくようにしている。

5.おわりに

 災害廃棄物処理支援員としての私の経験は浅いが、実際の被災地で支援をさせていただいた経験は、とても大きく、貴重な経験であると感じている。
 支援員との研修で多くの方々と顔を合わせ、意見交換ができたことは派遣先で非常に役立ち、自らの成長に繋がったと感じている。支援先で快く迎え入れていただいた職員や環境省の職員のみなさまとは、通常業務で出会うことができなかった方ばかりであり、この出会いに感謝申し上げる。

 

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